企業のデータ分析力を支える3本柱アナリストビュー(1/4 ページ)

日本企業がデータ活用によってビジネスを活性化するために必要なものとは何だろうか。

» 2012年06月29日 08時00分 公開
[生熊清司(ITR),ITmedia]

 前回は日米のIT投資を比較し、今後国内企業がビジネスを活性させるためのIT活用を行うには、これまでの基幹系システムから情報系システムに対する投資が鍵となると述べた。情報系システムをうまく活用するためには、ハードウェアなどのインフラもさることながら、ソフトウェアの活用が重要となるとも述べた。

 今回は情報系システムに関する現状と、今後どのような対応をするべきかを考えてみたい。

情報系システムの現状

図1 主要なIT動向に対する重要度指数(出典:ITR) 図1 主要なIT動向に対する重要度(出典:ITR)

 アイ・ティ・アール(ITR)では、2001年度から継続して国内企業のIT投資動向を調査しており、その中に「主要なIT動向に対する重要度」を表したものがある。最新の「国内IT動向調査報告書 2012」を見ると、「全社的なコンテンツ管理インフラの整備」が3位、情報・ナレッジの共有/再利用環境の整備」が5位、「データ分析基盤の強化」が6位と、情報系システムに属する項目が上位となっている。

 この調査結果だけを見ると、企業が情報系システムを重視しており、今後、積極的な投資が実施されると思われがちであるが、図2に示したように実施率の経年変化を見ると、3年後には実施を予定するとの回答が高いにもかかわらず、実際の実施率は増加していないということが分かる。

図2 「情報・ナレッジの共有/再利用環境の整備」実施率推移(出典:ITR) 図2 「情報・ナレッジの共有/再利用環境の整備」実施率推移(出典:ITR)

 アプリケーション分野という切り口で情報系システムに対する動向を見てみよう。同調査のアプリケーション分野への注力度を見ると、「データ分析」が3位、「コラボレーション/グループウェア」が4位、「文書・コンテンツ管理」が5位と、情報系アプリケーションが上位に存在している。

1990年にビル・インモン氏が著書で「データウェアハウス(DWH)」という言葉を定義して以来、企業におけるデータ分析への取り組みが活発化した。日本においても1990年代後半から、データウェアハウスの構築やデータ分析ツールの導入が盛んになった。

図3 アプリケーション分野における注力度指数(出典:ITR) 図3 アプリケーション分野における注力度指数(出典:ITR)

 特定の業務分野や目的においてデータを活用する動きは確実に広まっている。ITRが実施している「IT投資動向調査」においても、「データ分析」は常に注力するアプリケーション分野として挙げられている。しかし、データ分析の成果をビジネスにおける競争優位の獲得に生かしている国内企業は必ずしも多くない。データ分析は、従業員が何らかの意思決定を行う際に、参考となる情報や示唆を提供するものという位置付けにとどまっている。また、データ分析は宣伝や販売促進のための手段であるというとらえ方も、本格的な活用を妨げているように思える。

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