システム開発の請負は失敗のもとITpro EXPO 2013 レポート

プロジェクトの遅延やシステムの欠陥などを引き起こす原因は何か。日本情報システムユーザー協会の細川エグゼクティブフェローが調査データを基に問題点を指摘した。

» 2013年10月11日 07時15分 公開
[伏見学,ITmedia]

 日経BPは10月9日〜11日の期間、ITカンファレンスイベント「ITpro EXPO 2013」を東京ビッグサイトで開催している。2日目となる10日、日本情報システムユーザー協会(JUAS)でエグゼクティブフェローを務める細川泰秀氏が、JUASの独自調査を基に日本企業のシステム開発の現状を報告した。細川氏は「日本から失敗プロジェクトをなくしたい」と意気込んだ。

JUAS エグゼクティブフェローの細川泰秀氏 JUAS エグゼクティブフェローの細川泰秀氏

 細川氏が着目したのが、ユーザーとベンダー間の取引・契約モデルについてである。システム開発の契約形態として、大きく自社開発、委任(準委任)、請負がある。準委任と請負の違いは、仕事の完成義務と瑕疵担保責任が準委任にはないということ。経済産業省では、要件定義やシステム設計のフェーズに関して準委任型の契約を推奨しているが、実態は4割ものユーザー企業が請負型になっているという。

 実は、すべてのフェーズで請負型を採用する企業は、プロジェクトの工期遅延度やシステムの換算欠陥率の面で、ほかの契約形態と比べて大幅なマイナスとなっている。「システム仕様を決定する段階はユーザーの責任で実施すべき。それが良い品質のシステムにつながる」と細川氏は述べる。

 このように初期フェーズが重要であることは、調査データにも裏付けされている。工期遅延理由の約40%が要件定義がらみの障害発生によるものであるという。細川氏は「要件定義を確実に実施することが、後工程の品質や工期確保に結び付くので、十分な時間をかけて実施する必要がある」と説く。

 また、ユーザー企業はプロジェクトの失敗をすべてベンダーに責任があるとは思っていない。責任は両者にあるという回答が、工期遅延では58.4%、総費用増大では61.9%に上った。

「発注者側も責任を感じているので、要件定義書や設計書のレビュー参加、テストデータの提供など、ベンダーとユーザーがお互いに協力してプロジェクトを進めることが好ましいのだ」(細川氏)

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