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» 2010年09月07日 08時00分 UPDATE

顧客とともにクラウド時代のビジネスモデル構築を図る――NEC 富山執行役員常務(後編)

NECが事業をクラウドにシフトする背景には、「モノの提供にとどまらず、顧客のパートナーとしてビジネスモデル構築を支援する」狙いがあるという。

[石森将文,ITmedia]

<前編はこちら>

 SIを中心とした事業構造から、サービスを提供する構造へのシフトを宣言するNEC 取締役 執行役員常務 富山卓二氏。話題はApple、Amazonの成功に学ぶ「モノの提供から、コトを通じた価値の創出」にまで及ぶ――。


NEC 取締役 執行役員常務 富山卓二氏 NEC 取締役 執行役員常務 富山卓二氏

ITmedia ITの提供モデルがクラウド化するなら、ユーザー企業における組織や業務プロセスもクラウド時代に即して変わる必要があるのでは。システムだけ入れ替えても、人事や事務手続きがサイロ化したままでは、クラウドの効果を最大化するのは難しいだろう。

富山 だから“NECが作ったSaaSを使ってくれ”と売り込むだけでは駄目で、ユーザーの業務プロセスを最適化する必要があります。そこで我々の事業では、コンサルテーションに注力します。我々自身が、ユーザーとしてNECのクラウドサービスを使い、そこで培った経営システムを、コンサルを通じてユーザー企業に横展開するのです。

 そこに、我々のコンセプトを「クラウド“指向”サービスプラットフォームソリューション」とした狙いがあります。“機能があるから使ってください”とか“どこかから買ってきたアプリケーションをサービス提供します”ということではなく、まずNEC自身がユーザーとして試行錯誤します。そこで生まれたベストプラクティスは、ユーザー企業にとっても価値のあるものになるはずです。

 NECはメーカーです。ですから、顧客が製造業なら、そのまま我々のノウハウを使える可能性があります。それ以外の場合は、コンサルから入ります。NECが業務プロセスを変革した方法論を共有するのですが、実際、ユーザー企業の評判はとても良く、(コンサルから入る)アプローチにも共感を得られています。

ITmedia そうなると、ユーザー企業においてNECとのフロントを担うのは、必ずしも情報システム部門に限られず、経営企画などの部署が増えるのでは。

富山 その通りです。最終的にはスペックの見比べも必要になりますが、その前段階として、経営の視点を持つ部署が判断する必要があります。そこが、従来のSIとの大きな違いです。

 ここは、(AmazonやGoogleなど)北米発のクラウドサービスと差別化できるところだと考えています。あちらはどうしても、開発系の部署が判断して使い始めることが多い。しかしNECのクラウドは“開発環境の効率化”というカテゴリにフォーカスするものではありません。

ITmedia 上述のアプローチは、海外市場に展開する上でも統一したものなのか。

富山 当初は、国内と同様に海外展開したいと考えました。ですが、一口に“サービス”と言っても、国によりローカリティーがあり、事情も異なります。国内向けのノウハウ蓄積はNECグループ自身で可能ですが、海外向けのそれを網羅するのは、自力では難しい。各国の事情に通じたパートナーと組むのが得策です。

 例えば、中国市場向けに医療パッケージを開発したのですが、日本のノウハウだけでなく、中国のユーザー企業や現地SIerの協力がなければ実現し得なかったでしょう。また中国の場合、各省で事情が異なるなど、SaaS事業を本格展開するのなら、細かな調整が必要になるでしょうね。

顧客のビジネスモデル構築を対等な立場から支援

富山 ここまで、サーバサイドの視点からクラウドを語ってきましたが、わたしは今後、ユーザー環境においてセットトップボックス的なクラウド端末が大きな地位を占めると考えています。従来は“ユビキタス端末”と呼んでいたようなデバイスが、クラウドを担う端末に変わってきています。ただしこれは、デバイスの良し悪しといった問題ではありません。サービスを、いつでもどこでも誰にでも提供するという、ユビキタスの思想に基づくものです。

 例えばiPodの成功も、デバイスと、ミュージックストアと、コンテンツプロバイダーを結びつけ、強固なサービスのエコサイクルを構築できたことに、その要因があります。Appleが作り上げた価値は、このようなビジネスモデルにこそあるのです。Amazonにしても、電子出版というビジネスモデルの構築に意味があるのであって、Kindleというデバイスは、ビジネスモデルを構成する一要素にすぎません。

 我々の顧客の意識も、変わりつつあると実感しています。実際、数十台のiOS端末を実験的に配布し、「どのような使い方(サービス)が実現可能か、検証し、報告せよ」といった取り組みを進めている企業が多い。まさに“どのようなサービスが提供できるか?”に目が向いており、デバイス自体は何でもいいわけです。どのようにしてデバイスにサービスの付加価値を付け、収益を上げるか――このような視点の話題が多くなりました。

ITmedia モノではなくてコト(ユーザエクスペリエンス)を売り、それがユーザーに支持されることで、ビジネスモデルがスケールするということか。

富山 顧客のビジネスモデル構築をいかに支援していくか――NECはその部分を、ユーザー企業の対等なパートナーとして、提言できなければなりません。PCやサーバ、ソフトウェアといった“モノ”を売るだけではなく、ユーザー企業とともに、ビジネスモデルを考えたいのです。そのビジネスモデルのインフラとして、我々のクラウド、SaaSが役に立つのであれば、手段としてぜひ使ってほしいと考えています。

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