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» 2012年06月21日 08時00分 UPDATE

松岡功のThink Management:橋下徹大阪市長が語るマネジメント論

今回は、いま最も話題を集めている人物の一人である橋下徹大阪市長が語るマネジメント論に注目してみたい。

[松岡功,ITmedia]

大阪から始まる日本の国の形の大改革

 4年前の大阪府知事就任以来、強烈な言動で注目を集めてきた橋下徹大阪市長。代表として率いる地域政党「大阪維新の会」は、昨年の統一地方選と大阪ダブル選で圧勝。今年3月には衆院選向けの政策集「船中八策」(維新八策)の原案を公表し、国政進出もうかがっている。

 6月19日に大阪市長就任半年を迎えた橋下氏の人気の高さは相変わらずだ。読売新聞が6月15〜17日に実施した世論調査によると、府民全体の支持率は72%に上り、次期衆院選で大阪維新の会の国政進出を期待する割合も65%に達している。

 そんな橋下氏が、かねてから好んで使う言葉が「マネジメント」だ。そこで今回は、橋下氏が作家の堺屋太一氏と共に執筆した著書『体制維新 ― 大阪都』(文春新書)やメディアでの発言などから、橋下氏のマネジメント論に注目してみたい。

 まずは、橋下流マネジメントが目指すビジョンともいえる「大阪都構想」について簡単に説明しておこう。これは大阪府と大阪市を大阪都に再編して重複する行政機能を整理し、インフラ整備や産業振興などの大都市戦略を大阪都に一本化する構想である。身近な住民サービスの拡充のため、市内24の行政区は東京23区のように区長を選挙で選ぶ特別区に衣替えするというものだ。

 この構想は大阪維新の会が提唱したもので、詳細な制度設計については府知事と市長、府議、市議らで構成する「大都市制度推進協議会」で検討中だ。ただし、実現には新法制定や地方自治法改正など法整備が必要となる。

 橋下氏は著書で、この構想を「大阪の行政制度を根本から改革するもので、明治4年の廃藩置県以来の大改革。大阪から始まる日本の国の形の大改革」とし、「政治家の役割は政策よりも体制や政治の仕組みをどうするかを考えることが大事だ」と強調している。

 こうした構想を実現していくために、橋下氏はとくに「組織マネジメント」と「政治マネジメント」という言葉をよく使う。それらの考え方はどういったものか。いずれも著書から核心部分と思われる発言を抜粋してみた。

大阪都構想は壮大なマネジメント改革

 まず、組織マネジメントについてはこう述べている。

 「仕事は全部任せる、では結局、各担当者が組織全体の進むべき方向を意識せず、自らが担当する狭い領域内で判断することになる。今や機動的に右や左に舵を切る時代。組織の方針を、全メンバーが意識することは必要不可欠だ。組織の一定の方針の下で、各現場に自律的に動いてもらう。その結果の責任をトップが取るのは当然である」

 「政治主導とよく言われるが、政治家が行政の仕事を全てできるわけがない。というよりも、政治家は行政の仕事は全くできない。政治家の役目は、一定の方向性を示し、その実現に必要な人やお金の配置をし、組織が機能する環境を整え、組織が動かなくなる障害を取り除くといった組織マネジメントをすることである」

 一方、政治マネジメントについてはこう述べている。

 「政治マネジメントで最も重要なのは、議論を尽くすべき問題は徹底的に議論し、すでに判断に機が熟したとされるものは、思い切って判断を下すこと。このような判断に対しては、独裁的との批判をよく受けるが、僕の判断が適切だったかどうかは、選挙で有権者の審判を受ければいいと思っている」

 こうした発言から読み取れるのは、組織マネジメントにしても政治マネジメントにしても、組織のトップ(政治家)はもっとリーダーシップを発揮すべし、という橋下氏の強い思いだ。今や流行語になりつつある「決められない政治」が続く中で、橋下流マネジメントが一段と脚光を浴びるのは必然ともいえる。

 さらに、橋下流マネジメントでは「規律」を重んじることも重要なポイントだ。かねてから「規律を徹底しなければ、組織を適切に動かすことはできない」と繰り返してきた。民間企業のガバナンスを行政組織に浸透させる考え方で、それは教職員に起立斉唱を求めた君が代条例や、相対評価を導入した職員基本条例にも体現されている。

 また、市長に就いてからは、統制の矛先を職員労働組合に向け、庁舎内の労組に退去を求めるとともに全職員に組合や政治活動への関与を問う記名式アンケートを強制したりもした。

 こうしたマネジメントスタイルには異を唱える声もある。作家の高村薫氏が「橋下氏は改革を急ぐあまり、対立する意見を許さず、自分に従わないものはつるし上げると言わんばかり。社員が異を唱えたからといって、切り捨てる民間企業のトップがどれほどいるだろうか。待っているのは組織の分断であり、職場の萎縮でしかないだろう」と、朝日新聞(3月13日付け朝刊)のインタビューに答えて手厳しい意見を述べていたが、同じ見方をする人が少なくないのも事実だ。

 橋下氏は著書の最後でこう宣言している。

 「体制を変えるには時代が時代ならば、大戦争を仕掛けなければならなかっただろう。今は民主主義の世。選挙というプロセスで変えざるを得ない。選挙で選ばれた者、そして選ばれる者は、何もやらなければ決断力がない、実行力がないと批判され、実行すればもっと議論しろ、独裁だと批判される。どうせ批判されるなら、やって批判されるほうがいい。僕は大阪都に挑戦します」

 橋下氏が掲げる大阪都構想は、大阪、そして国全体における壮大なマネジメント改革である。まださまざまな点で粗削りかもしれないが、閉塞感が蔓延する今の日本には、これくらいの大胆なマネジメント改革が必要だと考える。ただし、持論を差し挟んでおけば、マネジメントのベースには信頼関係が必要不可欠だ。橋下氏にはその理念をしっかりと持ち続けてもらいたい。

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