国際会計基準への対応を迫られる日本企業好機ととらえるオラクル

会計基準を世界的な標準であるIFRSに変更する国が欧米を中心に増えてきている。日本オラクルなどERPベンダーは好機として企業を支援する考えだ。

» 2008年12月19日 20時10分 公開
[ITmedia]

 会計基準を世界的な標準であるIFRS(International Financial Reporting Standards)に変更する国が欧米を中心に増えてきている。日本でも導入が検討されており、幾つかの手続きを経て2013年あたりに強制適用される可能性が指摘されている。

 単一の会計基準であるIFRSが普及することで、複数の国に法人を持つグローバル企業がグループの財務管理業務を共通化でき、財務報告コストの削減や決算の早期化ができるなどの利点がある。米Bearingpointの日本法人でシニアマネジャーを務める公認会計士の伊藤久明氏によると、日本の会計基準で必要なのれん(信用やブランド)代の償却をIFRSは必要としない。そのため「買収や合併がさらに進む。のれん代の償却費用が発生しない分有利だから」と話している。基準が同じであれば、買収後の財務統合などの手続きが単純化しやすくなるといった声もある。

 一方で、IFRSに移行する際にはさまざまな課題が出てくる。例えば、経理システムの新たな構築やIFRSに対応できるビジネス慣行を含めた社内体制の確立、過年度のIFRSベース数値の確定、グローバル経理規定の整備やIFRSを採用していない在外連結子会社への教育プログラムの整備などが考えられる。

 日本経済団体連合会の「IFRSへの移行にかかる期間」に関する調査結果によると、1年以上2年未満との回答が32%、2以上3年未満が33%という順だった。3年以上と答えた企業も21%に上った。

日本オラクルの桜本氏

 ERPベンダーは会計基準のIFRS移行をビジネスチャンスととらえている。日本オラクルのアプリケーション事業統括本部のディレクター、桜本利幸氏はIFRS対応プランとして4つのステージを想定している。ステージ1は「影響分析と戦略決定」、2は「IFRSでの連結財務諸表の作成」、3は「複数会計基準でのトランザクション集中管理」、4は「IFRS対応を基盤にしたビジネスの最適化」だ。特に、2ではグループ企業などにおける連結システムの見直し、3では業務および業務システムの見直しなどが具体的な作業という。

 日本オラクルが提唱するのは、海外にまたがるグループ企業間で、財務会計や資金管理といった経理業務や人事や給与システムを共有し、ワンシステムのイメージで運用するやり方だ。

 具体的には、「Oracle Governance」などのリスク管理製品上に、E-BusinessSuiteやPeopleSoft、JDEdwardsといったERP、さらに業種特化型ソフトウェアを実装し、最上位層に旧Hyperion製品である「Oracle Enterprise Performance Management」を導入する。グループ企業間で経理業務などの業務の標準化を進めることで、仕訳生成エンジンによる複数会計基準への対応や複数帳簿の一元管理などが実現できるという。

 日本オラクルの顧客の1つで、グループ中核4社とそのほか計100社で業務プロセスの標準化を進めるある企業は、グループ共通の会計システムを構築している。これにより、8000億円の費用削減を見込む。年間でシステムの運用費を半減にする目標を立てている。

 Oracle自身も既に取り組みを始めている。米Oracleと、日本法人の日本オラクルあるいは各国の現地法人がまたがって利用するグローバルシングルインスタンスと呼ぶシステムを構築した。これにより会計、人事、購買、販売などの各業務プロセスを標準化した。業務プロセスの標準化とシステムの集約化が実現できたとしている。

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