世間から必要とされない“ガラパゴス社員”になっていないか?(1/3 ページ)

企業がリストラを考えたとき、真っ先にクビになるのは変化を拒絶する社員だ! 「フリーで働く前に! 読む本」などの著者である中山マコト氏が、会社にはびこる“ガラパゴス社員”に警鐘を鳴らす。

» 2013年11月20日 08時00分 公開
[中山マコト,ITmedia]

ガラパゴス社員を欲しがる企業はない!

 かつて中堅システムインテグレーターでソリューション営業のリーダーを務めていたYNさんには、一生忘れられない苦い記憶がある。3年前、年収が半分以下になる危機に直面したのだ。

 当時、在籍していた会社で彼はエースだった。売り上げ面でもナンバーワン。クライアントの開拓も数多く手掛け、取引先からの評判も上々。「今なら自分を高く売れる!」と、ある種、浮かれ気分で転職を決意した。

 念のためにと、土日を使ってアドバイスを受けに行った転職相談の場で、転職コンサルタントから、恐ろしい現実を突きつけられたのだ。

 このままの状態で転職しても、年収は良くて今の3分の2、悪くすれば半分を切ってしまうと就職コンサルタントは断言した。「嘘でしょ?」。信じられなかったYNさんは、セカンドオピニオンとして別のコンサルタントを当たってみた。だが、結果は同じ。収入がアップするどころか維持することすら叶わないというのが現実だった。

 彼はコンサルタントを問い詰めた。自分に何が足りないのかと。そこで浮き彫りになったのが、彼の“ガラパゴス社員”ぶり。要は、自分の会社の役には立っているが、世間の常識から見ると、とてもではないがビジネスにおいて通用しない仕事ぶりだったのだ。

外で通用しない社内エリート

気が付けば自社でしか活躍できない“ガラパゴス社員”に……(写真はイメージ) 気が付けば自社でしか活躍できない“ガラパゴス社員”に……(写真はイメージ)

 例えば、サービス残業。毎日何時間も残業し、土日も返上に働く。それは彼の売り物だった。転職コンサルタントは一刀両断。「それはマイナスにしかなりません」

 サービス残業が法令違反であるのはさることながら、残業が恒常化している会社で、「良く働く真面目なヤツ」という評価は、外の会社では、「ダラダラと時間を使ってやっと仕上げる、仕事の遅いヤツ」としか評価されない。

 あるいは、接待営業。足繁くクライアントに何度も通い、接待攻勢をかけ、中元歳暮を欠かさずに贈る……。そうして仕事を引き出す手法は、もはや、今の世の中では哄笑の対象。迷惑行為でしかない。結果、接待を受けることが好きな、これまたガラパゴス感覚の企業とだけ付き合うことになり、ますます浮き世離れしていく。

 精神論発想。気合い、やる気、夜討ち朝駆け。若い世代にはまったく意味が理解できないクエスチョンマークのオンパレード。具体的な提案やタクティクスを示せない上司に、若い社員が従うはずもない。強烈なショックを受けたYNさんは、一念発起。自分の価値=売値を高めることを心に決めた。会社が給料を支払ってくれているうちに、自己変革に取り組んだのだ。

人生再起動計画

 キーワードは“個のチカラ”を高め、価値を上げること。そのために、“新規開拓力を身に付けること”を自らに課した。これならどんな会社も欲しい能力だろうと考えたのだ。

 まず、新たな顧客管理システムを急ピッチで開発した。そして、飛び込み営業ではなく、セミナーを企画し、参加者を募り、セミナー参加者の中からニーズのありそうな企業に対し、個別にプレゼンテーションを行うというスタイルに変えた。つまり、数撃ちゃ当たるという手法から見込み客を炙り出す作戦に変えたのだ。

 用いたのはFAXDM(ファックス一斉送信サービス)の手法。徹底的にFAXDMのスキルとコピーライティング手法を学び、実験を繰り返しスキルを高めていった。システムプレゼンの手法も自分が売りたいモノを押し付けるやり方ではなく、見込み客の実情を徹底的に精査し、それにフィットする提案をするように変えていった。そうして約1年の間に、新規クライアントを7社も開拓し、大きな実績を上げた。当時彼が開発し送付したFAXDMはYN式セールスフォームとして今もこの会社で活用されている。

 そして、その実績を引っさげて再び転職活動した結果、現在のポジションである、大手ソフトウェア会社の営業管理職として好条件で転職できたのだ。

 彼は述懐する。「転職を考え始めた当時、僕は完全にガラパゴス化していました。外界の動きを全く知らない、ガラパゴス企業のガラパゴス管理職。取引相手もガラパゴス。狭い狭い世界の中でのお山の大将。その小さなコップの中で成績を競っていただけでした。会社も進歩という言葉とは無縁だし、安ければいいんだと言う会社としか付き合えません。そんな仕事しか取ってこられない営業なら、年収半分と言われても当然ですよね」

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