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» 2010年07月14日 08時30分 UPDATE

楽天経済圏を支えるアクセス解析の全貌(後編) (1/4)

アクセス解析を浸透させるには、専門部署がそれぞれの事業で直面するアクセス解析の問題を解決し、無駄をなくしていくことが重要だ。40近くのオンライン事業で構成される「楽天経済圏」におけるアクセス解析の文化をどう浸透させていったかを振り返る。

[清水誠(楽天),ITmedia]

 40近くのオンライン事業を手掛ける楽天は、社内にアクセス解析の専任チームを設置し、1300人超のスタッフがアクセス解析の結果を用いてビジネスの改善に取り組んでいる。

 アクセス解析を企業に浸透させるためには、それを専門とする部門が各事業の試行錯誤を肩代わりし、無駄をそぎ落とすことが重要だ。現場がアクセス解析のメリットを享受できる状態にしてから、本来の役割分担や手続きの体制を整備していくことが効果的である。

 楽天が運営するオンライン事業のエコシステム「楽天経済圏」において、その成長の鍵を握るアクセス解析をどのように浸透させていったか――。本稿ではその詳細を振り返っていく(楽天経済圏を支えるアクセス解析の全貌(前編))。

楽天経済圏の概要 楽天経済圏の概要(出典:楽天)

最速の立ち上げを目指して

 チーム名の次にリーダーとしてこだわったのは、世界レベルの解析力を持つチームを作ることだった。ネットビジネスにおいて、アクセス解析はその成否を分ける重要な要素だ。英語を公用語化するなど世界企業を目指す楽天では、アクセス解析を中心としたWeb解析力も世界レベルに高めていく必要がある。

 そのためには、最高のスピードで楽天のオンライン事業の全サイトにアクセス解析を導入する必要があった。データをため込み、解析できる状態にすることで、初めて全従業員がアクセス解析を活用する「スタート地点」に立つことができる。時間は1秒たりとも無駄にはできなかった。

 そこで、アクセス解析の導入速度を落とすボトルネックを次のように想定し、1つずつ解消するように努めた。

  • 社内外との事務手続き
  • 各担当の初期学習
  • 設計や実装のリードタイムと効率

最初は手続き不要に

 最初は、事業部や担当から口頭やインスタントメッセンジャーで依頼を受けただけでも、即アクセス解析の導入に着手するようにしていた。アクセス解析の導入には、事業部側の理解と協力が必須になる。事業の規模や利益率、成長率などで導入の順番を決めると、かえってスピード感が失われてしまう。

 ノウハウをためながら社内でアクセス解析の導入を推進するためには、最初はしがらみが少なく小回りが効く事業から着手した。推進チームが選んだ事業に導入を提案することもあったが、積極的に導入支援を要請してくる事業はモチベーションが高く、準備も万全である。こうした機会をつかみ、全力で要望に応えることを優先した。

 また、各事業におけるアクセス解析の導入コストは、著者が所属する「アクセス解析・最適化推進チーム(Web Analytics & Optimization CoE)」が年間分を負担するようにしている。アクセス解析の浸透には、事業部がコストの負担をしないようにする体制作りが不可欠だからだ。

 アクセス解析を実践すると、オプション機能の利用や難易度の高い課題が出てくる。この場合には、アクセス解析ツールベンダーのコンサルティングサービスが不可欠になる。楽天では、サービスを発注する年間予算があらかじめ確保されている。そしてアクセス解析・最適化推進チームが発注を肩代わりすることで、各事業は手続きに時間を取られずに、新たな解析に取り組める。

 ベンダーのスタッフには、楽天社内に常駐してもらっている。専門家のスタッフを外部から招き入れることで、課題の把握やアクセス解析に必要な調整がリアルタイムにできる。アクセス解析に必要な社内体制の整備は、意思決定からアクションまでの時間を大きく短縮した。

初期導入はすべて代行

 アクセス解析の導入に伴い、各事業の解析担当者は新しい知識やスキルを常時身に付けることが求められる。だが、ツールの設計や実装に必要となる詳細な知識・ノウハウは、実は初期導入時しか必要にならない。運用開始後にも役立つのは、一部のノウハウに限られる。全解析担当者にあらゆるアクセス解析の項目に精通してもらおうとすると、かえって解析全体の効率が落ちてしまう。

 そこでアクセス解析・最適化推進チームが、ツールの設計や実装などを代行することにした。アクセス解析の導入時に必要な最低限の項目を集約し、複数事業の設計や実装、レポート作成などを肩代わりした。これにより、推進チームにアクセス解析の知識と経験が蓄えられていき、設計や実装の手順、成果物には共通のパターンが見えてくる。最終的にはこのパターンを部品化し、あらゆる事業で使い回せるようにカスタマイズをしていった。

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