変わる世界伴大作の木漏れ日(1/3 ページ)

2010年と年が改まった。それがどうしたと言われても困るが、ともかく真っ暗闇の中をライトもつけずにダッチロールを繰り返した2009年が終わり、新しい年を迎えたという点では朗報だ。

» 2010年01月06日 15時30分 公開
[伴大作,ITmedia]

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 今年がどんな年になるのかという疑問に対し、僕は結構良い年になるのではという楽観的な見通しを持っている。もちろん不安定な要素は抱えているのだが。今年最初の「木漏れ日」では、僕が考える今年の予測について書こうと思う。

案外、景気は回復する

 なぜこのように楽観的な見通しを展開するのかという点について、最初に根拠を記そう。おととしのサブプライムローン騒ぎに始まる一連の経済ショックは、2つの要素が重なって起きたものだ。

 1つは英国や欧州、米国、中近東を中心に需要を無視した不動産バブルが起きたという側面だ。当然、ビジネスベースを無視した開発投資だったため、返済の見込みはない。従って、信用不安が発生する。地域によっては国ごとデフォルト(債務不履行)に陥った。

 2つ目の要因は需給ギャップだ。典型例が米General Motorsだ。もっと正直に言うなら、販売先を次々に日本企業に奪われ、販売数と生産数に大きなギャップが発生したため、倒産した。ついでながら、勝ったはずのトヨタ自動車も肝心の米国市場が大きく冷え込んだため、こちらも大きな需給ギャップが発生し、おまけに円高による為替差損で大打撃を受けた。

 このように、資本市場の信用不安と実体経済の需給ギャップが重なって起きたのが今回の不況の主因だとしたら、1つ目の信用不安はいまだに完全に解消されたとはいえないものの、もう1つの需給ギャップは、昨年来の世界的な業界再編で相当縮小したといえる。

 その典型的な現象が、2009年における東証一部上場企業の希望退職者数の推移だ。おととし暮れに季節工、派遣労働者の解雇が物議を醸したが、正社員である希望退職者の数は直接企業のコスト構造に影響を及ぼす。工場閉鎖も相次いだ。合併も活発に行われたことも、ギャップの解消につながる。

外需

 経済を支える公共投資、大衆消費、輸出の3本柱の内、今回の不況で壊滅的な打撃を受けたのが輸出だ。特に円ドル交換レートが円高状態で高止まりしているのはやはり不安だ。しかし、一時は1ドル80円台を割るといわれていた為替レートも、ここにきて90円前後で落ち着いている。確かに、1ドル90円は今の日本企業にとって重荷には違いない。しかし、対ユーロではそれほど大きく上がっているわけではないので、対米依存度を下げ、ほかの地域での収益向上を模索するという点ではマイナスではない。

 代表的な例が中国を中心とするアジアを重視したビジネス展開だ。中国の景気は過熱気味といえるほど良いのはよく知られているが、そのほかのアジア地域もかなり良い。資源国であるオーストラリア、また、ブラジルなどのBRICs地域もそれなりの景気を維持している。

 つまり、米国の内需頼みという世界経済の構図は、今回の不況で完全に様変わりしたということだ。その中で、日本企業は自動車や家電など伝統的な輸出産業ばかりに注目が集まってしまっているが、従来国内産業と目されていた食品や流通、アパレル、日用品のメーカーが海外進出に熱心になっているのが最近の傾向だ。輸出も様変わりしているのである。

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