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» 2013年09月30日 08時00分 UPDATE

Weekly Memo:富士通が「業界クラウド」に注力する理由

富士通とアニコムが先週、ペット関連事業で協業すると発表した。両社でいわゆる「業界クラウド」を展開する。他分野も含めて業界クラウドに注力する富士通の思惑とは――。

[松岡功,ITmedia]

富士通とアニコムが「業界クラウド」で協業

 富士通とペット保険最大手のアニコムホールディングスが9月25日、国内の動物病院向けクラウドサービスの開発・販売で協業すると発表した。第1弾として、業界初のクラウド型動物病院向け医療支援サービス「アニレセ Fシリーズ」を共同開発し、今年11月に販売開始する。

 アニレセ Fシリーズは、アニコムが国内1800病院に提供している動物病院向け顧客管理ソフトウェア「アニコムレセプター」に、電子カルテシステムなどの診療支援や経営支援の機能を追加したものである。

左から、富士通の川妻庸男 執行役員常務、アニコムの小森伸昭社長、富士通の阪井洋之 総合商品戦略本部長 左から、富士通の川妻庸男 執行役員常務、アニコムの小森伸昭社長、富士通の阪井洋之 総合商品戦略本部長

 サービスの内容としては、「診療業務支援サービス」「医療事務支援サービス」「複数拠点病院経営支援サービス」「地域医療連携支援サービス」「診療手帳サービス」「経営指標分析・診療情報分析サービス」の6つをラインナップしている。

 両社は発表会見で、動物病院がこのサービスを導入すれば、クラウド上で得られる統計情報などを活用できるほか、病院間での診療情報の共有や医療連携、業務効率化による顧客満足度の向上を図ることができる、と強調した。

 両社の協業は、アニコムの「どうぶつ医療」のノウハウや豊富な販売チャネルと、富士通のクラウド構築技術や商品開発力を結集させたものだという。富士通はこれまでもペット関連業界の発展に寄与することを目的として「どうぶつクラウド」を推進し、2010年より一般社団法人 東京城南 地域獣医療推進協会と地域医療連携の実証実験を行ってきた経緯がある。

 富士通の阪井洋之 総合商品戦略本部長は会見で、「両社の強みを組み合わせることで、ペット業界全体の活性化に貢献していきたい」と表明。アニコムの小森伸昭社長も「動物病院の知見をICTによって横につなぐことで、どうぶつ医療をさらに前進させていきたい」と力を込めた。

 ちなみに、アニコムの「どうぶつ医療」や富士通の「どうぶつクラウド」といったように、「どうぶつ」を平仮名で表現するのには意味がある。両社の説明によると、近年、ペットは人間社会にとってより身近な存在となったことに伴い、飼い主にとっては飼育対象としての「動物」とは異なり、家族としての「どうぶつ」へとその在り方が変化しつつある。こうした背景に基づき、両社はペットを従来の医療対象ではなく、共生する家族の一員として平仮名の「どうぶつ」と表現しているという。

今回の発表からみた「業界クラウド」の注目点

 さて、富士通が推進する「どうぶつクラウド」は、クラウドサービスの種類でいうとコミュニティ型のプライベートクラウドサービスで、通称「業界クラウド」ともいわれる。

 IDC Japanが先頃発表した「国内プライベートクラウド市場予測」によると、2013年の同市場規模は前年比43.9%増の4627億円になる見込みだ。今後も同市場は高い成長を維持し、2012〜2017年の年間平均成長率は34.5%、2017年には2012年比4.4倍の1兆4129億円になるという。

 IDCでは同市場を「オンプレミス型」「ホスティング型」「コミュニティ型」の3つのカテゴリーに分類しているが、その中で今後もっとも急成長するのはコミュニティ型だと予測している(関連記事)。

 そうした有望市場に向け、富士通は昨年来、生産現場でのICT活用を起点に流通・地域・消費者をバリューチェーンで結ぶ「食・農クラウド」や、医療・介護・生活支援サービスの連携による包括ケアを実現する「高齢者ケアクラウド」を、それぞれの業界関連企業・団体などと共同で立ち上げてきた。

 その意味では、今回のペット業界向けも同社の業界クラウド戦略展開の一環である。同社の川妻庸男 執行役員常務はこの戦略展開について、「今後もさまざまな業界との協業を積極的に広げていきたい」と力を込めた。

 では、なぜ富士通は業界クラウドに注力するのか。それは、各業界を含めICTで社会インフラを支えてきた同社としては必然の取り組みだからだろう。社会インフラを見渡せば、ICTがまだまだ有効活用されていない分野も少なくない。むしろ、さまざまな業界クラウドを支えていくのが社会的使命との思いが強いのではないかと推察される。

 そんな業界クラウドにおける筆者なりの注目点を、今回の発表内容から2つピックアップしておきたい。1つは、先にも「クラウド上で得られる統計情報などを活用できる」と述べたが、つまりは「会員型オープンデータ」を活用できるという点だ。これが蓄積してくると、さまざまな活用法が考えられるだろう。ベンダーの腕の見せどころでもある。

 もう1つは、平仮名による「どうぶつ」の表現だ。平仮名となった理由は先ほど紹介したが、なぜ医療もクラウドも平仮名表記で統一したのか。そこには理念の共有ともいうべき非常に大事な意味があるからだろう。

 この2つの点から、業界クラウドを推進するベンダーが心得ておかなければならないと考えるのは、「心の通った(=理念の共有)」「きめ細やかな(=データの活用)」対応だ。逆にいえば、そうした対応をきちんと行っていけば、業界クラウドを支えるベンダーの仕事は長く続くはずだ。富士通が業界クラウドに注力する理由も、それが大きいといえよう。

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