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» 2013年09月04日 11時00分 UPDATE

顧客マネジメント再考:【第2回】顧客の良質な経験をいかに管理するのか? (1/2)

市場の成熟によって顧客の経験値が高まった現在、従来型のマーケティング戦略アプローチだけではマーケットは反応しなくなった。顧客の心を掴むためにはどうすればよいのだろうか。

[中本雅也(アビームコンサルティング),ITmedia]

「顧客経験」を基軸にした新たなマネジメントとは

 昨今の経営環境および顧客の変化から、企業における顧客マネジメントの重要性が従来にも増して高まってきており、トップラインを伸ばすためには顧客の正確な理解から新たな顧客へのアプローチを実践していかねばならないことを、前回解説した。

 一般的に、企業が事業戦略を立案、推進する際には、いわゆる3C(Customer、Competitor、Company)に、複雑化した流通経路のチャネル分析(Channel)を加えた「3C+C」の分析が重要となっており、その上で事業の方向性の確認とその意思決定が行われている。

図1 顧客経験マネジメントの基本モデル 図1 顧客経験マネジメントの基本モデル

 しかしながら、現在では、顧客の経験値が高まり、こうした従来型のマーケティング戦略アプローチだけではマーケットは反応しないのである。今まで以上に顧客接点における対応力を向上させ、あらゆる接点でより深く顧客へのアプローチを展開する戦略手法こそが、新たな事業推進の核となるのだ。

 アビームコンサルティングではこれを「顧客経験マネジメント」(Customer Experience Management:CEM)と呼んでいる。従来からの漠然としたターゲットに対するマーケティング施策や、売り上げのためにやみくもに営業をかけるやり方、あいまいなサービスレベルで不評を買ってきたような顧客対応を根本から見直す新たなCRMの展開手法として、企業への適用を勧めている。

 簡単に言えば、十分な顧客セグメンテーションをもって、顧客と企業の接点すべてをプロセスとしてとらえ、各接点における顧客の経験を快適に、かつ心地良さや感動を与えることで継続的な取引関係を強化していくような取り組みである(図1)

 この基本モデルは、エビの形に似ていることから「シュリンプモデル」とも言われ、顧客経験マネジメントによる顧客戦略立案のベースの考え方になる。

顧客理解の深化

 具体的な戦略展開について、まずは顧客の理解から再考しなければならない。多くの企業は自社の顧客に対してさえ正確な理解をしていない。そこから事業の成否が決まってくるといっても過言ではない。

 一例として、B2C(B2B2C)では、従来のデモグラフィックな情報(住所、年齢、性別、年収、家族構成など)に加え、個人の価値意識を軸に加えた顧客分類である「サイコグラフィック・セグメンテーション」を採用する。従来型のデモグラフィック・セグメンテーションでは、例えば、「30代男性」というセグメントでしか扱われなかったものでも、個々人では趣味、嗜好が異なるし、物事への価値意識も決して同じではない。30代男性の中でも、こだわり派や新しいもの好き派、イノベーション志向派、トレンド重視派など千差万別だ。多様性が増した顧客の、その本質まで入り込んでセグメンテーションすることで、現実感のある良質な顧客経験の提供を実施できる。

 B2Bでは、さまざまな顧客を理解するための施策が取り組まれているが、売り上げや利益による重要度分類が主である。ここでも単なる売り上げ金額基準の重要度から、業種ごとの取引制度、購入の頻度、企業内シェアなどの条件により、顧客セグメンテーションは今よりも工夫できる。従来からの企業(取引先)管理単位の見直し、企業グループ単位の管理によるアカウントマネジメントの推進で、顧客への密着度を高めるとともに、顧客側の経験値も高められるため、競合排除や取引拡大につながる。

 まずはこの“顧客の理解”が精緻に、正確に実施されないと、この先の顧客戦略が間違った方向に進んでしまうことになるからだ。

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