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栗原潔の考察:クラウドに関する「モヤモヤ」を解消する〜後編 (1/4)

前編に引き続き、後編もクラウドに関する4つの「モヤモヤ」についてわたしなりの見解を示していこう。


栗原潔氏に関する記事、オルタナティブ・ブログ『栗原潔のテクノロジー時評Ver2』もどうぞ。


 前編に引き続き、後編もクラウドに関する4つの「モヤモヤ」についてわたしなりの見解を示していこう。

モヤモヤ5 プライベートクラウドという考え方に意味はあるのか

 一部のITベンダーがプライベートクラウドという概念を提唱している。クラウドを企業内で展開するという考え方だ。インターナルクラウド、あるいは、イントラクラウドと呼ばれることもある。なお、プライベートクラウドと特に区別するためにインターネット上で展開されるクラウドのことをパブリッククラウドと呼ぶこともある。

 プライベートクラウドにより、データを社内に置きながら(つまり、セキュリティやコンプライアンス上のリスクを最小化しながら)クラウドのメリットを享受できるとされている。この主張は正しいのだろうか。

 まず、通常のクラウドにおいて、提供者側のメリットとして挙げられる「規模の経済」の効果(大規模なインフラを構築することで処理容量あたりのコストを下げる)についてはどうだろうか。GoogleやAmazonが大規模なデータセンターを展開することで「規模の経済」を実現していることはよく知られている。

 容易に分かるように、中規模以下の企業ではプライベートクラウドによりこのような「規模の経済」の効果を得ることは難しいだろう。しかし、グローバルな大規模企業が傘下の企業も含めてグループ全体でクラウドを実現するのであれば、ある程度の規模の経済の効果は得られるだろう。

 クラウドが持つ柔軟性と俊敏性上のメリットについてはどうだろうか。企業内においても業務上のニーズにより処理能力容量の増減が生じることは通常のことだ。例えば、期末、新製品発表時、キャンペーン展開などのタイミングでピークが生じる。さらに、大規模データ分析、ソフトウェア開発などの用途のために不定期的に大量のハードウェア資源が必要とされるケースもある。これらの多様なアプリケーションに対してピークが同時に訪れるのでなければ、クラウド的な仕組みによりハードウェア資源を動的に配分することで、各アプリケーションの処理容量要求に迅速に応えつつ、全体的なハードウェアコストを削減できる可能性は高い。

 ここで、プライベートクラウドと新しい言葉は使ってはいるが、いままでも言われてきたエンタープライズグリッドなどの考え方と実質的に同じではないかとの批判が聞かれるかもしれない。そのような批判は妥当と言わざるを得ない。しかし、だからと言ってプライベートクラウドという考え方そのものの価値が減少するわけでもない。「以前からある概念ではあり、その重要性も変らないが、マーケティング的に新しい名前を付けてみました」というのが正直なところだろう。大規模なユーザー企業にとっては検討に値するアイデアではあると思う。

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