キヤノンの異色デジカメ「PowerShot N」が生まれた理由IBM CMO+CIO Leadership Forum Report(1/2 ページ)

米IBMおよび日本IBMが、オンラインマーケティングのカンファレンス「CMO+CIO Leadership Forum」を都内で開催。ユーザーとして登壇したキヤノンマーケティングジャパンの村瀬会長は「データの分析が新ビジネスにつながる」と話す。

» 2013年03月06日 18時31分 公開
[本宮学,ITmedia]
photo 日本IBMのマーティン・イェッター社長

 3月6日、米IBMおよび日本IBMによるオンラインマーケティングのカンファレンス「CMO+CIO Leadership Forum」が東京・六本木で開かれた。企業のCMO(最高マーケティング責任者)とCIO(最高情報責任者)が一堂に集うこのイベントは日本初といい、数百人を超える参加者を前にさまざまな先進事例が紹介された。

 「IT企業であるIBMがマーケティングについて語るのは意外かもしれないが、これは2つの重大な変化が起きているからだ」と日本IBMのマーティン・イェッター社長は話す。スマートデバイスやソーシャルメディアの普及は、顧客と企業の関係性を一変させた。また、企業ITの発展はバックオフィスにとどまらず、営業やマーケティングなどのフロントオフィスにまで及んでいる。「CMOとCIOは社内での役割を見直す必要がある」(イェッター社長)

 ITとマーケティングの連携で生まれる価値の1つはeコマースだ。イェッター社長によると、日本のeコマース市場規模は2011年に8兆2000億円に達し、国内のコンビニエンスストア市場を既に超えている。同市場は今後数年にわたって2ケタ成長を続け、遠からずスーパーマーケット市場も上回る見込みという。

 だが、日本の消費者がオンラインで気軽に海外の商品を買えるようになった今、日本企業はこれまで以上に激しい競争に直面しているとも言える。グローバルでの競争に勝ち抜くため、企業は3つの変革を起こす必要があるとイェッター社長は話す。

 それは(1)顧客1人1人(IBMは「個客」と表現する)を理解すること、(2)個客とのエンゲージメントを作ること、(3)個客の“クチコミ”に耐えられるブランドを作ることだ。「これらを実現するのがITだ。ITを活用するマーケティング部門こそ、企業の次なる成長のエンジンになる」(イェッター社長)

セグメント化に頼ったマーケティングは時代遅れ

photo 米IBMのジョン・イワタ マーケティング&コミュニケーションズ シニア・バイス・プレジデント

 「従来のマーケティング活動でも顧客を知ることは大事だったが、果たしてわれわれはどこまで顧客を理解できていただろうか? どこまで個人に寄り添えていただろうか?」――米IBMでマーケティング業務を統括するジョン・イワタ上級副社長は、このように観衆に問いかける。

 過去数十年にわたる企業のマーケティング活動の主軸は、顧客を「年齢」「性別」「職業」などのキーワードでグループ分け(セグメント化)することだった。だが「ゴルフが好きで、子を持っていて、朝コーヒーを飲み、郊外に住んでいる人はみな同じ人間だろうか? そうではない」とイワタ氏はばっさり斬る。

 モバイル端末やソーシャルメディアを通じ、個人が生み出すデータ量は爆発的に増加している。これにより「広いセグメントではなく、顧客を1人の個人として理解できる地盤が整った」とイワタ氏。現代のマーケティング活動に求められるのは、オンライン、店舗、ソーシャルメディアなどから、顧客が何に関心を持つかといったデータをできるだけ多く引き出し、分析することだという。

 では、そうして得た顧客1人1人の情報をどうサービスに結びつけるのか。「顧客ごとに異なるサービスを大規模に展開するためにはパワーが必要。その唯一の手段こそがシステムによる自動化なのだ」(イワタ氏)。例えばクレジットカード大手の三菱UFJニコスでは、ユーザーの利用履歴に基づき異なるキャンペーン情報を自動配信し、顧客価値の向上につなげているという。

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