【第1回】過去の成功からの脱却を目指すウォルマート未来のために働くIT部門となれ(1/2 ページ)

クラウドコンピューティング、ソーシャルメディアなどのキーワードが話題だ。これらの新しいテクノロジーによってビジネスを革新することに成功している企業がある一方で、変化にうまく対応できない企業も存在する。IT部門が時代の変化を先取りし、企業の未来を創る存在になるために、何をすべきなのだろうか。

» 2011年08月03日 08時00分 公開
[松元貴志,A.T. カーニー]

 世の中は常に変化し、それに歩調を合わせるかのように多くのテクノロジーが開発される。また、新しいテクノロジーの出現が、世の中を大きく変えることもあれば、日の目を見る前に消え去るものもある。例えばここ数年は、「クラウドコンピューティング」「ソーシャルメディア」といったキーワードが注目を集めているが、これらがさまざまな企業の戦略の柱にまで成長するかどうかは、今後の展開を見極める必要がある。

 IT部門が「未来のために働く」という魅力的なポジションを獲得するには、日々の小さな変化に翻弄されるのではなく、適切な時期に、その技術を選択するか否かという判断をし、時には思い切って舵を切ることも必要になる。安定したビジネスには枯れた技術を使うことが重要だが、過去に正しかった技術を使い続けるだけだと、ある日気付いたら世の中の流れに取り残されていた、ということにもなりかねない。

ウォルマートに見る変化との闘い

ITによる革新的な小売ビジネスの構築で有名なウォルマートのIT部門も、世の中の変化と闘ってきた歴史を持つ。

1980〜1990年代 −ITによる効率経営推進

−業界他社に先駆けてIT技術を駆使した効率的なサプライチェーンを作り上げた

−ITによる効率経営でEDLP(Every Day, Low Price)を実現

 → 当時は、世界共通のITでビジネスを効率化することに邁進


2000年代 −ネット対応でアマゾンの先行を許す

−急激に低所得層まで普及したネット販売で、アマゾンの後塵を拝す

−ソーシャルメディア上で従来メディアと同様のキャンペーンを行うなど、ソーシャルメディアへの対応につまずき、多くの批判コメントを浴びる

 → 変化への対応が遅れがちな硬直したIT部門に陥っていた可能性あり


2010年以降 −時代を追い越すための挑戦

−2010年1月 ネットビジネスに特化した新組織「Global.com(グローバル・ドットコム)」を立ち上げ

−食料品のネット販売では、買収した英国子会社アズダの事業モデルも活用

−外部人材を積極的に登用。米国で日本語、中国ができるITスタッフを雇用し、グローバル・ドットコムのノウハウを習得した後に各国に展開

−2011年4月 ソーシャルメディアの小売業への活用を研究する「@WalmartLabs(アット・ウォルマートラボ)」を立ち上げ

−ソーシャルメディア企業「コスミックス」を買収し、創業経営者を含む全スタッフを「@WalmartLabsに移管

 → 外部企業の買収をテコに、ネット対応に変化を起こし始めている

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