最近、全国の自治体で増えるRPAの実証実験。そんな中、2018年にいち早く実証実験に成功し、2019年4月から20業務へのRPA導入を決めたのが茨城県だ。「RPAについてほとんど知らなかった」という状態からわずか4カ月で実証実験が決まったというスピーディーな展開の裏には、一体何があったのか。
最近、全国の自治体でRPA(Robotic Process Automation)の実証実験が増えている。外部からは「定時で帰れる仕事」と思われがちな自治体の業務だが、実際はいまだに紙ベースで行われることが多い申請の処理作業などが山積みで、職員が多忙を極めるケースもあるという。また、「市民の税金で業務を回していることもあり、簡単にはツール導入の予算を取れない」と頭を抱える自治体もあるようだ。
そんな中、2019年にいち早く大規模なRPA導入を決めた自治体がある。北関東に位置し、約270万人の人口を抱える茨城県だ。正職員だけで約4500人が働く茨城県庁では、2018年、導入予算が“ゼロ”の状態からRPAで業務の一部を自動化する実証実験に成功。2019年度の予算では、早くもRPAやAIなどのツール導入に約6700万円の予算を割り当て、庁内の20業務を自動化することを決めた。
現在は、同じようにRPA導入を目指す自治体からの問い合わせも受けているという同県。いち地方自治体としては迅速かつ大胆ともいえるIT投資を、どうやって実現したのか。
(後編はこちら→ITは“お役所事情”を変えられるのか? RPA導入で茨城県庁が明かす「今の課題」と「必要な変化」)
その音頭を取るのが、2017年8月に初当選し、同年9月に就任した茨城県の大井川和彦知事だ。大井川知事は、東京大学卒業後、当時の通商産業省(現・経済産業省)で官僚を務め、日本マイクロソフトやシスコシステムズの執行役員をはじめ、ドワンゴの取締役も務めた経歴を持つ。2019年度の予算が決まる前の2019年1月30日に都内で行われたイベントで、知事はこう語っていた。
「今までは(新しくツールを導入したくても)『予算がないから』と1年待っていた。そうではなく、必要なことにはすぐ取り組みたいと考えています」(大井川知事)
もともと、茨城県がRPA実証実験に挑むことになったきっかけは、人のつながりだった。2018年4月、知事の大学時代の友人であり、フランスのコンサルティング企業、キャップジェミニの日本法人社長を務める殿村真一氏と、RPAを手掛ける米国企業、UiPath(ユーアイパス)の日本法人社長である長谷川康一氏が一緒に知事を訪ね、RPAを紹介。知事は「他の組織で成果を挙げているのなら、ぜひ茨城県でも活用できないか」と興味を持ち、県庁での導入検討を決めたという。
「今まで人がやっていた仕事を取られる」とネガティブに捉えられることもあるRPAだが、知事が素早く検討に乗り出した背景には、県庁が抱えていた“事情”があった。
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