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» 2010年07月29日 08時00分 UPDATE

実践! 仮想化――ビジネスに効く、真の仮想化とは:企業の仮想化最前線 普及度合いと効果は? 現場の悩みは? (1/3)

物理サーバ台数の削減など、ITコストの抑制に効果があるとして注目を集めてきた仮想化技術。しかし実際にはどのくらい普及し、どの程度の効果があがっているのだろうか。仮想化市場の現状に精通している日本仮想化技術株式会社の宮原徹氏と、日立製作所の稲場淳二氏が仮想化市場の最前線について語り合った。

[構成:尾崎和行,ITmedia]

(このコンテンツは日立製作所「Open Middleware Report vol.51」からの転載記事です)

 キーワードとしての仮想化はユーザー企業の間にも浸透してきており、コスト削減や業務の効率化への効果が認知されてきた。今回の対談では、まず仮想化導入の現状について、そしてすでに仮想化を活用しているユーザーの課題などを語ってもらった。

浸透と未着手――二極化が進む仮想化の現状

日本仮想化技術 代表取締役社長兼CEO 宮原 徹氏 日本仮想化技術 代表取締役社長兼CEO 宮原 徹氏

日本仮想化技術 代表取締役社長兼CEO 宮原 徹氏(以下、宮原氏) わたしはこれまで約5年間、仮想化というコンピューティングの分野の動向を研究してきました。仮想化という考え方が登場した初期、ユーザーの間では開発環境やテスト環境に使うものとして知られてきましたが、2年ほど前から業務系に導入するという機運が高まってきました。今年度に入ってからの印象では、仮想化を導入すること自体にはもう疑問はなく、真剣に検討しているという段階に入ってきたように思います。

 多くの企業で仮想化を採用する方向に向かっていますが、同時にユーザーの二極化が進んでいるように感じます。先進的に導入して第1フェーズを終了しているユーザー企業ではコンソリデーションによって物理サーバが削減できている一方、まだ仮想化に触れてもいないユーザーも少なくありません。つまり、温度差があるのです。稲場さんは現場や顧客を回っていて、どういう印象をお持ちですか?

日立製作所 ソフトウェア事業部クラウド・コンピューティング推進室長 稲場 淳二氏(以下、稲場氏) わたしどものユーザーでは仮想化に自ら関心を持って取り組まれていることが多く、何らかの形ですでに導入が行われていますが、一部の先進的な企業を除けば、まだ部門別での導入にとどまっているという印象を持っています。既存のサーバを仮想化して、仮想マシンを数台準備すれば開発環境はすぐに準備できますし、ちょっとした業務ならすぐに稼働させることができます。ですが企業全体を統括する情報システムでの利用は、ようやくポリシーの整備が始まったといったところです。

宮原氏 全社導入の普及はどのようなペースで進んでいくのでしょうか。

稲場氏 この動きは昨年から来年までの3年間で起こる変化だと考えています。企業のデータセンタの刷新や分散していた情報システム部門を統合するといった動きが具体化していますので、このタイミングに合わせて企業全体、グループ全体として仮想化を利用したいという相談が増えています。宮原さんがおっしゃる二極分化はわれわれも感じています。とはいえ、先日もある製造業の大手企業に伺った際、情報システム部門の方が「うちは当面仮想化技術を使わない」とおっしゃったのです。それはなぜかというと、「きちんとサイジングしているし、変動的な業務もあまりないから仮想化する必要がない」というのが理由です。そう判断される企業があるのも事実ですので、単純に二極化と言えない面もあるかと思います。ただ、サーバやストレージ、それにネットワークの性能、コストパフォーマンスが、一層急激に向上することで仮想化活用の検討が早まるのではないかと考えています。

宮原氏 確かに予算や規模、運用管理の状況によってはそうかもしれませんね。仮想化の有効利用を積極的に模索しているユーザーと、関心の薄いユーザーに分かれつつあるというのが現在の市場の全体像ですね。

仮想化導入の背景としての「統合基盤」構築

宮原氏 最近、弊社へのお問い合わせでも増えているキーワードが「統合基盤」です。部門単位あるいは案件単位といった場面で使っている仮想化ソフトウェアを全社展開する目的で、運用や保守・サポートまでを含めて整備するために「統合基盤」というキーワードを用いるようです。

 小規模な内容であれば現場の担当者レベルで実現できることも、全社展開する場合は「仮想化不要論」を唱える上層部を納得させなくてはいけません。どのような角度から突っ込まれてもコスト削減や運用効率アップといったことを説明するために「統合基盤を構築します」という表現が有効なようです。

 官公庁や自治体では特にこの傾向が強いです。今まで市区町村でサイロ式にサーバを立ててきましたが、調達なので個別に予算化していては無駄が多い。そこで庁内基盤確立のために仮想化を導入したいという問い合わせが増えました。

 現場には、仮想化を上手く使っていこう、というコンセンサスができあがりつつありますが、具体的な方策はこれから、という状態だと思います。良い事例が出てくると皆さん納得する部分がありますから。

稲場氏 同様に現状大手企業の内部には「企業グループ内のIT調達・SI会社」の例が挙げられます。こうした会社では、昨今の急激な景気悪化を受け、グループ企業からの製品調達や個別SI の受注が激減してしまった。そこで自分たちがサービスベンダーになるしかない、と判断して動き出している企業も見受けられます。そうなるとコストを抑えつつ、グループ内外の企業が欲しがる付加価値の高いサービスを提供していく必要があります。そのためにコストを下げつつサービスを構築・提供する方法として、仮想化に注目しています。従来であれば他部門からのSIの依頼に応えるだけでよかったこれらの部署も、今はインフラから運用、業務まで考えなければいけない。既存の縦割りの業務ではコスト的にも耐えられない。そのために仮想化技術で統合基盤を構築していこうというニーズがあるのです。

宮原氏 弊社に問い合わせが来るようになった背景には、「仮想化を使えばそうした統合基盤ができるらしい」と耳にするユーザーが増えた、というのがあったのですね。

稲場氏 今年の傾向としては、そうして検討に入ったユーザーが次のステップに進んで「なるほど、統合基盤は奥が深い、しかし立ち止まってもいられない。まずはサービスを始めてみよう」と小さくスタートしてみるケースが増加しているようです。

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