“予算ゼロ”からの逆転 茨城県庁が「RPAって何?」から4カ月で実証に踏み切った理由茨城県、RPA導入への道【前編】(2/3 ページ)

» 2019年03月25日 11時00分 公開
[高木理紗ITmedia]

人員カット、増えた業務で現場は残業……茨城県がRPAの実証実験に乗り出した切実な理由

photo 茨城県庁に2018年4月から新設された「ICT戦略チーム」。4人の職員が勤務する

 「もともと県庁では、財政が厳しかったこともあり、人員削減を進めていました。その結果、良くいえば執行体制はスリムになったのですが、一方で時間外労働も増えてしまいました。年々行政の業務が多様化、高度化する一方で、マンパワー不足が課題になっていたのです」と語るのは、中心になって茨城県庁のRPA実証実験を進めた「ICT戦略チーム」のグループリーダーを務める戸澤雅彦氏だ。

 ICT戦略チームは、「これまでの自治体行政では“リスクを避けるため、なるべく前例を踏襲し、コストをかけたくない分野”だったICTを、戦略的に自治体の行政に取り入れていきたい」と語る大井川知事の肝いりで、2018年4月に発足した。

 同チームで活躍する4人は、エンジニアというわけではなく、今まで「広報」「観光」「情報政策」といった現場に関わってきた職員たちだ。戸澤氏の場合、チームに加わる以前にシステムを動かしたことはあったものの、「入庁したての時代に、COBOL言語をメインフレームに打ち込んでいたくらい」だったという。

photo 茨城県庁でICT戦略チームのグループリーダーを務める戸澤雅彦氏

 県庁には既に、庁内で動くシステムを運用する情報システム課がある。一方、ICT戦略チームは、既存の情報システム運用などの事情にとらわれずにユーザーの目線で有効なツールを見極め、職員やベンダーと必要な調整を繰り返しながら、迅速に導入効果を上げることを目的にしているという。そんなチームは現在、電子決裁の推進やAI導入といった案件も担当していが、発足とほぼ同時に降ってきたミッションの一つが「RPAの導入検討」だった。

 同チームのリーダーである菊池睦弥氏は、「『データを紙から手入力で打つ』『調査票をコピペして集計する』といった、いわゆる“やればいいだけの仕事”を省力化、効率化したいというニーズは(庁内に)相当あったのではないでしょうか」と話す。

 「前提知識がなかったので、最初は『RPAって何?』という感じでした。よくよく調べてみると、定型業務をソフトウェアロボットで自動化し、銀行や大企業などで時短効果を上げている話も聞きました。そこで、効果があるのを前提に、県庁業務でどう使えるかを検討し始めました」(菊池氏)

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