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» 2012年08月07日 08時00分 UPDATE

田中克己の「ニッポンのIT企業」:なぜ全国紙に全面広告を打ち続けるのか ビジネスアプリケーション (1/2)

20年ほど前から新聞に全面広告を出すなどのマーケティング活動を続けている、社員約20人の中小IT企業がある。

[田中克己(IT産業ウオッチャー),ITmedia]

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 全国紙に全面広告を出し続ける社員約20人の中小IT企業がある。人材派遣会社向け業務パッケージソフトを開発、販売するビジネスアプリケーションだ。

 20年近く前から新聞広告などを使ったマーケティング活動を行っている。それが功を奏して、同社は人材派遣会社向け市場で圧倒的なシェアを確保する。

セミナー集客の有効手段に

 1980年創業のビジネスアプリケーションは、浅野悦男代表取締役が1人で財務会計システムの販売から始めた会社だ。そのパッケージソフトベンダーが倒産したのをきっかけに、会計ソフトや給与ソフト、販売管理ソフトを自社開発する。会計や給与は数社に採用される程度だったが、販売管理は約500社に導入された。オフコン全盛の時代に、いち早くパソコン用業務ソフトの開発を手掛けたことで、同社は業務ノウハウを蓄積できた。

 それをベースに約20年前、人材派遣会社向け業務システムに取り組むことになった。「これから人材派遣事業が拡大する」との業界関係者の話を信じて開発したが、採用するユーザーはなかなか現れなかった。ところが、1996年にWindows95対応版を発売したところ、1年間で約50本売れた。浅野氏は「販売本数をさらに増やすにはセミナーが有効」と考えて、全国紙への告知広告を決めた。飛び込みセールスだけで、数多くの顧客を集約するのは難しいので、メディアを活用することにしたわけだ。

 だが、「信用されていないのか、支払いは前金と言われた」(浅野氏)。それでも、全5段広告を年に4回載せたという。最初の2回は反応がなかったが、3回目からセミナー参加の申し込みが少しずつ増えてきたという。「顧客は継続するのかを見ていたのだろう」(同)。その後、掲載回数を増やし、今日でも3カ月に2回の割合で、全面あるいは全5段の広告を出している。

 実際にセミナー集客の効果はあり、全国紙の威力を感じる。「全国紙に全面広告を出すのだから、それなりの企業だろう」とユーザーは思うだろう。ところが、セミナーに参加したユーザーは「小さな会社なのか」と一瞬驚くとともに、ギャップを感じる。それでも、「いい商品と分かれば、当社への見方が変わる。安心もする」(浅野氏)。今日、人材派遣会社向け業務システムとして、数多くのユーザーを獲得したことがそれを物語っている。

 新聞広告を出す理由はもう1つある。人材確保だ。ビジネスアプリケーションは自社内にパッケージソフトの開発者と販売担当者を揃えている。開発も営業も他社に依存していないということだ。「パッケージソフトを発売した当初、代理店販売を計画したが、誰も扱ってはくれなかった」(浅野氏)。中小IT企業が開発した販売実績のないソフトを売ってくれるシステム販売会社は確かに少ないだろう。

 そこで、営業担当者の採用を考えた。しかし、「新卒採用の会社説明会を開いても、誰も来ないことがある」(浅野氏)ような、中小 IT企業に優秀な営業担当者が応募してくるだろうか。もし雇用できたら、支払う給与が増える。浅野氏は「同じコストをかけるなら、商品広告のほうが大きな効果を生み出す」と判断したのだ。

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