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» 2013年03月13日 08時00分 UPDATE

「課題先進地」としての東北は今――3.11にIT企業が議論 (1/2)

首都圏および東北地方のIT関係者が仙台に集い、復興後を見据えた東北の経済発展についてディスカッションを行った。

[石森将文,ITmedia]
tpw2.jpg 「ITで日本を元気に!」代表の佐々木氏。仙台に本社を置くトライポッドワークスの社長を務める

 東日本大震災以前、被災地に存在していたコミュニティーは、地震や津波による直接的な被害に加え各地に分散した避難生活によって寸断されたままだ。仮設住宅単位で町内会を設立したり、仮設商店街を運営したりする活動が行われているが、新しいつながりが十分に構築できたとは言い難い。

 物資だけでなく、ITを使い情報を受発信するノウハウまで含めた復興支援活動を行う「ITで日本を元気に!(代表:トライポッドワークス社長の佐々木賢一氏)」は震災復興3年目を迎えた3月11日の15時より、仙台市内で「震災から2年 東北は変わったか?変われるのか?」と題した150人規模のミーティングを開催した。

 東北の発展のために解決が必要な課題として「情報の滞り」を挙げる佐々木氏がゲストスピーカーとして招いたのは、情報通信研究機構(NICT)耐災害ICT研究センターの鳥澤健太郎氏だ。

 同センターは、災害時に大量に発生する情報の収集と伝達について研究および実証実験を行うことを目的にNICTと東北大学が設立した研究機関。東北大学の川内キャンパス内に拠点を置く。

 例えば今回の震災直後、ネットワークの輻輳(ふくそう)により電話がつながりにくくなる状況があったが「現在の光パスによる伝送を、パケット単位での伝送(光パケット)にすることで解消できる」(鳥澤氏)という。また鳥澤氏は、一般的なツリー型ではなくメッシュ型でワイヤレスネットワークを構築し、さらに無人航空機を基地局として運用することでハブとなる機材が破壊されても通信を維持できるネットワーク構築手法などを紹介した。

 特徴的なのは、災害時に発生する情報の分析とアウトプットを行う「耐災害情報分析システム(質問応答システム)」である(鳥澤氏は自然言語の自動処理を専門とする)。第二次世界大戦時の「バトルオブブリテン」でイギリス空軍が構築した索敵ネットワークを参考にしたという。

 当時イギリスは、ドイツ空軍によって爆撃を受けていた。レーダーはあったが量が不足しており、また情報の信頼性も低かった。海外線に迎撃機を張り付けるわけにもいかない。そこでイギリスが、ドーバー海峡を渡り飛来するドイツ空軍を迎え撃つためにとった施策は、「目視による索敵ネットワーク」の構築であったという。

tpw1.jpg ユーザーの投稿をシステムがサポート。「受援力」を高めるという

 集められた目視情報は、信頼度の高低や矛盾の存在を問わず地図上にプロットされた。矛盾も含むその情報を最終的には人間が判断し、戦闘機の配置を最適化したわけだ。

 大規模災害が発生した際の状況に当てはめてみよう。例えば持病を持つ被災者が「人工透析ができる病院を教えてほしい」とツイートし、その病院を教えてもらったとする。

 しかしその時点で既に、医療機器の不足や患者の集中によって受け入れ不可能になっているかもしれない。そうなると被災者は、無駄足を運んでしまうことになる。

 こういった場合でも、質問時に耐災害情報分析システムを介せば、「人工透析ができる病院はどこ?」という問いに対し「A病院で人工透析できる」という情報と「既に受け入れ不可能のようだ」という情報を同時に入手できる。

 このように一見矛盾する情報でも併せて提示することで「デマにのせられたり状況の変化を把握できなかったりという事態を減らせる」と鳥澤氏は話す。

 鳥澤氏はこのシステムを「情報伝達の自動確認までできるようにしたい」と意気込む。例えば救援団体が被災地域に向けて「不足している物資は?」とツイートし、被災者が「A市では鎮痛剤が足りない」と回答した場合、位置情報付きで救援団体のダッシュボードに表示される。また対処がなされればその旨が発信者にもシェアされる仕組みだ。

 耐災害情報分析システムは既にプロトタイプが稼働している。「災害時にもコミュニケーションの双方向性を担保し、被災者と救援団体が意図を共有できるようになる」(鳥澤氏)

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