Google、Salesforce.com vs Microsoft クラウドコンピューティングバトル2009壮絶な殴り合いに発展か(1/2 ページ)

SaaSインテグレーターのAppirioは、2009年のクラウドコンピューティングの展望について面白い予測を立てている。端的に言えば、Salesforce.comとGoogleのオープンクラウドが、MicrosoftのWindows AzureおよびMicrosoft Online Servicesと壮絶な殴り合いを繰り広げるというのだ。

» 2009年01月09日 13時30分 公開
[Clint Boulton,eWEEK]
eWEEK

 SaaSインテグレーターでコンサルティングサービスを提供するAppirioは、2009年のクラウドコンピューティングの展望について、いくつか面白い予測を立てている。端的に言えば、Salesforce.comとGoogleのオープンクラウドが、MicrosoftのWindows AzureおよびMicrosoft Online Servicesと壮絶な殴り合いを繰り広げるというのだ。Appirioは、エンタープライズアプリケーションやビジネスインテリジェンスから、エンタープライズソーシャルネットワークまで、クラウドをめぐって大きな出来事が相次ぐと見る。あなたは2009年のクラウドをどう予想しますか。

オピニオン 毎年この時期になると、世界中の調査会社からハイテク産業に関する膨大な予測が奔流のように流れ出す。

 通常、その年に突出したカテゴリーが1つあり、そのブームが翌年も続くと予想されることが多い。OracleでCEOを務めるラリー・エリソン氏には申し訳ないが、今年の栄冠は、インターネット上にホストされるインフラストラクチャソフトウェアとSaaS(サービスとしてのソフトウェア)アプリケーションで構成されるクラウドコンピューティングに輝くことに異論はないだろう。

 もっとも、調査会社は具体的なベンダー名や企業買収、そのほかの動向には言及せず、高度な知識に裏付けられた“当てずっぽう”で特定の事象を一般化しがちだ。

 だが幸運なことに、Salesforce.comやGoogleのクラウドプラットフォームを同期させるなど、便利な機能を提供するSaaSサービス会社のAppirioが、2009年のクラウドコンピューティングに関して極めて率直に10の予想を立てている。それらは、「Appirioが全世界2000以上の顧客企業や提携先の業界関係者から直接見聞きした情報や、業界有力者との会話の内容をおおむねベースとしたもの」だという。

免責 Appirioはパートナー企業のGoogleやSalesforce.comに好意的であるため、Microsoftの次期Windows Azureプラットフォームに対する批判は、多少割り引いて考えるべきだろう。以下、同社の予想を紹介するとともに、記者独自の視点を交えて論じたい。


予想1 Microsoftやほかの伝統的なソフトウェアプレーヤーは、新しいが、閉じたクラウドプラットフォームへの投資を増やす。一方、オープンアプローチ派のAmazonやFacebook、Google、Salesforceは、より多く、より深く「クラウドコネクション」に投資する。プラットフォームの優位性をめぐるクローズド対フェデレーテッドの議論は、さらに白熱するだろう。

記者の視点 この予測は正しい。すでにGoogleとSalesforce.comは、Force.comとGoogle Apps、Google App Engine、ZohoはGoogle App Engineとの間で統合化を進めている。こうした動きは、Windows開発コミュニティーでMicrosoft Windows Azureが目指そうとしているクラウドコンピューティングプラットフォームを先取りしたものだ。

予想2 Windows Azureは一部の独立系ソフトウェアベンダーや顧客にしか受け入れられない。そのためユーザーが失望し、先行するクラウドプレーヤーに2010年まで追いつくことはできない。ただし、その頃になっても「基本的にはMicrosoft Exchangeや既存のオンプレミス、.NETアプリケーション向けの比較的ベターな基盤」にとどまる。

記者の視点 わたしは当初、AppirioもGoogleやそのほかのSaaSベンダーと同じように、Microsoftはクラウドを「手にしていない」と考えていると思っていた。だがAppirioはそうした見方を否定し、確固たるオンプレミスソフトウェアビジネスを持つMicrosoftはAzureで苦戦するだろう、と指摘している。Microsoftにとって、自社の収益を共食いせずに従来の顧客とSaaSの顧客の双方を取り込むことは難しいというのだ。この点について、わたしは敬意を表しながらも反論したい。若干SaaS寄りにバイアスがかかっていて、必ずしも真実ではないからだ。Microsoftの目前にあるタスクは、Webドリブンのソフトウェア時代を迎えて前例のないものである。もちろん、もしMicrosoftがWindows開発者の関心を引くことに失敗すれば、同社が受けるダメージは相当シビアなものになるだろう。Microsoftにそうした失敗は絶対許されない。それゆえ、Azureは人々を熱狂させながら、柔軟で競争力のある価格体系を前面に打ち出し、GoogleやSalesforce.com、あるいはAmazon Web Servicesに果敢に戦いを挑むだろう。MicrosoftのSaaSは、顧客がクラウドへ完全移行するまでの間、オンプレミスアプリケーションを保管するものになる。では、そのときはいつ来るのか。まあ、そんなことが分かれば、わたしは予想屋にでもなっていただろう。

予想3 Googleがエンタープライズ向けに、セキュリティ、透過性、開発言語を強化し、多くの企業がGoogle Appsに群がるだろう。Google Appsを評価し、移行する企業は、現在の3倍以上になる。そうした企業の多くは、Microsoft ExchangeやOffice、Lotus Notesのユーザーである。

記者の視点 わたしは、そうしたことが2008年に起こるだろうと考えていた。Google Apps Premier Edition(GAPE)の立ち上げ、Postiniの買収、CapGeminiとの大型契約など、2007年は輝かしい年であったからだ。今や数多くの企業がGoogle Appsを利用しているが、大型契約の場合はあまり公表されないか、トップシークレット扱いとなる。Google AppsのGmailは見事な進化を遂げたが、わたしの見たところ、企業の反応は総じて冷たい。2007年を振り返ってみると、企業の間でGAPEに関する話題はほとんど聞かれなかった。2008年後半からMicrosoft Online Servicesが攻勢に出たが、MicrosoftにSaaSやクラウドはないと訴えて、Googleが2009年に企業顧客を倍増させるだろうというAppirioの予測に、わたしも同意する。一方、Googleによる企業買収の動きはどうか。おそらく景気後退の影響を受け、バーゲン価格で身売りするところも出てくるはずだ。

予想4 大手のSaaS 1.0カンパニーが倒産する。SaaSとクラウドへの投資は来年も増加するが、SaaS 1.0カンパニー――独自にSaaS製品を一から構築したスタンドアロンの会社――には行き詰まるところも出てくる。Salesforce.comのForce.comプラットフォームがライバル企業の息の根を止めるだろう。

記者の視点 おそらくAppirioは、SugarCRMかNetSuiteあたりを念頭に置いているに違いない。しかし、Salesforce.com以外で大手と呼べるSaaS 1.0カンパニーなどあるのだろうか。いずれにしても、SaaSであれ、オンプレミスであれ、2009年は多くのベンダーにとってタフな年になる。Salesforce.comというアナコンダが弱小のSaaS 1.0ベンダーを飲み込んだとしても、それほどショックな出来事ではないだろう。問題は、どこがアナコンダの餌食になるかである。

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