ICT部門はいつまでも「コストセンター」でいいのか伴大作の木漏れ日(1/3 ページ)

利益を生み出さないといわれることのある企業のITあるいはICT部門だが、ここにきて外部環境が大きく変わってきた。日米におけるICT部門の決定的な違いに着目すると、今後目指すべき方向性が見えてくる。

» 2009年07月17日 18時34分 公開
[伴大作,ITmedia]

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 以前「オーバー・カンパニー」に変化が起こると予言した。これは実際、さまざまな業種で進んでいる。キリンとサントリーの経営統合が新聞紙面を賑わしているが、これも指摘した大きな流れの1つだ。

 規模を拡大する利点は何か。当然、市場支配力が上がるため、価格に対してより厳しくなってきた流通業あるいは消費者との価格交渉で有利な地位を勝ち得ることができるという点が大きい。さらに、もう1つ見逃せないのは、重複する部署や役職者を効率化できることだ。つまり、間接コストの切り下げが可能だという点である。

 この意味で、企業のICT部門は直接の影響を受ける可能性が大きい。現在でも経営陣から厳しいコスト削減の圧力を受けているが、さらに厳しい状況に追い込まれることは必定だ。

 そこで、今回は、ICT部門の生き残りについて書こうと思う。

跛行性が強まる景気回復

 景気が回復している、少なくともこれ以上景気の悪化はないといわれている。確かに、さまざまな指標は一時のパニック状態から脱却したというのは事実だ。しかし、回復は業種により、さらに同じ業種でも個々の企業によって大きな差が存在する。

 消費者は将来の所得が現在より下がる可能性が高いと判断し、節約の手を緩めていない。従って、景気回復の恩恵を受けている企業は、そのような消費性向に合った商品を提供している企業に限られている。アパレル業界で破竹の進撃を続けるUNIQLOを展開するファーストリテイリングがそうだし、家具を販売するニトリも好調業種だ。共通しているのは、安価で高品質な商品を提供していることである。

 米国の不況で急速に業績が悪化した自動車業界でも、プリウスは快進撃を続けている。低燃費、低価格でいままで業績を伸ばしてきた軽自動車メーカーを脅かす可能性さえ出てきたのである。

 このような傾向は、自動車産業、アパレル、流通に限った話ではなく、他にもさまざまな業種で業績の差が顕著に現れてきている。要するに消費者の変化を敏感に察知できた企業だけが生き残りを許されるような状況になってきたのだ。

経営力の差

 僕が考えるに、急速な市場の変化を予想していた経営者は少数ではなかった。多くの経営者は既に米国金融業界がバブル状態にあることを認識していた。しかし、それが崩壊した場合、自社の経営にどれほどの影響を被るか正確に予測していた経営者は皆無に近い状況だった。

 2008年暮れ、僕は大手ICTベンダーの経営陣に2009年度の見通しを聞いたが、その時点でもこれほど酷い惨状を予測した経営者はほんの一握りだった。

 なぜ経営者は見通しを誤ったのだろうか。反対に、この不況下でも業績を伸ばした企業の経営者は何を見ていたのだろう。

 また、今回の景気回復は今までのような景気循環とは明らかに異なる様相を示している。強者はますます強くなり、弱者は息の根を止められる。「勝ち組」と呼ばれる企業は、今回の不況を追い風にして、ますます市場支配力を強め、ライバルを駆逐していくだろう。

 彼らの武器は優秀な「マネジメントスタッフ」の存在であり「ICT能力」だ。

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