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» 2012年04月13日 08時00分 UPDATE

えっホント!? コンプライアンスの勘所を知る:中高年が陥りやすいコンプライアンスの落とし穴

今回はミニシリーズ「コンプライアンスの落とし穴」の2回目として、「中高年」が陥りやすいコンプライアンスの盲点を解説したい。

[萩原栄幸,ITmedia]

 中高年――いわゆる中間管理職として、経営側と従業員側の狭間で悩み苦しんでいるおじさん世代にコンプライアンスの面から注意すべき事柄を筆者なりに列記してみた。少しでもお役に立てば幸いである。

経営者を神聖化しない

 管理者の一部の方は、経営者が話すこと、命令や指導はすべてその通りにしなければならないと決めつけている。確かに原則としては正しい。自分たちが生活できるのは、経営者があってのことだし、経営の意向に逆らうということは、会社に辞表を出して行うという覚悟で臨むことが「当たり前」とされている。しかし、盲目的に従うことは本当に良いことなのか――それは否である。

 経営者が世間の常識から逸脱した行為をすることに、誰も指摘ができない企業はまず間違いなく衰退している。また近年、経営者のコンプライアンス違反によりマスコミが騒いだ事件も山のようにある。三笠フーズ、船場吉兆などがその例であり、いずれも既に存在していない。例えば、船場吉兆は老舗の名前にあぐらをかき、賞味期限切れの食品に貼られたシールを貼り替え、料亭ではお客の食べ残しをそのまま別のお客に出していた。

 経営側である創業者や役員が世間の常識から逸脱した場合、どのようにその指摘を、なるべくリスクを無くしながら伝達できるかが肝要となる。信頼できる役員や上司に相談できればいいのだが、なかなかそういう訳にはいかない例も多い。普段から中間管理職の方々は、経営側にどの程度の意見が通るのかについて見極めておくこと、そして常に、経営側に一人でも自分の味方や助言者を確保しておくことの重要性を認識し、努力することが大切になる。

「聞く」スキルを磨いておくこと

 コンプライアンスの意識を常に磨くために必要なこと、筆者の経験則では「聞くスキル」が重要であると認識している。さまざまの立場の人に対して適切な距離を置きつつ、部下からはある程度尊敬され、上司や経営側からは一目を置かれる存在となれることができればベストである。若い時代の“特権”だった「おれがします!」「私が思うに……」という積極的な感性を保ちながら、冷静に他人の声に対して耳を傾けられる、そういう存在をぜひ目指してほしい。

 中間管理職までは自分の実力で上り詰め、以降は周囲が「あの人なら」と、いつの間にか押し上げてくれる、そういう関係がベストだと考えている。常識を持った管理職、立ち位置のブレが少ない管理者、こういう人たちがさらなる上を目指す権利を持つ。

「毒を食わば皿まで」という自滅的な考えは持たない

 「結局は歯車の一つなのさ」「どうあがいたって無理」――そう他人にも漏らし、自虐的な思考に走る人を時々見かける。この場合、もしコンプライアンスに違反する行為を求められたらどう対応するのだろうか。実はほとんど同じように行動する。

「談合を強制されたら?」「粉飾決算をする指示を受けたら?」――それはもう面白いくらいに、彼らは指示に従うのだ。指示をする側の人間が驚くくらいに、まるでそういう指示を望んでいたかのごとく、である。もし発覚すれば、「とかげの尻尾切り」として真っ先に処分されるのが明白であるにもかかわらずだ。

 こうなると、既に「コンプライアンス順守」という言葉は存在しない。絶対にこうなってはいけない。自分の身は自分で守るしかない事実を悟り、いかにしてそこから脱却するのかを真剣に考えていただきたい。そもそもそういう相談をされるということは、それだけ「脇が甘い」という証拠でもある。くれぐれも普段の行動から意識して直していただければと思う。

「組織のルール」を「社会へのルール」へと変貌させよ!

 普通に考えると「超えてはいけない」という線をなぜ超えてしまうのか。それは、そこに至るまでの「物差し」が違うからである。意識するしないにかかわらず、そこにある「物差し」は、会社の中にある「組織の物差し」になっている。だから超えていいと考える線が違うのだ。

 そのため、確実に意識しながら普段なにげなく使っている「物差し」を変えて、「社会に通用する物差し」にしていく努力をするべきなのである。一番良いのは両方の「物差し」をきちんと明示的に使い分けができることである。そうすると、「組織」では全く問題にならない事案でも「社会の物差し」では「イエローゾーン」、いや「レッドゾーン」になっているケースが分かる。

 そして、そういう事案が自分の方に飛んでくること自体をある程度防いでくれるバリアとしても使える。万が一「まずい事案」が来た場合に備えて、事例研究をしながらその会社や組織にどう立ちふるまえばよいか、どうすれば火の粉を取り込まないで仕事を継続できるのか、ぜひ普段の生活の中で考えてほしい。

内部通報制度の表と裏

 上場企業なら確実にある「内部通報制度」を、中小企業でも導入を検討しているところが多い。この制度は、無いよりあった方が確実にコンプライアンス経営としてはいい方へ向かうことができるので、ぜひ制度そのものの導入を積極的に検討してほしい。ただ一部の企業ではその制度自体が「隠れ蓑」にも使われ、非常に残念な企業になってしまっているケースもある。

 この制度は、悪用するつもりなら組織の中から告発者という「ガン細胞」を発見、削除できるのに便利なツールとなってしまうからだ。中間管理職の立場で表には出てこない「裏」を発見したなら、逆にその「裏」を削除することをお勧めしたい。なぜなら、そういう企業に明日はないからだ。バレてしまえば一蓮托生で自分も削除されてしまう。コンプライアンスは、経営にとって「悪」にはなりえない。「善」となるような体制や仕組みを考え、実践してほしい。

「リスクマネージメント」の考えを身につける

 コンプライアンスは、経営にとって今後ますます重要になってくる。その際に必要となるスキルの一つが「リスクマネージメント」だろう。「必須」とも言えるほどに重要だ。本稿では詳細は割愛するが、ぜひ書店でまずはこういう表題に近い書籍を一冊は読んでみてほしい。中間管理者として経営側の考えを理解しつつ、正しい基準を自分の中に構築する。こうすることで、組織を有効に指導できるようにもなる。コンプライアンスとリスクマネージメントは関係がとない感じる読者がいるかもしれないが、筆者の経験では大きな関係があると確信している。

「若いときの感性」を改める

 筆者の経験則の一つとして、20代で許されていた行為や称賛されていた行為は30代では通用しないというものがある。それどころか真逆で、「マイナス評価」となる場合も多い。30代で許されていた行為や称賛されていた行為は、40代ではマイナス評価にしかならないケースも多い。

 簡単な事例として、例えば20代で自己主張が強く、討論会ではいつも一番に発言し、営業成績もいい、周囲も「あいつはできる」と称賛されていた人が、30代、40代となってもそのままだとしたらその行為はマイナスとなる。

 年齢を重ねても、若い時のコンプライアンスの考えをそのまま持ち込んだら、会社は空中分解しかねない。それはコンプライアンスに限らない。全ての考えに当てはまる。若い時の「自分だけの正義感」で、コンプライアンスが単純に「法令順守」だと頭の中だけで理解している、若い時はそれでもいいが、年齢を重ねると「コンプライアンス=法令順守(教科書ならそう掲載されているかもしれないが)」ではないことが分かってくる。そんな簡単なものではないのだ。筆者としては、なぜ日本語訳が「法令順守」となったのかいつも不思議に思う。

 コンプライアンスに対するイメージを尋ねると、100人いたら100通りの回答があり、恐らくその中での正解は60通りくらいだろう。学校の数学なら正解は1つだが、現実がそんなに単純ではないのはいうまでもない。もし若い時のままの思考で「正義のために!」ととった行動が、会社や組織を破滅に追いやれば本末転倒である。しかし、でもだからといって何でも良いというわけでもない。コンプライアンスとしての「苦悩」がそこに生じる。法律だけは絶対に守るなどの大きな基軸を考え、社則レベルなら改革を促すことは可能なはずである。

 それでは、どうすればうまくまとめられるのか――中高年の方々はこれをよく考えて実践し、若い世代へ禍根を残さないコンプライアンス精神を伝えていくべきだろう。

萩原栄幸

一般社団法人「情報セキュリティ相談センター」事務局長、社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会技術顧問、ネット情報セキュリティ研究会相談役、CFE 公認不正検査士。旧通産省の情報処理技術者試験の最難関である「特種」に最年少(当時)で合格した実績も持つ。

情報セキュリティに関する講演や執筆を精力的にこなし、一般企業へも顧問やコンサルタント(システムエンジニアおよび情報セキュリティ一般など多岐に渡る実践的指導で有名)として活躍中。「個人情報はこうして盗まれる」(KK ベストセラーズ)や「デジタル・フォレンジック辞典」(日科技連出版)など著書多数。


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