中小企業クラスでは全く別の世界がある。OSK(大塚商会)vsオービックビジネスコンサルタント(OBC)の2社による戦いだ。OSKは大塚商会による直販(複合販売で中小企業クラスを足で稼ぐ地道だが)による強力な販売力。OBCは勘定奉行で得られた圧倒的なブランド力、チャネル力で中小企業を面でカバーしている。
この2社は、今後どちらかが中堅Lクラスに早くリーチできれば総合力として優位にたてるだろう。実際のERP製品としてはOSKがリードしているが、OBCの奉行シリーズが単体モジュールでは強い背景を考慮すると、結局中小企業クラスではこの2社が抜けているという見方が正しい。
中小企業クラスは企業の潜在ニーズとしては最も「バッファ」が大きい市場であるが、中堅企業クラスに比較した場合にトータル予算は少ない。しかし求める要求は「自社最適なソリューション」であることに違いはない。中堅企業と中小企業でも提案する工数は極端な違いはない。むしろユーザー企業内に専任スタッフが少ない面やリテラシーが低い分、かえって面倒なくらいである。
むしろ丁寧な提案と面倒見が求められる中小企業は、非常に難しい分野であることを考えると「中堅が厳しいので、中小へシフト」などという安直な考えで攻略できる分野ではない。そこに大塚商会なりOBCチャネルが厳然としてシェアを誇っていられるだけの、ビジネスモデルを有しているのだ。その仕組みが彼らの生命線であり、多くのベンダーは「手離れの悪い、儲けの少ない」企業でどのようにビジネスをできるかを学ぶべきだろう。
この記事は「08年版中堅・中小企業向けERP市場の実態と展望:ノークリサーチ刊」を元に書き下ろしたもの。詳細は以下のレポート参照。
ノークリサーチ代表。中堅・中小企業を中心とするIT導入実態調査及び導入動向分析、同市場に対するベンダーへの戦略提言などを得意としている。執筆、講演なども多数。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.