世界で勝つ 強い日本企業のつくり方

やり直せる時代の新教育論(3)世界で勝つ 強い日本企業のつくり方(1/2 ページ)

「どうすればいいですか?」「Googleで調べたんですけど、分からなかったんですが」という学生とどう向き合えばいいか分かっている教師はどれだけいるだろうか。

» 2010年01月13日 14時30分 公開
[大木豊成,ITmedia]

 ソフトバンクなどさまざまな企業において豊富なビジネス経験を持つオルタナティブ・ブロガーの大木豊成氏に、新たな教育論を話してもらう企画の第3回。第1回はこちら、第2回はこちら


 わたし自身が教壇に立つようになって、教育者の視点ということを考えるようになりました。「教育」という文字は「教え、育てる」と書いてあります。しかし、残念ながら教えられてきたかもしれないが、育ってきていない若者を多く見かけます。

 例えば、常識についてです。常識は年代によって違うと言う方もいますが、同じ部分と違う部分があるというのがわたしの感想です。非常識という言い方をするのであれば、それは年代問わずです。むしろ、年配の方に非常識な人を見かけることが多いように思います。

 そうではありません。考えるということを放棄している若い人を多く見かけるという意味です。

 「どうすればいいですか?」

 「(Googleで)調べたんですけど、分からなかったんですが」

 こう言ってくる学生に対して、適切なアドバイスをしている教師はどれくらいいらっしゃるのでしょうか。どう対応すれば知っている教員は、どのくらいいるのでしょうか。

正解を求める教育の欠点

 皆さんもご存じの通り、日本では正解を求める教育をしています。小学生が筆算を学ぶとき、けたがずれていると回答が正しくても不正解になります。それは、筆算はけたをそろえて間違いを防ぐ数式だからです。

 一方、海外で学んでいる小学生は、答えは1つでも問題は幾つもあることを学んでいます。例えば、答えが12になるかけ算は、3×4、2×6があるわけです。どちらを回答しても正しい。そういう教え方をされている子どもが大きくなった時のことを考えると、どこかで日本の子どもとの開きが出てくるように感じます。

 生徒が小学校から高校までをそのような環境で過ごしてきていることを知った上で、大学や専門学校などで教える人間にはどんなことが求められるでしょう。わたしは、論理力と実践力を組み合わせた力の育成だと考えています。

 論理力は大学の教授が得意とする理論です。経済学、経営学といった学問を教える場合に、アダム・スミスからスタートする、あれです。学問ですから大変難しいわけですが、学生が分かるように教える。論理力が必要です。

 実践力は、実際にビジネスを経験してきた人が、身体で学んできたこと、実践で身に付けてきたこと、理論では説き明かせないようなことを教えることが大切になってきます。

 この2つを持ち合わせた人は少ないので、そこは組み合わせ、双方の力を持った教員同士が協力して学生たちが身に付けるべきことを教えられると思います。

 残念ながら、多くの大学や専門学校では、教える側の理論になっています。教員ありきで考え、A先生が得意とする分野はBだから、学生たちにはBを教える、といった具合です。足りないと思われるところも、教員の助手とか、知り合いが補うことが多く、どうしても抜け、漏れが生じてしまいます。

 本来はマクロで考え「当学を卒業した人間はこうなってほしい」という考え方をブレークダウンしていき、「だからAとBを学ぶ必要がある、できればCもあるほうがいいので関しては公募する」といった手順をたどるべきなのでしょうが、そういうケースはまれなようです。

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