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» 2008年09月18日 08時00分 UPDATE

戦略プロフェッショナルの心得(1):「差別化」に潜む落とし穴 (1/3)

町の電器屋さんが家電量販店に勝つ方法はあるのか。そこで重要になるのはバリュープロポジションという考え方だ。顧客の自宅まですぐに修理に来てくれるなどライバルが真似できない強みを発揮すれば十分可能である。

[永井孝尚,ITmedia]

 現代ほどわたしたちに戦略が求められている時代はありません。今後、戦略策定力への期待は高まっていきます。顧客との関係を構築するCRMも、策定された戦略の中で位置づけを明確にし、実践していく必要があります。

バリュープロポジションから始まるマーケティング戦略

 しかし、実際に戦略を策定し実施している様子を見てみると、勘所を押さえずに戦略を策定したり、現場の人たちが全く動かなかったりして 、戦略が失敗することがあります。世の中には数多くの戦略やマーケティング理論に関する書籍が出版されていますし、MBAに準じたマーケティング手法も広まっていますが、そのままビジネスの現場で当てはめて構築し、実施しようとしてもなかなか成果につながりません。

 わたしたちはどのように戦略を進めていけばいいのでしょうか?

 わたしは、企業の中で実際に戦略の立案と実践に携わってきました。本連載では、これから7回に分けて、ビジネスの現場で戦略を策定し、実施する場合に必要な考え方をご紹介していきます。(本連載は「戦略プロフェッショナルの心得――ビジネスの現場で、理論だけの戦略が実行できない理由」からの抜粋です)

 第1回目はバリュープロポジションという考え方とその落とし穴のご紹介です。

 「自分たちの価値をいかに差別化するか?」

 これはマーケティングに関わる人にとって常に重要な課題です。ただ、どのように差別化すればいいのか、なかなか具体的なイメージがわかないことも多いと思います。

 例えば、「差別化ポイントは何ですか?」と尋ねてみると、さまざまな答えが返ってきます。

「うちはスキルがあるし人材がいる。われわれの人材そのものが差別化要素である」

 人材は重要ですが、自社の人材の何が具体的に優れていて、それが顧客にとってどんな価値があるのか、また、その優位点は時間が経過しても維持できるものなのかを明確にする必要があります。

「商品の性能は、ウチが業界一番。他社の数十倍である」

 顧客にとって性能差が大きな意味を持つ場合は、強力な差別化になります。しかし、大きな性能差であってもそれが顧客にとってあまり意味を持たなかったり、最優先項目ではなかったり、性能差がある程度の期間でキャッチアップされる可能性がある場合、差別化にはなりません。

 では、どのように差別化を行えばよいのでしょうか。差別化する際「バリュープロポジション」という考え方が役立ちます。バリュープロポジションとは何でしょうか。

 バリュープロポジションとは、(1) 顧客が望んでいて、(2) 自社が提供でき、(3) 競合他社は提供できない価値のことです。

 例えば、町の電器屋さんのケースで考えてみましょう。ここでは、競合相手として、家電量販店を想定します。家電量販店の価値や強みとしては、圧倒的な販売量に裏打ちされた価格競争力が挙げられるでしょう。一方で、町の電器屋さんが提供できる価値や強みとして、町の住民である顧客に対するきめ細かいサポートが考えられます。

 数年前に引っ越した際、引っ越す前に使っていた照明器具の配線が断線し、新居に付けられない状況になりました。ハンダごてで断線部分を接続する簡単な作業なのですが、不器用な私の手に負えませんでした。

 そこで家電量販店に電話しましたが、メーカーに直接問い合わせてほしいとの回答。あまり手間を掛けたくなかったので近所の電器屋さんに持ち込んだところ、その場で5分ほどで修理してくれました。料金は2000円。町の電器屋さんのフットワークあるサポート力を再認識した次第です。

 ここで、町の電器屋さんがターゲットとする顧客は誰なのかを考えてみましょう。「とにかく安い商品を」と思っている顧客は家電量販店で商品を購入しますので、町の電器屋さんはターゲットとすべきではありません。

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