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» 2011年05月02日 11時05分 UPDATE

Weekly Memo:続・Oracleへの反撃に向けたHPの秘策

日本HPが先週、かねて予告していた新たなデータベース戦略を発表した。Oracleデータベースを強く意識したその内容とHPの思惑とは――。

[松岡功,ITmedia]

日本HPがデータベース戦略を発表

 「Oracleへの反撃に向けたHPの秘策」と題した2011年1月11日掲載の本コラムで、日本ヒューレット・パッカード(日本HP)が「データベースには選択肢が少ない」として、同市場に向けた新戦略を近く発表する予定だと紹介した。今回はまさにその続編となる。

 日本HPが4月26日に発表した新戦略は、データベースの「ロックリリース」(ベンダーロックインからの解放)を支援するサービス展開と、データベース製品ベンダーとともに発足させた「データベース改革推進アライアンス」の推進である。

 新サービスは、「HPデータベースライセンス ダイエットアセスメント」「HP SQL標準化アセスメント」「HPデータベースポートフォリオアセスメント」「HPデータベースマイグレーション」の4つ。既存データベースのサポート期間を利用し、2〜5年をかけて他のデータベースへも移行しやすい環境作りを進めるという。

 HPデータベースライセンス ダイエットアセスメントは、既存データベースを継続利用する場合にライセンスコストを削減するための提案を行うサービスである。また、HP SQL標準化アセスメントは、各データベースの独自言語部分を標準言語であるANSI SQLへ書き換えることにより、データベースのロックリリースを実現するサービスである。現在利用中のSQL言語を多くのデータベース製品で共通利用できる標準SQL言語に書き換え、将来、ほかのデータベースへの乗り換えコストやリスクを低減することができるとしている。

 HPデータベースポートフォリオアセスメントとHPデータベースマイグレーションは、既存データベースからの乗り換えを行う場合に、最適なデータベースの選択、乗り換え作業工程やコストの見積アセスメント、実際のマイグレーションを行うサービスである。

 日本HPではこうしたサービス展開と合わせ、データベース製品ベンダーとともにデータベース改革推進アライアンスを発足。エンタープライズDB(適応製品はPostgres Plus Advanced Server)、日立製作所(同HiRDB)、日本マイクロソフト(同Microsoft SQL Server)、SAPジャパン(同SAP HANA)、サイベース(同Sybase Adaptive Server Enterprise)の5社が、アライアンスパートナーとして参画した。適応製品としてはこれに日本HPの「HP NonStop SQL」が加わった格好となる。

パートナー5社と“Oracle包囲網”を形成

 日本HP エンタープライズサーバー・ストレージ・ネットワーク事業統括の杉原博茂執行役員は同日開いた記者会見で、日本HPがこうした新戦略に打って出た背景についてこう説明した。

 「データウェアハウスを利用したデータ分析・活用に注目が集まっている一方で、膨大なデータが日々蓄積され、データウェアハウスの情報基盤として欠かせないデータベースに関しては、旧来のシステム環境からの改革が進んでいないのが実状だ」

 そして、とくに「システムコストを削減するには、データベースソフトに支払うライセンス費用を見直すことが必須」と指摘。同社の試算で2005年と現在のシステムコスト構成を比べてみると、データベースソフトのライセンス費用がサーバのハードウェア価格の約11倍に達していることを、その根拠として挙げた。

 また、データベースを変更するには、業務アプリケーションの改修が必要になるなど、多大な工数とコストを要することも改革を進める阻害要因になっていると指摘した。

 続いて説明に立った日本HP エンタープライズサーバー・ストレージ・ネットワーク事業統括サーバーマーケティング統括本部 製品戦略室の山中伸吾室長は、Oracleが昨年来、Itaniumプロセッサ対応製品のライセンス係数を2倍に変更したり、Itaniumプロセッサ対応ソフトウェア開発の中止を発表したことについて、「多くのユーザーが困っている」と指摘。新戦略はこうしたユーザーの声に応えるために打ち出したものだと強調した。

 「あくまでユーザーの声に応えるのが主旨で、Oracleと戦うつもりはない」という山中室長だが、IntelとともにItanium環境を推進するHPにとってOracleの対応は許し難いよう。「一連のOracleの施策は、Itaniumとのシェア争いで劣勢になりつつあるOracleのSPARC製品にユーザーを引き込もうとするもので、こんな暴挙が許されるのか」と憤まんやるかたない様子だった。

 ただ、サーバ分野ならまだしも、データベース分野でHPだけが孤軍奮闘しても影響力は小さい。そこで仲間作りを図ったのが、データベース改革推進アライアンスである。参画したパートナー5社は、いずれも有力なデータベース製品ベンダーで、さながら“Oracle包囲網”といった様相だ。さらに「今回はアライアンスの第1弾。今後も主旨に賛同してもらえるパートナーを増やしていく」(杉原執行役員)構えだ。

データベース改革推進アライアンスに参画した企業の代表者。左からエンタープライズDBの藤田祐治氏、日立製作所の大田原実氏、日本HPの杉原博茂氏、日本マイクロソフトの梅田成二氏、SAPジャパンの小関高行氏、サイベースの早川典之氏 データベース改革推進アライアンスに参画した企業の代表者。左からエンタープライズDBの藤田祐治氏、日立製作所の大田原実氏、日本HPの杉原博茂氏、日本マイクロソフトの梅田成二氏、SAPジャパンの小関高行氏、サイベースの早川典之氏

 ちなみに前のコラムでは、「HPが将来をにらんで目論んでいるとみられるのは、データベースとして実績のあるSybaseを手に入れること。となると、昨年7月にSybaseを買収したSAPとどう組むかが焦点となる。場合によっては合併も視野に入れているのではないか」と書いた。

 合併の実現性はさておいて、今回のアライアンスにはSAPジャパンもサイベースも参画している。これからどんなアライアンス効果が出てくるのか、注目される。

 ただ、今回の日本HPの新戦略では、気になる点もある。戦略の方向性はグローバルなHPとしての方針に基づいているが、具体的な取り組みは各国・地域に委ねられているとのことで、今回のサービスやアライアンスはあくまで日本HP独自のものだ。

 同社によると、その理由は先述した市場背景において、世界の中でも日本が最もOracleの影響力が大きいためだという。ユーザーの声に応えたという日本HPの取り組みは大いに注目されるが、これが果たしてグローバルなHPの戦略展開へと広がっていくのか。米HPがどう動くかも注視しておきたい。

プロフィール 松岡功(まつおか・いさお)

松岡功

ITジャーナリストとしてビジネス誌やメディアサイトなどに執筆中。1957年生まれ、大阪府出身。電波新聞社、日刊工業新聞社、コンピュータ・ニュース社(現BCN)などを経てフリーに。2003年10月より3年間、『月刊アイティセレクト』(アイティメディア発行)編集長を務める。(有)松岡編集企画 代表。主な著書は『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。


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