ユーザーに暗黙の管理負担を強いるPCの使い方を変える――マイクロソフト早期ユーザーに野村證券(1/2 ページ)

1台のPCにそれぞれOSとアプリケーションをインストールさせるMicrosoftのPC向け戦略に変化が起きつつある。従来の方法を「エンドユーザーに暗黙の管理負担を強いる方法」とマイクロソフト担当者は話す。

» 2008年10月29日 08時00分 公開
[怒賀新也,ITmedia]

 「大企業向けにPCを提供する方法が大きく変わる」

 マイクロソフトのビジネスWindows本部、東條英俊氏は話す。OSとアプリケーションを個別にインストールしたPCを従業員の数だけ購入する、というこれまでの方法をマイクロソフトは根本的に変える。

Office 2003と2007が同一PCの別の仮想環境上で稼働

 キーワードは仮想PC。アプリケーション仮想化ソフト「Windows Server 2008 Virtualization(App-V)」を利用し、システム管理者はユーザーの「空のPC」にExcelやPoerwPointなどさまざまなアプリケーションをストリーミング配信する。配信を受けると、PCにはOSとは独立した仮想実行環境が確保され、そこでアプリケーションが動作する。ネットワークにつながっていなくてもPC側に仮想環境が残るため、アプリケーションが使える。ここが、同社が従来提供してきたシンクライアント、ターミナルサービスとの違いだ。

 仮想PCの場合、DLLやレジストリ、.iniファイルなどOSへの変更は発生しない。通常のPCのアプリケーションは、インストールの際にDLLなどOS側の設定を上書きするため、アプリケーションとOSが結合してしまう。結果として、Excel 2003とExcel 2007を同じPCで動作すると不具合を起こすなど、アプリケーションが競合するなどのさまざまな問題が発生する。

 野村證券が実際にこのシステムを早期ユーザーとして導入した。同社は、App-V導入により1台のPCで複数版のOfficeを同時に利用できるようにした。管理面でも、例えば「11月だけExcelを使いたい」などユーザーがアプリケーションを使用する期間だけ管理者がPCにストリーミング配信できるため、コストを抑えた利用も可能という。

 マイクロソフトは今後、大企業のクライアント管理手法としてApp-Vの利用を強く勧めていく考えだという。管理側にApp-Vを置くことで、従来型のPC、ターミナルサービス用の端末、仮想PC用の端末のいずれに対しても、アプリケーションの仮想パッケージを配信できる。従来型PCの欠点「エンドユーザーが暗黙の管理負担を強いられる」(東條氏)といった状況を改善し、管理者は会社全体のクライアント環境をApp-Vによって一元的に制御できるのが利点だ。セキュリティの確保や内部統制強化に取り組む上でも都合の良い環境をつくれる。

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