世界で勝つ 強い日本企業のつくり方

日本流と現地流の調和をどう生み出すか――ソフトブレーン・駒木専務世界で勝つ 強い日本企業のつくり方(2/3 ページ)

» 2010年01月06日 08時00分 公開
[聞き手:國谷武史,ITmedia]

“現地流”とどう調和するか

―― 進出当初に比べると社会環境が大きく変化し、ビジネスも難しくなりました。現在は青島に拠点を集約されていますね。

駒木 はい。先に申し上げたように大都市でのビジネスが非常に難しくなり、2009年に北京と上海のオフィスを現地企業に売却(現在はeセールスマネージャーの販売総代理店)して、2005〜2006年に大興電子や都築電気、TDCソフトウェアエンジニアリング、トーヨーカネツ ソリューションズ、ソフトブレーンなどの共同出資によるソフトブレーン・オフショアおよび「軟脳離岸資源」をそれぞれ設立しました。

 青島は北京や上海から高速列車で1時間ほどと近く、日本では名古屋や仙台のような都市になると思います。北京や上海などの大都市へ出て行く若者もいますが、現地に残りたいという若者も多く、大都市ほど離職率は高くはありません。

 また、青島に進出しているIT企業はまだ少ないのですが、家電大手の海?集?(ハイアール)や通信機器大手の海信(ハイセンス)が既に進出しているため、組み込み分野を中心に優秀な理系の学生が数多くいます。人材を獲得しやすいメリットがあり、平均月収も2500元ほどです。

―― 仕事に対する意識の違いやマネジメントの難しさも克服されたのでしょうか。

駒木 青島では日本流と現地の方法をいかに調和させていくかに重点を置いています。基本的にはすべての顧客が日系企業なので現地スタッフには教育などを通じて日本流の仕事の進め方などを理解してもらうようにしています。しかし、これだけでは職務を明確にするという中国の方法に合いませんので、北京や上海での経験を踏まえて独自のツールエンジンを開発しました。

 これは日本流の要素を考慮しつつ、ソフト開発のすべての工程を“見える化”して標準的な開発手法を決めたものです。プロセスのある段階ではある程度の品質の成果物ができると事前に決めておきます。これにより、各担当者が自分の職責に応じた業務をツールエンジンに照らしながら明確に進めることができ、全体としての品質を高めることにもつながりました。

 北京ではこうしたツールが無く、日本流の「誰かにお願いすればやってくれるだろう」という意識で、現地スタッフの意識が何かを手探りしながら仕事を進めなければなりませんでした。また、人には昔ながらのやり方に固執してしまうところがあるので、特に大都市では何か新しい方法をしてもうのでも定着させるのが難しいですね。

 青島では最初から新しい人材に日本流のやり方を理解してもらい、ツールによる業務の可視化を実践してきたことで、設立2年目から安定した利益を出せるようになりました。

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