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» 2012年03月16日 08時00分 UPDATE

えっホント!? コンプライアンスの勘所を知る:うちの会社はスバラシイ? 内部通報“ゼロ件”の恐ろしさ (1/3)

社内の不正行為を受け付ける「内部通報制度」を導入している企業は少なくない。だが、その運用実態には多くの問題が存在している。

[萩原栄幸,ITmedia]

報告件数“ゼロ”を喜ぶ経営者

 数年前、ある中堅の製造業の「賀詞交歓会」で経営者と話したときのことである。この会社は、以前に従業員がWinnyによる情報漏えい事件を起こし、筆者のもとに大変慌てて相談を依頼してきたという経緯があった。情報セキュリティに関しては、その他大勢の中小企業経営者同様にあまり積極的ではなく、できれば何もしないで過ごしたいという感じであった。情報漏えい事件でも長期的な対応策は一切考慮せず、この事件をどうやって終息させるか――“パッチワーク”のような対応だけを望まれていた。

社長 先生のおかげで当時は本当に助かりました。その後、セキュリティ対策も先生が残していただいた資料を基に部長の指揮で動いているようです

筆者 それは良かったですね。その後マスコミも騒いでいませんので、たぶん漏えい事件が再び発生していないようですし

社長 そうです。今のところ、その兆候もなさそうでホッとしています。そうそう、当時考えた内部通報制度も2年前に導入できました。これも先生のお陰かもしれませんね

筆者 いくらなんでもそれはあり得ないですよ。私はたった2週間だけ情報漏えい事件の早期終息に協力したにすぎません

社長 実は、その内部通報制度について非常にすばらしい成果があったのです。導入してしばらくは通報がパラパラと来ていたのですが、これがゼロ件になってからもう1年ほど経ちました。普段から社員に社是を復唱させ、徹底した管理をしてきましたが、その精神が浸透してきたのだと、われながら感心しています。いやぁ、本当に良かった。全国の企業がわが社のようになれば、先生のような方の出番がなくなってしまいますね(笑)

 筆者はそれを聞いてあぜんとした。なぜなら、この会社で情報漏えい事件の対応は2週間だけで、中長期的な対策の重要性や、根幹からメスを入れないと再発する可能性が高いことなどを何回もお伝えしたが、「目に見えないものに投資をするのが生理的に好きになれない。発生したらまた考えればいい」というかなり強引なお考えの経営者を前に、結局は諦めた。せめて担当部署が長期策を構築できるようにと支援したつもりであったが、不安が残っていた。

 当時、たった2週間だけでも、さまざまなうわさが筆者の耳に入ってきた。そのほとんどが社長、もしくは経営層に関するもので、不倫問題とか会社の経費でマンションを購入したとかいうものばかりだった。何が本当で、何が嘘なのか分からないが、従業員がさまざまな不満を持っていることだけは分かった。そうした環境で、通報が1件もないというのは、正直おかしいと思えてならないのである。

 この会社の身元は明かせないが、イメージとしては、従業員数が約400人おり、地元で工場を3カ所、東京や大阪など全国に10カ所以上の支社を展開している。製品の国内シェアは8%で大手4社に次ぐ5番手のポジション。典型的な中堅規模の製造業で、地場産業を支える1社でもあるという具合だ。

 このような実績がある企業で、年間の通報件数がゼロというのは、一見するとすばらしいように映る。だが前述のような“きな臭い”話を、筆者はさまざまな肩書(下は新入社員から上は部長、工場長まで)の方から聞いていたので、全てをウワサだと否定するわけにはいかないのである。

 それとも、事件後に劇的な改善がみられたのだろうか。そんなはずはなく、この賀詞交歓会の少し前に事件でお世話になった管理者のA氏から次のような年賀状が届いていた。

「今年こそ、この劣悪な環境から脱出したいのですが、この不況で転職先がなかなか決まりません。どこかいいところ紹介していただければ幸甚です」

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