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» 2013年07月18日 08時00分 UPDATE

松岡功のThink Management:働き方の多様化にどう対処するか

今回は、雇用について考えたい。総務省が先週発表した調査によると、非正規で働く人が着実に増えているようだ。この現象はマネジメントにも大きな影響を及ぼすものである。

[松岡功,ITmedia]

非正規労働者が2000万人を突破

 総務省が7月12日に発表した2012年(平成24年)就業構造基本調査によると、パートやアルバイト、派遣、契約など非正規で働く人が約2043万人となり、初めて2000万人を突破した。役員を除く雇用者全体に占める比率も38.2%と過去最高を更新した。

 同調査は5年に1回。今回は全国47万世帯の15歳以上の約100万人を対象に昨年10月1日時点の就業形態を調べ、全体の状況を推計している。それによると、非正規労働者の比率はこの20年で着実に増えてきている(図1参照)

図1 非正規労働者の比率の推移(総務省「平成24年 就業構造基本調査より) 図1 非正規労働者の比率の推移(総務省「平成24年 就業構造基本調査より)

 20年前の1992年(平成4年)の調査と比べると、非正規の比率は21.7%から38.2%へと16.5ポイント上昇した。人数では20年前の約1053万人から1000万人近く増加しており、つまりは20年でほぼ倍増したことになる。また、性別でみても男性が22.1%、女性が57.5%と共に過去最高の比率となった。

 こうした現象の背景には、産業構造の変化に伴って企業が人件費を抑えるために、正社員に代わって非正規労働者を増やしてきたことがあるとみられる。

 例えば、正社員の比率が高い製造業では生産拠点の海外移転などで雇用が減少する一方、パートの多い小売やサービス業で働く人の比率が高まっていることなどが挙げられる。女性の非正規比率が高いのは、そうした小売やサービス業でパートやアルバイトとして働く人が多いからだとみられる。

 同調査では、正社員だった人が転職する際に非正規になる傾向が強まっていることも示されている。過去5年の間に転職した人の雇用形態をみると、転職前に正社員だった人のうち40.3%が非正規になっている。この比率は、2007年(平成19年)の前回調査と比べると3.7ポイント上昇している。

 逆に非正規で働いていた人が転職したケースでは、正社員になったのは24.2%にとどまった。この比率は前回調査より2.3ポイント下がっている。つまり、非正規労働者が仕事を変える際に正社員になるのは、5年前より難しくなっているということだ。

 こうした現象に、今後どう対処していくか。マネジメントの観点からみても非常に重要な問題である。

雇用形態に翻弄されることなかれ

 こうした現象は日本経済にとっても大きな影響を及ぼすとして、政府においてこのところ雇用の流動化への対応に向けた議論が活発に行われている。その議論は、安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」に則ったもので、環境や介護など、今後の成長が見込まれる分野に多くの人が就職するには、正規、非正規を含めた多様な働き方が必要、との考え方がベースにあるとみられる。

 そうした中で、政府がいま力を入れているのが「限定正社員」のルール作りだ。限定正社員とは非正規と異なる働き方で、勤務地や職務内容、労働時間などが限定されている正社員を指す。

 一般の正社員は転勤や配置転換、残業などがあるが、限定正社員は契約の範囲に限られる。例えば、特定地域での勤務とした場合、転勤する可能性はない。契約時間外の勤務もないため、子育て中の人などにとってメリットは大きい。給与は正社員と比べると低いが、福利厚生などについては正社員と同じなのが一般的だ。

 政府には、この限定正社員を増やすことによって、非正規労働者の待遇改善にもつなげたいとの思惑があるようだ。ただ一方で、限定正社員は仕事がなくなると解雇されやすくなるのではないか、と懸念する声もある。そうした懸念を払拭するためにもルール作りが急がれるところだ。

 こうした動きを踏まえて、筆者の思うところを述べておきたい。それは、非正規労働者にせよ限定正社員にせよ、マネジメントの観点から留意すべきなのは、雇用する側の論理を押し通すだけでなく、雇用される側に立った「働き方の多様化」や「働きやすさ」に十分配慮することではないか、ということだ。

 当然ながら、雇用する側にとって最も重要なのは、雇用した人の能力を最大限に引き出すことである。そのために、今後はこれまでにも増して、働き方の多様化や働きやすさへの対応が求められるようになる。そうでないと、これからは企業として立ち行かなくなると肝に銘じるべきだろう。

 雇用形態に翻弄されることなく、人材をどう見抜き、どう生かすか。その意味では、これからの時代は、より高度なマネジメントが求められることになりそうだ。

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