プライベートクラウド

パブリック、プライベート、オンプレミスが混在する世界システム構築の新標準(1/3 ページ)

IT業界ではクラウドコンピューティングが大流行だ。将来的にはパブリック、プライベート、オンプレミスが混在する世界を1つのツールで統合管理するようになるだろう。

» 2009年08月06日 08時00分 公開
[谷川耕一,ITmedia]

 IT業界ではクラウドコンピューティングが大流行だ。一般的にクラウドコンピューティングといえば、パブリッククラウドを指す。ベンダーが用意したデータセンターにプラットホームやサービスを配置し、それらをインターネット越しに利用するものだ。

パブリッククラウドのメリットとデメリット

 パブリッククラウドには、さまざまなメリットがある。複数の顧客がサービス環境を共有するマルチテナンシーで効率化を図り、価格メリットの高いサービスが受けられる。多くのサービスが従量課金制なので、初期導入時に大きなコストが発生しない。当然ながら運用管理はクラウドサービスベンダーが担うので、運用管理の手間と製品サポート費用などが別途発生することがなく、大幅なコスト削減が見込める。

 もう1つのメリットは俊敏性の獲得だ。通常、新たにアプリケーションを利用しようとすれば、ハードウェアやソフトウェアを購入し、セットアップしなければならない。場合によってはプログラム開発も行い、使えるようになるまでに数週間、開発部分が多ければ数カ月から1年以上の時間が必要になるだろう。

 これに対しパブリッククラウドならば、契約さえ済めばすぐに利用できる。必要なのは自社で利用するデータの転送と多少のカスタマイズ設定くらいで、数日から1週間程度で利用を開始できる。すぐに止められるのもパブリッククラウドの利点だ。自社導入したアプリケーションでは、たとえ使いにくくても我慢して利用するか、手を掛けてなんとか使い勝手を改善するだろう。パブリッククラウドなら、使いにくい、自社用途に合わないなどの事情があれば即座に契約を解除すればいい。高価なハードウェアやソフトウェアを購入しないので、減価償却資産の残存価額を気にする必要もない。

 パブリッククラウドの利点を活用した例としては、定額給付金やエコポイントなどの政府施策をサポートするシステムの構築事例がある。これらの施策は、決定されてから施行までの猶予時間が短いため、ハードウェアをそろえた上でシステムを開発し、テストという段取りを踏んだのでは間に合わない。

 そこで、SaaS型のプラットホーム上でカスタマイズを行い、俊敏にシステムを展開する方法が有効になってくる。ご存知の通り、定額給付金などの施策は一回きりのものだ。期日がくれば終了する。その際も契約を解除するだけで済むため、IT投資の無駄を最小限に抑えられる。

パブリックのデメリットを解消するプライベートクラウド

 パブリッククラウドには、デメリットもある。1つのサービス基盤を複数の顧客で共有するため、サービス品質面に不安が出る。ある顧客が負荷の重い処理をすれば、別の顧客の環境で十分な処理能力が得られないかもしれない。データベースを共有していれば自社の重要情報が他社に漏れる危険もある。日本の保守的な企業などでは、インターネット越しの利用というだけでセキュリに不安を持つだろう。

 上記のような懸念があることに加え、自社の要望に合わせた環境のカスタマイズが難しいのもデメリットだ。独自セキュリティ設定を施したい、処理に優先順位を付けたい、さらには既存システムとの連携を図りたいといった要望があっても、それを自由に反映できない。

 もう1つのデメリットはコストだ。パブリッククラウドはコストが低いと説明したが、すべての状況でそうなるとは限らない。ユーザーが多ければその分の利用料が毎月発生し、長期間利用すれば莫大な費用が積み上がる。そうなれば、ハードウェアやソフトウェアを自社購入し、自ら運用したほうが安上がりということになってくる。

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