世界のCEOが最も尊敬するリーダーは誰か? PwCが先頃こんな調査結果をまとめた。そこから見えてきたリーダー像とは——。
プライスウォーターハウスクーパース(PwC)が先頃、世界のCEOが最も尊敬するリーダーに関する調査結果を明らかにした。PwCが継続的に行っている「世界CEO意識調査」の一環として今年1月に実施したもので、世界68カ国・地域で1437人のCEOを対象にインタビュー形式で回答を得たという。
そのトップ10は以下のようになった。
1. ウィンストン・チャーチル(Winston Churchill)
2. スティーブ・ジョブズ(Steve Jobs)
3. マハトマ・ガンジー(Mahatma Gandhi)
4. ネルソン・マンデラ(Nelson Mandela)
5. ジャック・ウェルチ(Jack Welch)
6. エーブラハム・リンカーン(Abraham Lincoln)
7. マーガレット・サッチャー(Margaret Thatcher)
8. ロナルド・レーガン(Ronald Reagan)
9. ジョン・F・ケネディ(John F. Kennedy)
10. ビル・クリントン(Bill Clinton)/ナポレオン・ボナパルト(Napoleon Bonaparte)
CEOが最も尊敬する存在として選んだリーダーは、ウィンストン・チャーチル、そして最も多くの国(37カ国)で名前が挙がったのは、スティーブ・ジョブズだった。
チャーチルは西欧諸国で幅広く人気があり、フランスではシャルル・ドゴール(Charles de Gaulle)、イタリアではニッコロ・マキャベリ(Niccolo Machiavelli)を抑えて1位になった。またトルコでも、同国の初代大統領であるムスタファ・ケマル・アタチュルク(Mustafa Kemal Ataturk)に続き、チャーチルがガンジーと並んで2位になった。
リーダーの分類別に見ると、およそ6割のCEOが戦後の政治家もしくは軍事的指導者を選んだ。次に人気が高かったのは、ビジネスリーダー、歴史上のリーダー、現代のリーダー。そのほかには、作家、アーティスト、哲学者、スポーツ選手、宗教指導者、架空の人物が挙がったという。
女性のリーダーでは15人の名前が挙がったが、トップ10に入ったのはサッチャーのみだった。次に人気が高かったのは、アンゲラ・メルケル(Angela Merkel)、アイン・ランド(Ayn Rand)、マザー・テレサ(Mother Teresa)、クイーンエリザベス1世(Queen Elizabeth I)だった。また、女性リーダーを選ぶ傾向が男性のCEOよりも4倍高くみられたという。
PwCでは今回の調査の結果、リーダーとして4つのタイプが浮かび上がったという。その4つとは、戦士型(ナポレオン・ボナパルト、アレクサンダー大王)、改革者型(ジャック・ウェルチ)、逆境克服型(ウィンストン・チャーチル、エーブラハム・リンカーン)、大衆魅了型(マハトマ・ガンジー、ネルソン・マンデラ)、意見調整型(ビル・クリントン)といったものである。
理想のリーダー像とは、この4つのタイプを併せ持った形になろうか。ただ、それも時代背景やリーダーシップをとる対象によってプライオリティが違ってくるだろう。それにしても、スティーブ・ジョブズの存在感の大きさを改めて感じずにはいられない。
今回の調査結果をまとめたPwCのヒューマンリソースサービス部門のグローバルリーダーであるマイケル・レンデル氏は、「リーダーに求められる役割や期待は変化しているものの、CEOが今も歴史を振り返ってロールモデルを見つけようとしているは明らかだ」とのコメントを寄せている。
ちなみに今回の調査のうち、日本のCEOが選んだ最も尊敬するリーダーの上位3位は、織田信長、上杉鷹山、松下幸之助の順だった。上杉鷹山について補足しておくと、今回の調査でトップ10に入った米国のケネディ元大統領やクリントン元大統領に「最も尊敬する日本人政治家」と言われた江戸時代の米沢藩主(現:山形県米沢市)で、「なせば成る 為さねば成らぬ何事も」との名言を残した人物である。
なお、リーダーシップについては、以前にも本コラム『ドラッカーやウェルチが説くリーダーシップ』(2012年5月10日掲載)にて考察しているのでご一読いただければ幸いである。
リーダーシップのありようは、人間社会や企業経営における時代の映し鏡ともいえる。PwCの今回の調査結果から浮かび上がったリーダーとしての4つのタイプが、リーダーシップの考察を一層深めるものになることを期待したい。
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