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» 2013年12月02日 08時00分 UPDATE

Weekly Memo:ウェアラブル端末の正体

ウェアラブル端末への注目度が高まっている。多様な用途への広がりが期待されているが、一方で利用者が監視される道具になることも認識しておく必要がありそうだ。

[松岡功,ITmedia]

ウェアラブル端末市場は5年後20倍に

 野村総合研究所(NRI)が11月27日に発表した2018年度までの国内ICT市場の動向予測によると、ウェアラブル端末の販売台数は2013年度の23万台から、2018年度には475万台と約20倍に拡大する見込みだという。

 NRIによると、ウェアラブル端末とは「持ち運びができるだけでなく、機能を発揮するために身体の特定の部位に身につけることが可能かつ必須であること」「他の端末やネットワークとの通信機能を保有しているもの」という2つの条件を満たす情報機器端末と定義付けている。

 その上で「ウェアラブル端末は、スマートフォンを含む携帯電話やタブレット端末と異なる、新たな端末市場の形成が注目される」とし、「眼鏡型のスマートグラス、腕時計型のスマートウォッチ、腕や服などに身につけ健康管理を行うモバイルヘルスケア端末など、さまざまな端末がこれからも登場してくる」と説明している。

 眼鏡型や腕時計型の開発競争や用途開拓、そしてベンダーの観点での普及に向けた課題については、10月7日掲載の本コラム「ウェアラブルコンピュータは普及するか」で解説しているので参照いただきたい。

 さらに先週、ユニークなウェアラブル端末の開発が進んでいることが明らかになった。ソニーの子会社であるソニーコンピュータサイエンス研究所が開発に取り組んでいる、かつら型の「スマートウィッグ(SmartWig)」がそれだ。

 明らかになった情報によると、スマートウィッグはかつらの中にデータ入力用のセンサーや他の端末との通信機能、全地球測位システム(GPS)などが組み込まれており、プレゼンテーション用、ナビゲーション用、センサー用の3タイプが試作されているという。

 具体的には、プレゼンテーション用はもみあげを引っ張ることでレーザーポインターの操作やスライドショーのページめくりなどが行える。ナビゲーション用は振動で進行方向を伝えて利用者に目的地までの道を案内する仕組み。センサー用は体温や血圧など身体の情報をセンサーで集めて健康管理に役立てることができるとしている。

 ソニーはこのスマートウィッグについて、既に米国や欧州で特許を出願。商品化は未定だが、さらに研究を進めていく方針だという。

監視の道具にもなるウェアラブル端末

 多様な用途への適用に向けて期待が高まるウェアラブル端末だが、身に付けて使用するだけに利用者のさまざまな情報が発信される形になる。従って、システムを運用する側がそうした情報を監視用として使うこともできる。

 そんな一例が、11月26日夜に放送されたNHKクローズアップ現代「ウェアラブル革命〜“着るコンピューター”が働き方を変える」で紹介されていた。その内容は、とある会社のコールセンター業務で、社員が首からさげるIDカード型のウェアラブル端末によって、社員一人一人の動きをはじめ、誰とどれだけ会話したかまでを詳細に記録するものだった。

 その記録から人間関係が空間に浮かぶ点と点を線で結ぶ形で視覚化され、誰が会話の中心にいて、誰が会話に乏しいかが一目瞭然に見て取れる。こうして得られたビッグデータを分析すると、実は仕事中の時間よりもむしろ休憩中の集団活性度のほうが業績に関係することが分かったという。

 この端末を導入した会社では、こうしたチェックによって社員同士のコミュニケーションの活性化を促し、業務の効率化を図ることを目的としていた。特に顧客の問い合わせなどをチームとして手際よく処理しなければならないコールセンター業務には、こうした評価・改善の仕方が効果的だとの判断があるのかもしれない。

 社員の1人が「会話の中身まで聞かれているわけではないので、監視されているとは思っていない」とコメントしていたが、なんともやるせない感じがした。放送後、ネット上では視聴者から「社員のプライバシーなどあったもんじゃない」などと批判する声も少なくなかった。

 ただ、考えてみると、この例では業務の効率化を目的してあらかじめ社員にこういう仕組みを使って評価・改善を図ることを公表しているので、思いは別にして社員は認識を持つことができる。もし、こういう仕組みによって監視されていることを知らされないとしたらどうか……。

 企業ではもう既にメールチェックなどでそうした監視が行われているところもあるが、ウェアラブル端末から得られる情報はこれまでのPCやスマートフォンにも増して人間の行動や嗜好、感情をも監視できるようになる可能性がある。利便性だけではないそうしたウェアラブル端末の正体を把握しておく必要がある。

 今後、スマートフォンやウェアラブル端末から生み出されるビッグデータは、企業、さらには行政にとって、ビジネス拡大やサービス向上に有効活用できる一方、監視用の材料にもなる可能性がある。スマートフォンやウェアラブル端末が、これから訪れる監視社会の格好の道具になり得ることを、利用者である私たち個々人としてしっかりと認識しておくべきだろう。

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