内製化を進めて辿り着いた「フルリモートシステム開発」KDDI若手エンジニアチームの変革モチベーション維持の秘訣は「内製化」と「チャレンジ」(1/2 ページ)

自社の優秀なエンジニアが「調整役」に徹していいのか? ――KDDIは、パートナー企業と対等に開発を進める組織になるべく内製化を進めていた。その経験が、2020年に世界を襲った「コロナ禍」において、世界中のITエンジニアが直面した「テレワークによるコミュニケーションの低下」という課題においても生きたという。同社はどのように組織を変えていったのか。

» 2020年09月04日 11時20分 公開
[指田昌夫ITmedia]

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 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)をきっかけに、ビジネスの在り方が大きく変わり、世界中の企業が生き残りを懸けてビジネスの再構築を急いでいる。そのような中、KDDIは「テレワークにおける開発チームの稼働」と「システム開発の内製化」「テレワーク環境での人材育成」に取り組み、ベンダーに完全外注していた頃の3分の1のコストで社内システムの開発に成功した。テレワークにおける課題に「コミュニケーションの低下」や「モチベーションの維持」が挙げられる昨今、同社は何を狙い、どのようにチームのメンバーシップを強化していったのか。

外部依存の開発体制、技術力低下に危機感

 KDDIのプラットフォーム技術部は、大きく分けて2つのクラウドを開発している。1つは法人向けのクラウドインフラストラクチャである「KDDI クラウドプラットフォームサービス」(KCPS)で、ストレージサービスなどいわゆるIaaSを企業に提供するもの。もう1つはKDDI社内用、事業用システムを収容するためのプライベートクラウド開発だ。KDDIが内製化にかじを切った「キャリアグレードシステム」は後者にあたる。

 KDDIは、自社が開発するサービス、システムを、数段階のグレード(品質基準)に分けて仕様を管理する。

 最も厳しい品質基準では障害から1時間以内に復旧しなければならず、輻輳(ふくそう)が起きてもサービスが遅延しない対策を施す必要がある。通信キャリアは総務省の監督の下、安定したサービス提供が求められるため、障害にはシビアな対応が必須だ。

前島直斗氏 KDDIの前島直斗氏

 外部パートナーとシステムを開発する場合はガイドラインを提示して発注していた。完成したシステムを検収する際は、同ガイドラインに沿っているかをチェックする。ガイドラインには事故が発生した場合の復旧手段に関する指示があり、システムの完成後には実際の障害を想定した訓練を実施する。こうした厳しい仕様と運用の対策をもって、KDDIは自社のサービス品質を管理している。

 5、6年ほど前まで、プラットフォーム技術部は外部パートナー企業と共同でシステム開発をしていた。入社9年目のエンジニア前島直斗氏は、当時を振り返って「外部開発中心の時代は、KDDIのエンジニアの仕事は要件定義など資料作成の仕事が多く、手を動かして開発する機会はほとんどなかった」と語る。厳しい要件をパートナー企業と共に作るため、仕様の策定や確認作業に工数がかかっていた。また、パートナー企業に発注するため、厳しい品質管理が必要であるにもかかわらず、キャリア自身で品質を改善できない事態に陥っていたという。

中村 雅氏 KDDIの中村 雅氏

 開発グループのリーダーを務める中村 雅氏は、当時を振り返って「自社に優秀なエンジニアを抱えながら、外部パートナーとの調整業務しかノウハウを持たない人材が増えつつあった。このままではKDDIとして技術力が向上しないという危機感があった」と語る。

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