コラム
» 2008年11月27日 11時31分 UPDATE

IT Oasis:「かわいくないプレゼン」をしていませんか? (1/2)

選ぶ立場、選ばれる立場――。ビジネスには付きものの役回りの違いがある。選ぶ立場が下す意思決定は「価値観の披歴」だ。その価値観には定量的な尺度ばかりとは限らない。

[齋藤順一,ITmedia]

競馬予想でのかわいい評価基準

 唐突ですが、クイズです。

 ここに大豆1リットルとゴマ1リットルがあります。2つを混ぜ合わせたら何リットルになるでしょうか。ここに大豆1キログラムとゴマ1キログラムがあります。2つを混ぜ合わせたら何キログラムになるでしょうか。答えは最後に示します。

 競馬の中継番組でパーソナリティーとして出演していた女優がいた。中継が始まり重賞レースの前になって出演者がそれぞれ予想を述べた。圧倒的な力量を持つ馬はそのレースにはいなかった。なかなか難しいレースだった。そこで出演者はそれぞれ、もっともらしい理由を付けて、自分の予想した馬が一着となる理由を綿々と述べることになった。

 女優にも自分の予想を話す番が回ってきた。彼女は芦毛の牝馬を推した。額に入った白い筋が印象的な馬ではあるがさしたる実績はない。アナウンサーが聞いた。

 「どうしてその馬がいいのですか?」

 すると女優は満面の笑みを浮かべ言い放った。

 「だって、かわいいじゃないの」

 あぜんとする出演者一同。返答に困るアナウンサー。

 競馬というのは勝ち馬を当てることを競うギャンブルである。

 競馬で勝ちそうな馬を選ぶときには、走りそうな馬を選ぶ。馬の毛並みとか色つや、馬体重増減とか、前走の走り、距離や馬場との相性、さらに血統などを参考にする。走りに関係するからである。これの基準は数値化できるものが多い。

 これに対して「かわいい」というのは走りに関係ないし、100%主観なのでこの場合の評価基準としては妥当でない。それが常識的な判断だろう。

 ただ、その女優にとっては馬券を当てるなどということは、どうでもよかったのだろう。彼女が好きになった馬が勝ってくれればうれしい。自分の代わりに走ってくれる馬を応援して楽しみたい。そのためには馬が走るかはどうでもよく、彼女が気に入る馬かどうかが大事で、それが「かわいい」というキーワードだったわけである。「かわいい」が判断基準であり、その基準をもって芦毛の馬を選ぶ、という意思決定を女優はしたわけである。

 どうせ予想は当たらない。データをそろえてあれこれ考えたところでそもそも馬券はもうからない。楽しめれば十分。その女優にはそういう気持ちもあったかもしれない。好意的に解釈すれば、彼女とほかの出演者たちとの競馬に対する価値観が違ったとも言える。

 その後も女優はこの手法を何度か使って勝ち馬を予想していた。予想するのが難しいレースになると、常識的な判断基準をかなぐり捨てて「かわいい戦略による意思決定」を連発した。彼女はしばらくして、その番組に出なくなった。

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