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» 2009年08月03日 17時12分 UPDATE

Googleの「使命」と電力事情:スマートグリッド――IT企業が注目するもう1つのネットワーク (1/2)

インテリジェントな電力供給網「スマートグリッド」が北米を中心にヨーロッパなどで拡大している。

[中尾真二,ITmedia]

 インプレスR&Dは7月30日、スマートグリッドとITが切り開く未来と題して「スマートグリッド・コンファレンス」を開催した。「スマートグリッド」とはインテリジェントな電力供給網のことだ。北米を中心にヨーロッパなどで拡大している概念であり、ビジネスだ。このイベントは、スマートグリッドの最新動向、ビジネスチャンスなどをセミナー形式で議論するというものだが、グーグル、シスコシステムズといったIT系の企業が参加したパネルディスカッションをレポートする。

 スマートグリッドの背景について簡単に説明しておこう。日本ではまだなじみのない言葉だが、北米や欧州では電力事業が日本よりも広く解放されており、発電所と電気を供給する電力会社をそれぞれ民間企業が担っている。国土が広いということもあり、電力供給や安定性、料金、その他が地域や企業によってまちまちだ。

1googleIMG0858.jpg グーグルのREへの取り組み。ピーク電力の3分の1はREでまかなえるようになった

 特に、災害や事故への対応は、生活する上で重要なインフラである電気の場合深刻な問題となる。また、CO2削減や代替エネルギー問題により、太陽光や風力、地熱など「再生可能エネルギー」への転換が社会的に要請されている。この再生可能エネルギー(RE)は、安定供給、コストなどの課題が残されている。特に、太陽光発電の場合、各家庭に設置されたソーラーパネルを電力会社が買い取るという双方向の電力供給ネットワークという新しいシステムを考えなければならない。

 スマートグリッドとは、このような問題に対処するため、地域ごとの電力網をネットワーク化し、そこに小規模な再生可能エネルギーのネットワークも取り込み、IT技術によってインテリジェントに管理、配分しようというものだ。再生可能エネルギーへの転換問題や電力会社による家庭の余剰電力の買い取りなどはグローバルな趨勢である。日本独自のスマートグリッドは必要で、同様に独自のビジネスの可能性もある。

Googleの考え

 前置きが長くなったが、今回のパネルディスカッションに参加した企業は、グーグル、シスコシステムズ、ベタープレイスの3社だ。それぞれの企業が日本のスマートグリッドに対する取り組みやビジネスモデルについて発表し、その後パネルディスカッションを行った。

 最初の発表は、グーグル 名誉会長 村上憲郎氏だ。村上氏は、グーグルが場に呼ばれた理由の説明をする。グーグルの使命は、世界中の情報のインデックスを作り、世界の人に無料でアクセスしてもらうことにあるという。そこでのビジネスモデルは広告収入であると述べた。その上で、検索サービス、地図サービス、Gmail、YouTubeなどのサービスはこれからも拡大するとして、グーグルのデータセンターは基本的に無限に増え続けることを想定しなければならなくなっていると指摘した。

IMG_0834murakami.jpg グーグルの村上憲郎名誉会長

 グーグルに限らず、データセンターの規模が拡大するにつれて無視できなくなる問題が消費電力だ。データセンターにはPUE(Power Utility Efficiency)という考え方がある。サーバなどの消費電力に対する設備全体の電力の比率を示すものだが、データセンターでは、サーバを動かすための空調設備の電力といったオーバーヘッドコストが増大する傾向にある。また、太陽光発電など再生可能エネルギーは小口発電の集積となるため、スマートグリッドのような新しい電力ネットワークがないと安定供給が維持できない面もある。

 つまり、グーグルにとって低廉な電力の安定供給は、見えない部分で収益モデルの根幹をなすものであり、グリーンニューディール政策などはCSRの要請ではなく、企業の事業継続という意味で必要なものだという。確かに、電気代が急激に上がると(欧米ではよくある)収益を圧迫するだろうし、停電などでサーバがダウンし、その分広告トラフィックを失えば、直接的な売り上げに影響する。グーグルにとって電力の問題は切実なのかもしれない。

IMG_0868cisco.jpg シスコシステムズの堤浩幸氏

 続いて登壇したのは、シスコシステムズ マネージングディレクター サービスプロバイダーオペレーションズ、堤浩幸氏だ。シスコでは、冒頭に説明したようなスマートグリッドについて欧米などで既にビジネスを展開している。CO2削減の社会的要請と電力の重要パターンの変化から、複雑で巨大化する送電系統を全体最適化して管理するスマートグリッドが整備されつつある。発電所、変電所間をネットワークでつないで制御することになると、サイバーテロなどへの対策も必要になってくる。その中で、シスコが展開するネットワークのエンドツーエンドの接続ソリューション、ルーティング技術などを適用しているという。

 ただし、日本は欧米ほど電力事業が自由化されておらず、それが逆に料金を含めた安定性や信頼性につながっているとし、日本でのスマートグリッド戦略は少し違った展開になると述べた。既存の送配電ネットワークの自動化をIPによってさらにインテリジェント化するという戦略は、安定性というよりは最適化や効率改善がメインとなるそうだ。また、欧米ではスマートメーターという家庭内の電力モニタ端末の普及が進んでいる。スマートグリッドには不可欠な存在だが、変電所などの制御ルータとともに、ソフトウェアやマネジメントサポートを行うことで、スマートメーターの普及を支援していくとした。

 そして、これらのスマートグリッドの制御、管理インフラを利用して法人向け、家庭向けのエネルギーマネジメントソリューションにも力を入れていくという。

masamuneIMG_0920.jpg ベタープレイス・ジャパンの三村真宗氏

 3番目の登壇はベタープレイス・ジャパン 事業開発本部 本部長兼社長室室長 三村真宗氏だ。ベタープレイスは、電気自動車のバッテリーを着脱可能なものにして、充電ステーションだけではなく交換ステーションを整備することで、自動車メーカーと電力会社それぞれに新しいビジネスモデルを提案するというユニークな企業だ。

 現状の電気自動車は、充電の問題と高性能バッテリーの価格が高価なことがネックとなっているが、バッテリーは交換して使うものにすれば、自動車メーカーはバッテリーの価格を車両の価格に載せることなく、大幅な価格ダウンも不可能ではないという。このとき充電スポットや交換ステーションをスマートグリッド化することで、自動車メーカー、電力会社、ステーションを連携させたビジネスが創出でき、電気自動車インフラの普及・整備が進むというものだ。

 携帯電話などの通信事業のモデルになぞらえて、バッテリーを着脱可能にすることで、ユーザー買い切りにせず、使った電気だけ課金するようなしくみを導入し、自動車メーカーと電力会社の間の「ラストワンマイル」を交換ステーションが取り持つという新しいビジネスを考えているとのことだ。

 実際、イスラエルとスウェーデンではこのモデルの実施が決まっているそうだ。イスラエルは地政学的な要因から脱化石燃料を国策として進めている。2011年からこのサービスを開始するという。スウェーデンも脱原子力、脱化石燃料を進めており、2012年からサービス開始の予定だ。どちらもガソリン自動車への課税率が80%前後(100万円のガソリン車は税込みで180万円となる)とし、電気自動車への課税を0〜10%としている特徴もある。

 日本でもタクシー業界から段階を踏んで普及させる計画があるという。タクシー業界から展開する理由は、走行時間、距離が長いタクシーの電気自動車化はCO2削減効果が高いことが1つにある。営業エリアが固定的なのでインフラ整備がしやすいこと、ドライバー交代制で24時間稼働が前提のタクシーは充電式ではなく交換式が前提となること、LPGステーションの耐用年数が限界に近いことなども挙げられる。

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