現場で効くデータ活用と業務カイゼン

FileMakerで作る業務システム、成功の秘訣はSIerとの「二人三脚」導入事例(1/2 ページ)

企業がシステム開発を外部に委託する際、しばしば問題となるのがベンダーとのコミュニケーションだ。しかし、業務とシステムの両方に詳しい人物がかかわっていれば、この問題も難しくなくなる。社員がFileMakerを通じて“通訳”し、ベンダーに伝えた結果、使い勝手の良いシステムを作り上げることのできた例を紹介しよう。

» 2010年02月22日 08時00分 公開
[岡田靖,ITmedia]

 大阪市天王寺区にある印刷会社、ダイワ光芸の創業は1957年。当初は写植を手掛けていたという。その後、製版を手掛けるようになり、10年ほど前には印刷工程にも進出するなど、徐々に後工程へと業務を拡大させていった。こうした経緯から、同社は印刷会社といっても、デザインなどのプリプレス分野にも強みを持っている。

デジタルへの転換を機にDBも勉強

 ダイワ光芸 営業部 西岡健二 課長 ダイワ光芸 営業部 西岡健二 課長

 印刷業界は、過去十数年間にワークフローが大きく変わった業界だ。例えば制作工程は写植からDTPへ、製版も写真によるアナログ製版からデジタル製版へと転換するなど、業務内容は激変している。

 このアナログからデジタルへの大転換に際し、ダイワ光芸の代表取締役、小笠原秀樹氏は、デジタル技術を積極的に取り入れることにした。DTPはもちろんのこと、データベースも、である。1995年のことだったという。

 「“いっちょかみ”しないと気が済まない性格なので、DTPでMacを扱うのだから、この機会にデータベースも勉強しておこうと考えたのです。Mac上で動作することが条件ですから、FileMakerを選びました。触ってみれば、とても理解しやすい。“サルでも分かる”データベースだなと思いましたね。DBパブリッシング業務につなげるもくろみもありました」(小笠原氏)

 そして、社員を本格的に勉強させることにした。FileMakerの教育をしてくれる企業を探し、条件に適合したバルーンヘルプへと、当時は制作担当だった営業部の西岡健二 課長を通わせた。

 さらに小笠原氏は、社内で役に立つDBを開発するよう西岡氏に指示したという。

 「ただ勉強しただけではもったいない。何度も通わせた分の、“元”を取りたいですよね。それに、自分たちで使ってみなければ分からないところもあるだろう、と考えたのです」(小笠原氏)

 この指示を受けて、西岡氏は1996年に進行管理DBを作り上げたという。

 「それまで、進行はホワイトボードで管理していました。それが不便だったので、FileMakerでリアルタイムに管理できるようにしたかったのです。これは一人で作ったのですが、このとき『FileMakerはすごい、何でもできる』と思いましたね。その後、DBパブリッシングという仕事への理解度も深まりました」(西岡氏)

社員の“通訳”でシステムを構築

 西岡氏の作った進行管理システムはダイワ光芸の社内で高く評価され、小笠原氏は、FileMakerをもっと業務効率化に役立てたいと考えるようになったという。

 「制作工程が完全デジタル化していく中で、工期は大幅に短縮されてきていました。以前なら2カ月かかっていたのが2週間、というケースも当たり前のようになっていたのです。当社としても、その時間の感覚に追いついていかねばなりません。仕事にPCを使うのも当たり前になってきたし、デジタルな考え方に社内の人材も慣れさせていく必要があると考えたのです」(小笠原氏)

 そこで1997年、本格的な業務システムの開発をバルーンヘルプに依頼した。入稿から納品まで、ダイワ光芸の業務を一貫して管理する基幹のシステムだ。

 「西岡でも作ることはできたかもしれませんが、彼には本業の制作に当たらせた方がいい。なので、本格的なシステムはプロに任せ、西岡には、業務をシステムに“通訳”してもらおうと考えました」(小笠原氏)

 こうして、同社初の本格的な業務システムが作られた。FileMakerはクライアント/サーバ構成で利用され、ワークフローのデジタル化に伴って全社員がPCを操作できるようになっていたこともあって、全員がこのシステムを使って仕事を進めるようになったという。

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