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» 2008年11月19日 00時00分 UPDATE

丸山先生レクチャーシリーズ第1回リポート:クラウド時代の到来とはどういうことなのか

クラウド時代が到来しようとしている。しかし、それは一体何を意味するのだろうか。本年度の「丸山先生レクチャーシリーズ」を貫くこの大きな問題を、丸山不二夫氏がITの歴史的発展の流れの中に位置付けて読み解いた。

[渡邉利和,ITmedia]
tnm1.jpg ITmediaエンタープライズ編集長の浅井英二氏

 11月13日、日本電気(NEC)本社内の講堂を会場に、「丸山先生レクチャーシリーズ」の第1回が開催された。本年のレクチャーは“クラウド”をメインテーマに据え、さまざまな講師を招きながら1年かけて展開される。講師を務める丸山不二夫氏は、日本Javaユーザー会会長としての長年の活動でも知られ、最近は日本Androidの会の会長にも就任している。現在は早稲田大学大学院情報生産システム研究科に客員教授として籍を置くが、学生のみでなく、広く一般向けにIT技術を解説する活動を継続していることでも著名だ。同氏の名前を冠する「丸山先生レクチャーシリーズ」も本年で7年目を迎えており、最新技術をいち早く紹介する活動も精力的かつ継続的に行なわれている。

 本年からITmediaエンタープライズも同レクチャーシリーズの事務局を務めることになった。冒頭、あいさつに登壇したITmediaエンタープライズの浅井英二編集長は「ITmediaはオンラインメディアが本業だが、こうしたオフラインのセミナーやレクチャーへの取り組みも注力していく」とし、オンライン、オフライン両面から情報提供に取り組んでいく姿勢を明らかにした。

クラウド時代の到来

tnm2.jpg 「クラウドとは何か?」を分かりやすく解説する丸山氏

 今回、丸山氏自身による基調講演は、「クラウド時代の到来」と名づけられたものだった。まずはクラウドをITの歴史的発展の流れの中に位置付け、大まかな定義付けを行なおうもので、基調講演として当日の全体テーマを明確にすると同時に、本年度の「丸山先生レクチャーシリーズ」の土台を固めるイントロダクションの意味も兼ねた講演となった。

 丸山氏はIT技術の発展について、「ITの技術革新の本当の原動力はハードウェアの進化にある」とし、その象徴としてムーアの法則を位置付けた。ムーアの法則は、本来的には半導体の集積度の向上ペースにかんするものだが、現実にはコストパフォーマンスも同じペースで向上を続けている。これを象徴的に「例えば原油価格が1.5年ごとに半分に下がっていったら石油業界はやっていけるか?」と語り、そのペースがほかの産業では類を見ない猛烈なものだということをあらためて確認した。

 その上で、現在は半導体の微細化レベルが物理的な限界に近づきつつあることから、コストパフォーマンスの向上が従来の半導体の集積度向上から、マルチコア化やスケールアウト手法の広範な適用によって実現されていると述べる。スケールアウトにかんしては、ネットワークの進化(Packets/sec)ペースを予測するギルダーの法則がムーアの法則を上回るペースになっていることから「ネットワークの進化はコンピュータの進化を上回る」とし、その観点からもスケールアウトへの移行はいわば必然だとした。

 また、歴史を振り返ると、1975年のスーパーコンピューター「CRAY-1」は、主記憶量が4Mバイト、プロセッサのクロック周波数は80MHzで、価格は500万ドルだったが、現在のAndroid携帯は192Mバイトのメモリを搭載し、プロセッサのクロック周波数は528MHzで178ドルであり、CRAY-1をはるかにしのぐコンピューティングリソースが膨大な数存在していることになる。丸山氏はこの状態を「1億人がCRAYを持っている世界」と表現する。

 こうした状況は、何を意味するだろうか。丸山氏は、クラウドを「巨大なサーバ」と位置付けた上で、「巨大なサーバは無数のクライアントに対してサービスを提供する」ことから、クラウド時代にはクライアントとしての携帯端末の重要性がさらに高まると予測する。

 また、余談ではあるが、現在の携帯電話はかつてのCRAY-1を凌駕する演算処理性能を持っているが、「本当に1億人がCRAYを必要としているのか?」という疑問もわく。丸山氏によれば、「銀行の業務システム1つくらいであれば、現在の携帯電話の処理性能で十分まかなえる計算だが、だれも銀行の基幹業務を携帯電話で処理しようとは考えない。そこに何らかのミスマッチがある」と指摘している。ムーアの法則に従って急速なペースで向上し続ける演算性能が何に使われているのか、という点を考える上で示唆に富む指摘だ。

 こうした状況を踏まえた上での丸山氏による「クラウドとは何か?」という問いに対する回答は、「ネットワークを通じてサービスを提供するシステムであり、サービスの提供スタイルやネットワークの機能/構成に特徴がある」であった。また、クラウドを取り巻く状況の中でも特に重要な要素とされたのが、分散メモリキャッシュなどを駆使した大規模な分散データベースなどの技術と、最近Microsoftが発表したWindows Azureなどの“クラウドOS”だという。

 本年の丸山先生レクチャーシリーズでは、クラウドの取り巻く現在の業界各社の動向や技術開発の最新状況について、幅広く網羅しつつ分かりやすい解説が展開されていることが期待される。

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