コロナ禍・店舗撤退から一転し好機へ ワタミの“筋肉質”なDX改革とは【特集】2021年、DXのビジョンは

外食産業で唯一「DX注目企業2020」に選出されたワタミは、COVID-19により外食産業が大きな打撃を受ける中、ファストフード業態やテイクアウト業態を強化するなど、常に新たな取り組みを進めることで注目されてきた。DXを推進して変化に適応していく同社の今後の展望を聞いた。

» 2021年01月29日 07時00分 公開
[齋藤公二ITmedia]

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 「ワタミ」と「デジタル」と聞くとなじみが薄いかもしれないが、ワタミグループ(以下、ワタミ)は、外食産業で唯一「DX注目企業2020」に選出された企業だ。再生可能エネルギーを利用した循環型6次産業モデル「ワタミモデル」の構築や、再成長のための基礎作りなどのビジョンやビジネスモデルを掲げて、その戦略に向けたデジタル技術の活用を評価された。

 同グループのデジタルトランスフォーメーション(DX)推進の立役者である、ワタミ 執行役員CIO IT戦略本部長 若林 繁氏が語る変化に適応するための施策とは。

コロナ禍による異常時こそ、ITの力を発揮させる千載一遇のチャンス

──まずは今回「DX注目企業2020」に選出される理由にもなったワタミモデルについて教えてください。

若林 繁氏(以下、若林氏): ワタミは、外食や宅食だけでなく、ワタミファームや契約農家による生産や、外食店舗および宅食向けの食材の仕入れ、製造にも取り組む「食のインフラ企業」です。第1次産業や第2次産業、第3次産業まで一貫して手掛けていることが特徴で、それぞれの事業における環境負荷を下げるための省エネルギーや食品リサイクル、風力発電などの再生可能エネルギーの開発にも取り組んでいます。これらの再生可能エネルギーを利用した循環型6次産業が「ワタミモデル」です。ワタミモデルは、SDGs(持続可能な開発目標)達成に向けた企業戦略でもあり、この実現に欠かせないのがデジタルの取り組みだと考えています。

ワタミが企業戦略として掲げるワタミモデル(出典:ワタミ)

──新型コロナウイルス感染症(COVID-19)により外食産業は大きな打撃を受けています。現在の状況を教えてください。

ワタミ 執行役員CIO IT戦略本部長 若林 繁氏

若林氏: 先が見えない中で不安定な経営を強いられています。緊急事態宣言が発令された2020年4月は、全国400店舗を休業し、店舗の撤退も進めたことなどから、外食事業の売上高は前期比53%減(2021年3月期上期)でした。一方で、同年5月に「かみむら牧場」1号店のオープンに続き、同年6月に「からあげの天才」の出店を強化、同年10月に「焼き肉の和民」をオープンするなど、変化に適応するための取り組みも積極的に進めてきました。出店を強化した結果、同年3月末には8店舗だったからあげの天才は、2021年1月末には79店舗に拡大しました。外食事業におけるデリバリーやテイクアウトの強化、宅食事業やECの強化にも取り組んでいます。

──苦しい状況が続く中、ITは経営にどのように貢献できると考えていますか。

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