特集
» 2008年09月27日 00時00分 UPDATE

Trend Insight:IBMが悪標準に対抗

OOXMLの標準化手続きに不快感を示すIBM。しかしそれは文書形式自体を問題にしているのではなく、技術標準化コミュニティーに対してのものである。技術標準化コミュニティーへの参加を統制する新たな社内ポリシーを策定するほどの決意だが、どこまでの賛同が得られるか注目される。

[Steven J. Vaughan-Nichols,SourceForge.JP Magazine]
SourceForge.JP Magazine

 悪標準と標準の戦いは現代情報技術の至る所に見られる。そうした中、悪標準に業を煮やしたIBMはもはや我慢しないと宣言した。もちろん、その矛先はMicrosoftに向いている。

 IBM Research開発・知的財産部門の広報担当マネジャー、アリ・フイッシュキンド氏は声明の中で次のように述べている。「当社では、技術標準化コミュニティーへの参加を統制する新たな社内ポリシーを策定した。技術標準化コミュニティーの一員として進歩的で透明性のある形で行動しオープンかつ品質の高い標準を促進するという決意を明文化したものだ」

 「標準化団体への参加の有無は、その団体の行動が当社の理念にそぐうものかどうかによって判断する」。具体的には「これまでの標準化コミュニティーは途上国を疎外するという過ちを犯しており」、途上国に「自分たちは完全に無視されており、ルールは途中で変えられているという印象」を与えている点が問題だ。

 「標準化手続きでは知的財産も問題になっており、より見通しのよいものにする必要がある。最近も、ある営利企業(複数)が自社の技術標準を業界として採用するよう働きかけ、その後、特許侵害を主張し使用料の支払いを求めている」

 「新しい標準化ポリシーでは、途上国やオープンソースコミュニティーが必要とすることを支持し、知的財産の公平性、一貫性、透明性、標準の品質に重点を置いている」

 「これは衆知をもって熟慮検討すべきことであり、軽々しく着手したわけではない。従って結果を前もって判断するのは賢明ではない。ほとんどの標準化団体については心配の種はなく、事実W3Cなどは極めて適切に運営されている」

 しかし、「最近制定されたOOXML(Office Open XML、文書に関するMicrosoftの新標準)の標準化手続きは当社の方針と整合せず、改革されるべき顕著な例である。OOXMLについては、その形式に欠陥(作った当人さえ実装しようとしないほどだ)があることが明らかになっているが、真の問題は文書形式自体にあるのではない。それは真の問題が表面に現れたほころびにすぎない。真の問題は、透明性の欠如、品質が並以下の標準の受け入れ、品質評価システムの欠如、古くからのメンバーと開発途上国からのメンバーの間にある深い溝などだ」

 OOXMLは2008年3月にISO標準として認められたが、それは投票の不正を指摘する声やMicrosoftがOOXMLに賛成するよう各国の標準化組織に圧力をかけたという非難が数多く出された中でのことだった。ここに至る数年間、標準化コミュニティーでは、OpenOffice.orgのODFを支持する側と Microsoftとの間に激しい論争があった。IBMは、従来、Open Document Format(ODF)支持を明言しOOXMLを批判してきたが、今、OOXMLの承認に至る過程で行われた不正を許した標準化団体を支持しないと宣言したのだ。

 これはIBMの単なる負け惜しみではない。ボストンの法律事務所Gesmer Updegroveのパートナーであり、著名な標準化ニュースサイトConsortiumInfo.orgの編集者でもあるアンドリュー・アップデグローブ氏は次のように述べている。「IBMが新しいポリシーを作り施行したのは、明らかに、MicrosoftのOOXML文書形式仕様の採用をめぐるよく知られた争いの直接の結果だ。あの手続きでは、世界中の各国標準化組織で乱用が広く指摘され、手続きを規定したISO/IECルールの改訂が求められた」

 知的財産法ニュースサイトGroklawの編集者であるPamela Jonesは、この動きを大歓迎している。「OOXML問題で見たように、明白な問題点が明らかになったにもかかわらず誰も何もしないとしたらあまりにも情けないことだ。ISO/IECは、自主的な改革が期待できないことを自ら明らかにした。そんな中でIBMの姿勢は賞賛に値する。誰もかも何もかもが堕落しているわけではないことをもう一度信じることができる」

 アップデグローブ氏は、IBMはこの方針を貫くだろうと考えている。「IBMはこの件については極めて真剣であり、やり通すと思う。自身原則を守り多くの提言もするだろう。提言の一部は、ほかの関係者の支持を得て積極的に進めるだろうと思う。IBMがいずれかの団体を脱退するか、脱退するならどこかについては、憶測はしない。しかし、新しい団体が結成されるなら、IBMの原則に留意してほしいと思う。IBMをメンバーに迎えるためではなく、団体を意味あるものにするためにだ」

 先行きについては、「IBMのポリシーは、標準化への参加を自主規制するための原則を詳述し、標準化手続きの改訂を求めるための活動項目を挙げている。その目標は透明性、オープン性、包括性の強化であり、オープンソースソフトウェアの実装など、オープン標準とそのほかの重要な技術開発の統合を促すことにある」

 「それに向けた次のステップは、11月の終わりにエール大学の後援で開かれる会議だ」。会議では「特許の待ち伏せ攻撃を避け標準化の水準を上げるために、標準化活動への政府の規制の強化と新しい国際組織設立の呼びかけ」が議論される。「当然、野心的で論争を呼ぶ勧告になるだろうが、それはこの分野の専門家が慎重に考え市場の現実的要請に沿ったものだ」

 ISOなどの標準化団体に与える影響については、「ISO、IEC、ISO/IEC JTC 1には企業ではなく、各国の標準化組織が参加している点に注意すべきだ。IBMは、ISO/IEC標準化作業が行われる多くの作業グループや標準化団体(INCITSのような)で活発に活動しているが、最終的には各国の標準化組織が投票する。しかし、IT標準化作業の大部分はそうした作業グループではなく、コンソーシアムで行われている」

 従って、「ISO/IECがルールの改革を決定するかどうかは、彼らがISO/IEC標準への関与をさらに弱めるかどうかに大きな影響を与えるだろう。これまでも、ISO/IECに多くのFast Track(OOXML)やPAS(OOF)が提出されることはなかった。これらの手続きは今評判が悪く、ISO/IECがその行動をあらためなければ、おそらくは劇的に減少するだろう」

 アップデグローブ氏はIBMの現在の立場を発展させたいと考えており、その理念がポリシーとなり、それが標準化の真の改革への支持を広く獲得することを望んでいる。しかし、「結局のところは、IBMの活動が賛同を得られるかどうかだ。そうなることを望んでいる」

Steven J. Vaughan-Nichols 技術とそのビジネス応用を守備範囲とするライター。PC向けOSならCP/M-80といわれ、自分のコンピュータで2BSD(Second Berkeley Software Distribution)を使うのが最先端だった時代からの古参。


原文へのリンク

Copyright © 2010 OSDN Corporation, All Rights Reserved.

ピックアップコンテンツ

- PR -

注目のテーマ

マーケット解説

- PR -