受験生の重要情報を保護するウイルス対策とバックアップ――日能研の事例

日能研とシマンテックは、中学受験生の家庭と塾の間でやりとりされる情報を保護する日能研での取り組みを、中小企業の先進的事例として紹介している。

[國谷武史，ITmedia]

　中学受験塾を運営する日能研と情報システム子会社のエヌ・ティ・エス、シマンテックは、ウイルス対策とバックアップ／リカバリを題材にした日能研グループでの情報保護の取り組みを紹介した。中小企業で注目される先進的な事例になるという。

　日能研は1953年に設立し、現在は全国135カ所で4万人の生徒が通う中学受験専門の塾（教室）を運営する。組織は本部と地域別の5つのグループに分かれ、従業員数は約950人。このほかに約2500人の非常勤講師が在籍している。約1500台のクライアントPCが全国の教室と、模擬試験の採点やオンラインサービスを運用する2カ所のデータセンターなどに配備されている。

　日能研 情報企画ディレクター 原和彦氏によると、同社が生徒向けに提供するITサービスの中心となるのが採点業務システム「DI 学習支援システム」と、生徒の家庭に提供するWeb情報サービス「MY NICHINOKEN」の2つである。生徒が積極的に学習に取り組める環境を、DI 学習支援システムとMY NICHINOKENの連携によって実現しているという。

　日能研は、定期的に開催する模擬試験の答案用紙を教室に設置したスキャナーで読み取り、そのイメージデータをデータセンターに一元化している。データセンターでは、答案用紙のイメージデータを設問ごとに細分化し、各設問の担当者が採点業務を行う。採点の結果は、MY NICHINOKENで各生徒に知らせる仕組みだ。

　答案用紙は生徒が保管しており、採点を待つ間に見直しなど自主的な学習に役立てているという。MY NICHINOKENで採点結果が通知されると、自分が回答した内容に加え、模範解答やほかの生徒の回答内容（匿名）なども見ることができる。

　DI 学習支援システムとMY NICHINOKENは、生徒の成績や試験の結果といったセンシティブなデータを取り扱っているため、同社はデータセンターとシステムにアクセス可能なクライアントPCでの情報保護をセキュリティ上の重要課題に位置付けている。

　対策として、クライアントPCには「Symantec Endpoint Protection」「Symantec AntiVirus Corporate Edition」を導入した。データセンターのデータベースサーバには、バックアップ／リカバリ製品の「Symantec Backup Exec」「Symantec Backup Exec System Recovery」を導入している。バックアップ作業では、バックアップサーバに1日に1回程度情報を保存しており、さらにLTO（磁気テープ）にも保存する。

　クライアントPCやデータセンターのシステム管理を担当するエヌ・ティ・エス システムサービス課主任の古川真也氏は、ウイルス対策とバックアップ／リカバリをシマンテック製品に統一したメリットに、セキュリティ対策の強化や管理業務の効率化を挙げる。

　セキュリティ対策では特に不正プログラムの侵入を防止する機能に満足しているといい、全国の教室でウイルスに感染するなどの被害はほとんどないという。業務面では、従来は個々のPCやサーバの管理に掛かりきりになっていたが、現在ではDI 学習支援システムとMY NICHINOKENの開発、ヘルプデスクといったほかの業務を含めて、効率的に仕事ができるようになった。バックアップ／リカバリ作業の場合、従来は作業に4時間程度を費やしていたが、現在では長くても20分程度で済むという。

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　シマンテック 常務執行役員 内田和弘氏は、中小企業におけるIT課題に情報漏えいやサイバー攻撃への対策があると指摘する。同社は今年5月、従業員500人未満の世界の企業2152社を対象にアンケートを実施した。その結果、セキュリティ対策と事業継続に関心を寄せていることが分かったという。

　同社はこれを受けて、セキュリティ製品やバックアップ／リカバリの統合パッケージ製品の開発や、全国をカバーするパートナー向けのプログラムの整備などを進めた。エヌ・ティ・エスは、シマンテックのパートナープログラムに参加する1社であり、内田氏は「日能研での取り組みがシマンテックやパートナーが提供するソリューションの先進的な事例になるだろう」と話し、中小企業における情報保護強化の必要性を強調している。

変更履歴……初出時に「MY NICHINOUKEN」とありましたが、正しくは「MY NICHINOKEN」です。お詫びして訂正します。

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