組織活性化に求められるリーダーシップスタイル松岡功のThink Management

組織を活気づかせるために求められるリーダーシップのスタイルとはどのようなものか。ヘイコンサルティンググループの調査結果を基に考察したい。

» 2013年06月06日 07時50分 公開
[松岡功,ITmedia]

世界で最も低水準の日本組織の“活気”

 米国系人事・組織コンサルティング大手のヘイコンサルティンググループが先頃、日本を含む主要10カ国における組織の活性度と直属上司のリーダーシップスタイルの傾向について分析した調査結果を発表した。

 それによると、日本では「活気の無い」組織が73%に達し、10カ国中で割合が最も高く、米国(48%)や中国(50%)を大きく上回った。一方で、日本は「極めて活気のある」組織が7%にとどまり、米国(22%)や中国(25%)を大きく下回った。(図1)

図1 組織の活性度 図1 組織の活性度

 また、調査対象者となった日本人上司の59%に「民主型」リーダーシップの発揮が見られ、10カ国中で最も高い割合となった。一方、「ビジョン型」は19%にとどまり、他国と比べて最も低い割合となった。(図2)

図2 組織活性化の比率と、リーダーシップスタイルの発揮比率の関係 図2 組織活性化の比率と、リーダーシップスタイルの発揮比率の関係

 この調査は、同社が2010年から2012年の3年間にわたり、世界各国の企業や公共機関など約1200組織を対象に実施したもので、調査対象となったリーダー数は管理職以上8万6000人(うち日本は2800人)、調査回答者数は対象リーダーのチーム構成員42万人(うち日本は1万3350人)。

 主要10カ国としては、先進国(G7参加国:日本、米国、英国、フランス、カナダ、イタリア、ドイツ)と、新興国(ブラジル、インド、中国)が名を連ねている。

 分析方法は、組織の活性度については、柔軟性、責任、基準、評価・処遇、方向の明確性、チームコミットメントの6つの評価軸を基に、47の質問に対する期待と現状の肯定的回答の比率を基に各組織の活性状態を判定。直属上司のリーダーシップについては68の質問から、指示命令型、ビジョン型、関係重視型、民主型、率先型、育成型の6つの評価軸を基に点数化したという。

 これらリーダーシップの6つのスタイルは、指示命令型を「いつまでに何をやるかを細かく指示し、進ちょくをチェック」、ビジョン型を「なぜ、その仕事が必要なのかを背景や関連情報も含めて理解させる」、関係重視型を「情緒的な関係、人と人とのつながりを重視」、民主型を「メンバーから意見を吸い上げ、意思決定の際に衆知を結集させる」、率先型を「仕事の進め方を行動で示し、できない場合は自ら対応する」、育成型を「多少時間がかかっても部下の成長を優先し、相手に合わせて指導やフィードバックを行う」と定義づけている。

日本組織に求められるビジョン型リーダー

 同社では過去の調査分析結果から、組織の活性度は、その組織のリーダーのリーダーシップスタイルと高い相関関係を示すことが判明しているという。また、良い組織風土を生み出しているリーダーは、スタイルを複数使い分けているとのこと。これを踏まえて10カ国について分析したところ、次のような点が浮き彫りになってきたとしている。

◎先進国で組織の活性度が高い上位4カ国(米国、ドイツ、カナダ、英国)のリーダーは、ビジョン型リーダーシップスタイルの割合が高く、指示命令型が低い。

◎組織の活性度が低い国(ブラジル、フランス、イタリア、インド)のリーダーは、指示命令型の割合が高い傾向があるが、日本は例外となっている。

◎組織の活性度がトップの中国は、ビジョン型は低いが育成型が高い。

◎日本はビジョン型が10カ国中最も低く、民主型と率先型が高い。

 同社ではこれらのことから、先進国においては、活気のある組織風土にはビジョン型のリーダーシップスタイルを発揮するリーダーが多く、ビジョンを示すことで部下のモチベーションを上げ、組織の活性化に結び付いていると分析している。

 また、活性度の低い組織の多くは、指示命令型で強引に組織を動かすリーダーシップが組織風土を悪化させているとも。

 なお、中国においてビジョン型が低いのは、新興国では先に手本とする先進国があり、ビジョン型が少なくとも進むべき方向が明確であるためとしている。中国は育成型が高く、これが良好な組織風土の醸成の要因と分析している。

 では日本はどうか。日本の組織の活性度合いが低い要因は、ビジョン型のリーダーシップを発揮するリーダーの少なさだと指摘。日本のリーダーにとっては、民主型の特徴である部下の意見を吸い上げるスタイルを維持しながらも、ビジョン型も発揮できるようになることが課題だとしている。

 同社の今回の調査結果は、日本のリーダーにとっては、何とも耳の痛い指摘だ。組織マネジメントの勘所ともいえるポイントだけに、今後はビジョン型リーダーシップスタイルを強く意識して実践できるよう肝に銘じたいところである。

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