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» 2013年01月18日 08時00分 UPDATE

“迷探偵”ハギーのテクノロジー裏話:「これは国で統一すべきでは?」と感じた2012年の事件 (1/2)

今回は、昨年の情報セキュリティ関連の事件から興味深いものを取り上げたい。情報セキュリティ専門家、法律の専門家、一般の方それぞれの視点で考えてみると、実に興味深いと感じられるものだ。

[萩原栄幸,ITmedia]

米国での判決にみる

 筆者は、以前に執筆した「名探偵ハギーの世界一やさしい情報セキュリティの本」(2004年、日科技連出版)の中で、「スカートの中の盗撮は合法」というものを紹介したことがある。ここではセキュリティと法律および一般的な社会通念とは別物であること、日本と別の国では法律が真逆の内容になる場合もあるということを提起した。つまり、「あなたの常識は世界では通じない」ということを伝えたかった。

 その内容は、米国ワシントン州の最高裁判所が下した判決である。事件概要は、2人の若者が公園で超小型カメラを忍ばせて女性のスカートの中を盗撮したというものだ。2人の若者に対して裁判所は、「行為自体は酷く卑劣である。しかし、公共の場でのスカートの中を撮影してはいけないという法律は無い」として無罪を言い渡した。当然だが、プライバシーが確立している風呂場や寝室などでの盗撮行為は処罰される。

 当時、この裁判所の考えに対して筆者は、法律の専門家らしい見解だが、やはりおかしいと感じた。受け取り方によっては、「法律に記載していないものは全てOK」となり、そんな風潮を追認しているようにもなってしまう。その後、友人たちにこの出来事を話すと、「日本だってね……」と反応があった。それは何か。

日本にもある県や市で「合法」なもの、「逮捕される」もの

 今では誰でもが知っていると思うが、日本では盗撮行為に対して「迷惑防止条例」に基づく処罰が行われている。しかし、少し前までは県や市でそうした迷惑防止条例が無いところもあった。地域によって名称が異なったり、微妙に内容が違っていたりもするようだが、いずれにしても少し前まで合法となってしまう地域が存在していた。昔は「盗撮集団組織」というものが全国に点在し、迷惑防止条例が無い地域を狙って盗撮行為を繰り返していたという。

 米国は、「州」が国家と同じ存在であり、法律も州に限定したものが多い。今話題の銃器を法律で制限する州があれば、法律が無い州もある。運転免許の年齢も州によって違い、薬物を日本並みに厳しく取り締まっている州もあれば、合法とする範囲が広い州もある。つい最近も、コロラド州やワシントン州、オレゴン州で嗜好用マリファナ合法化法案に関する住民投票が行われ、コロラド州とワシントン州では賛成多数で可決されたのは記憶に新しいところだろう。

 やや話題は脱線するが、日本人の多くは「薬物=とても危険でいけない物」という先入観を持っている。筆者は現物を見たことも使用したこともないが、米国人にこの話題をすると常識的な人たちから次のように回答がある。

「小学校から薬物の危険についてきちんと学習している。何がいけないのかについて大半の米国人は頭で理解している。何でも『薬物』と一括りにするべきではないだろう。例えば、大麻やヘロインはきちんと管理すれば特に危険を感じるものでは無い。しかし、コカインには絶対に手を出してはいけない。人生を台無しにするほど危険なものだ」

 そして、「学生時代にドラッグを経験したことが無い学生など有り得ない」という話も聞く。オバマ大統領も著書の中で「大麻やヘロインは使用していた」と書いているが、「コカインを勧められたが、絶対にダメだと感じた」とも書かれている。日本で総理大臣がそんな発言をしたらパニックになるだろう。

 喫煙についてオバマ大統領は、ヘビースモーカーを減らしたいとも話している。他人への間接喫煙を含めてリスクが高いと考えているのだろう。論理上では大麻よりアルコールやタバコの方が危険とされ、これらは広い意味で「ドラッグ」といえるのかもしれない。米国で合法化法案が議論されるのは、シンジケートの資金源を絶つという発想が大きいからだ。正規料金の何十倍もの高額でドラッグが取引され、少なくともその資金源は年間60億ドルという試算もあるという。つまり、コカインのようなハードドラッグは法律で厳しく管理したいが、その他はタバコやアルコール並みで構わないと市民が妥協した結果なのだろう。

 こういった情勢がある中で、盗撮行為に対して日本では「なぜ迷惑防止条例なのか? 法律で全国一律に網を被せた方が対処しやすいのではないか?」というという素朴な疑問が浮かんでくる。

 この疑問を弁護士や法学部の先生に尋ねたことがあった。回答は筆者の想定の範囲だった。「法律には適さない。盗撮の定義から全て議論する必要がある。こういう犯罪は軽犯罪に近く、今ある法律との相互調整も必要になる。既存法との兼ね合いも難しい。条例で禁止すればそれで十分」――などだ。もっと重要な理由があれば、ぜひお教えてほしいところだ。

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