いつか来る好況のために――不景気は改革の最後のチャンス「2009 逆風に立ち向かう企業」テクノブレーン(1/2 ページ)

急激な経済情勢の悪化に雇用情勢は深刻な影響を受けている。転職すべきか、とどまるべきか。IT業界に特化したサーチ型人材紹介会社テクノブレーン能勢賢太郎社長に、この時代をどう乗り切るべきかを聞いた。

» 2009年01月15日 08時00分 公開
[聞き手:加山恵美,ITmedia]

ITmedia IT業界の雇用情勢はどうですか?

能勢 景気の影響がIT業界に及ぶまで少し時間差があり、ほんの数週間前から顕著に悪化してきました。ついこの間、2008年の夏ごろであれば、業界経験者ならば履歴書を送れば容易に採用が決まっていた状況が急変したのです。金融危機から来る情勢の変化はまるで津波のようです。

能勢賢太郎氏 IT業界の厳しい雇用情勢を語る、テクノブレーン代表取締役社長 能勢賢太郎氏

 例外はありますが、採用をストップする企業が続出しています。第2新卒や潜在能力に期待するポテンシャル採用は無くなりました。少なくとも次の決算までは厳しい状況は続くでしょう。

 現況で特徴的なのは、現場と経営層の間のギャップです。現場が人を増やしたいと要望していても、経営層が許さないのです。人事は板挟みになっています。この前、ある人事担当が「この溝は埋まりません」と嘆いていました。

 現場と経営層が対立するなか接点を模索しているので、選考基準は今までになく高くなっています。事前に転職先の企業を綿密に調べる情報収集能力や行動力、自分なりのキャリアビジョンを明確に語れるような人でないと採用されないでしょう。

 ただし指摘しておきたいのは、まだ求人はゼロではないということです。ITバブルがはじけた後は求人が消え去りましたが、当時に比べれば現状はまだましです。

ITmedia どのようなスキルや能力のある人が求められていますか?

能勢 IT業界で中堅の層なら技術的なスキルはもちろんのこと、ヒューマンスキルやコミュニケーション能力が重要視されます。リアルなビジネスをシステムで実現するため、ビジネスを推進させていくための行動力、人や予算をうまくマネジメントする調整力が必要です。

 もちろん技術面も大事です。変化をいち早くとらえて採り入れる能力が求められています。「クラウド」などのITの潮流を見極めて、それをシステムに取り込み展開する能力です。

 今は採用基準が異様に高くなっていますが、これは企業が採用したくないから不当にハードルを高めているのではなく、それだけ高い能力の人を求めているからだと考えています。不景気であればこそ、真に実力と行動力のある人材が必要になるからです。企業は今、とても真剣です。会社の将来を支えられる人材を厳しく見極めようとしています。

 故に、今転職できるのは、大変有能かつ有望と企業から期待される人です。一般的に不景気になれば採用は控えますから、人手が足りないならまずは社内で調整します。新たに採用するということは、社内にはいない逸材だということ。今採用が決まるということは、会社の近い将来の運命を託されるほどの人物だということです。

 課せられる仕事は簡単ではないにしても、この時期をチャンスと考えてもいいでしょう。新天地で重要なポストをつかむことができるかもしれません。

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