わが社のコスト削減

電子政府のあり方を西新橋から発信――CyberGovernment SquareITで行政のコスト削減(1/2 ページ)

この6月、日立の電子行政ショールーム「CyberGovernment Square」がリニューアルし、コンテンツも大きく入れ替わった。公共サービスの質やセキュリティの向上、さらにはITを活用した業務効率化やコスト削減につながるソリューションが展示され、デモ環境に触れられる。

» 2009年07月09日 08時00分 公開
[岡田靖,ITmedia]

 CyberGovernment Square(以下、CGS)は、電子行政関連のさまざまなソリューションを展示し、デモを行う場として2000年3月にオープンした。場所は霞ヶ関の官庁街に近い西新橋に構えられ、地方自治体の職員や自治体の議員、民間企業などの来場者は、2009年2月に累計3万人を突破したという。

 そして10周年まで半年となったこの2009年6月1日、コンテンツを大きく入れ替えてリニューアルオープンした。今回のリニューアルでは、指静脈認証を用いたセキュリティソリューションや、シンクライアント、TV会議システム、デジタルサイネージなどのソリューションが新たに加わったという。まずは、いくつかのデモ内容を紹介しよう。

確実な個人認証を、さまざまな用途に活用――指静脈認証

指静脈認証によるオフィスセキュリティのデモ 指静脈認証によるオフィスセキュリティのデモ(画面は開発中のもの)

 指静脈認証は、指紋より誤認識が少なく、また偽造が非常に困難であるため、より確実に個人を特定できる、セキュリティの高い認証手段だ。すでに金融機関のATMなどで用いられている例もあるが、CGSにおいては一般的なオフィス環境を想定し、端末のログイン管理や決裁時の個人認証はもちろん、入退室、印刷、ロッカーの管理なども含めたトータルなデモ環境として用意されている。いったん登録しておけば、指一本で適切なアクセス権限を得られるという仕組みだ。「なりすまし」を排除できるだけでなく、ログを管理しておくことで誰がいつ何をしたのかが分かるようになり、不正の抑止や事後検証にも役立つ。ひいては、行政に対する住民の信頼向上にもつながることだろう。

 日立製作所 公共システム営業統括本部 カスタマ・リレーションズセンタ 宣伝企画G 課長の泉菜穗子氏によれば、このデモに対して、「ちょっと興味深い反応がある」という。

 「当然ながら別の誰かが代理で認証することはできませんから、“決裁権限を持つ人間が不在だったら仕事が滞ってしまうのではないか”と質問されることがあります。ある意味それは正しい姿なのですが、同時に代理承認ルールを作り、システムに盛り込んでおくべきだと提案しています」(泉氏)


 なお指静脈認証は、個人情報の厳密な管理が求められる民間企業から官公庁・自治体に広がり、現在では医療機関などでの採用例も広がっているという。また、日立は5月7日に、明治大学での採用例を発表している。これは、主に社会人向けのeラーニング授業に応用したもので、エンドユーザーのPCに指静脈認証装置を接続し、インターネットを経由して大学側のサーバで認証を行うようになっている。明治大学では、文部科学省からの嘱託事業「図書館司書講習(メディア授業)」でインターネットを介した講習を導入する際、なりすましを排除する対策が必要となり、指静脈認証の採用を決めたとのことだ。

明治大学の社会人向け「図書館司書講習」では、ログインに指静脈認証を採用している(写真=左)、ログイン後は講習をオンラインで受けられる(写真=右)

ハコモノやインフラの有効活用に――TV会議システムとデジタルサイネージ

 「自治体においては、TV会議システムを災害対策の観点で検討している例が多いようですが、日常的に使っていてこそ、いざというときに役立つものだと説明しています」と泉氏は指摘する。「“平成の大合併“で広大な面積になったり、飛び地ができてしまったりした地方自治体も少なくありませんから、こうしたところでは遠く離れた分庁舎との情報共有などに日頃から使えるでしょう。そうすれば、職員の移動時間や、移動に要するコストを節約できるはずです」(泉氏)

 TV会議システムのデモ環境は、リアルタイム画像と音声による対話だけでなく、電子ホワイトボード(日立ソフトの「StarBoard」)を活用した資料共有も可能になっている。電子ホワイトボードには、専用の電子ペンや指などで資料への書き込みが可能になっており、手書き文字を認識したり、描線を直線化したりするなどの機能もあるので、書き込んだ内容を読みやすく整理できる。

 TV会議システムの導入を検討する上で、しばしば懸案とされるのが回線の問題だ。離島や山間部など、ブロードバンド回線が利用できない環境も、まだ日本には残っている。

 「TV会議システムで大事なのは、画質より音声が途切れないこと。画質やフレームレートを下げればISDN回線でも利用できるのですから、まず導入して利用実績を重ねてから、追って高速回線を導入して快適にするといった、段階的な導入も可能です。日立はグループ全体でTV会議関連の各種ソリューションを持っており、回線の問題も含めてトータルに提案できます」(泉氏)

タブレットに向かって書き込んだ内容(写真=左)を、会議室の電子ボードに表示(写真=右)。手書き文字の認識も可能だ
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