世界で勝つ 強い日本企業のつくり方

やり直せる時代の新教育論(1)世界で勝つ 強い日本企業のつくり方(1/2 ページ)

グローバル化の時代に日本企業が勝ち抜くには、教育への考え方を大幅に転換する必要が出てきている。シンガポールの大学を卒業し、ソフトバンクなどでさまざまなビジネス経験を持つ大木豊成氏に新たな教育論を展開してもらう。

» 2009年12月23日 08時00分 公開
[大木豊成,ITmedia]

 現在、日本には770の大学が存在しています。都内を中心とした有名大学は相変わらずの人気、倍率を誇っていますが、実際には半数近くが定員割れを起こしており、学部を閉鎖し、新入生募集を停止する大学まで出てきています。

 少子化が主たる原因と言われていますが、二極化している理由はそれだけではないように考えられます。「その大学を出てどうなるのか」という問題があるのです。

日本の教育の現場

 有名大学を出れば就職活動に有利なのは、今も昔も変わりません。採用する側から見れば、入学試験の合格倍率の高い大学を卒業したということは、それなりに勉強をしてきたのであろうし、成績も確保したのであろう、というポテンシャルを評価して採用するからです。

 一方、そうではない大学の場合には、何を学んできたのかが分からないし、どんなポテンシャルがあるのかも判断できない。だから、書類選考で落としてしまうことが多いというのが実情のようです。つまり、大学を出たからいい、大学卒だから就職できる、という時代ではなくなってきているわけです。

 わたし自身、専門学校で教えていて驚いたのは、一度大学に入ってから退学して専門学校に来ている学生の多さです。大学に入ってみたものの、出口が見えない、というのが多くの理由です。

 なんとなく大学に入ってみたが、1年、2年と勉強していくうちに、卒業後の進路が見えなくなってきた、あるいは自分がなりたいものが明確になってきたものの、所属している大学にはそのための出口がない、といった事情があるようです。

 以前、大学の運営にかかわっていたときに感じたことは、大学で教える人の多くがビジネス経験を持っていないことです。経済学経営学といったものであってでもです。これでは、学生が出口をイメージしにくいのは無理もありません。

 わたしがシンガポールの大学にいたのは、今から四半世紀以上前ですが、とある授業を担当していた教授は、有名コンサルティング会社の現役パートナーでした。彼はコンサルティング業務を行うかたわらで、大学で教授として教えていました。学生がビジネスにかかわる質問をすると、すべてに即答していたのが印象的でした。それも、一切専門用語を使わず、社会経験のない学生が分かる言葉で話してくれたのです。

 わたしは自分の大学がスタンダードだと思い込んでいました。そのため、日本に帰ってきたときに、ある都内の大学の授業を聴講する機会があり、大きな講堂のような教室で、マイクを持った教授が一方的に話しているのを見て驚きました。質問をする学生もおらず、約半数はほとんど聴いている様子がない。変わってきているとも聞きますが、そこに座っている時間がもったいないと感じました。

 日本は日本、他国を真似する必要はないのかもしれません。しかし、世界で活躍している日本人の多くが、日本の大学を出た後に欧米のビジネススクールに通っているのはなぜでしょうか。ただMBA(経営学修士)を取得するためでしょうか。

 海外のビジネススクール出身の人に会って感じるのは、視線の高さです。年齢はいろいろ、地位もいろいろなのですが、総じて物事をふかんして見る力を持っています。何かを見聞きしたときに、それをグローバルで考えるとどうなるのか、あるいは経営という視点でとらえるとどうなるのか、といった癖が付いているのです。必ずしも、MBAを取得したからというわけではありません。

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