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» 2014年04月14日 08時00分 UPDATE

Weekly Memo:SASが説くビッグデータ分析の進化

ビッグデータの活用が注目される中、SASが先週開催したイベントで、そのアナリティクス(分析)の進化について説明した。興味深い内容だったので紹介しておきたい。

[松岡功,ITmedia]

ビッグデータの価値を生み出すアナリティクス

 「ビッグデータ・アナリティクスは予測分析にとどまらない」

 SAS Institute Japanの吉田仁志社長は、同社が4月10日に都内ホテルで開催した「Analytics 2014−SAS FORUM JAPAN」の講演でこう語り、アナリティクスの進化について説明した。キーワードは「アナリティクス3.0」。その内容が「予測分析にとどまらない」領域となるのだが、まずはそこに至るうえでポイントとなる、ビッグデータ・アナリティクスが企業にもたらすメリットについての吉田氏の話を紹介しておこう。

講演に立つSAS Institute Japanの吉田仁志社長 講演に立つSAS Institute Japanの吉田仁志社長

 ビッグデータの特徴を表す言葉としてよく挙げられるのが、「Volume」「Velocity」「Variety」のいわゆる「3つのV」である。すなわち、大量で迅速かつ多様なデータを保有できるようになるということだが、当然ながら企業にとってはそうしたデータを保有し整理するだけで相当のコストがかかる。では、データをコストとみるだけでなく、戦略的資産として活用していくにはどうすればよいか。

 その手段がまさしくアナリティクスである。吉田氏は「データを分析することによって、そこから価値のある情報を引き出すことができる。その意味で、アナリティクスはビッグデータに4つ目のVとなる“Value”をもたらすものとなる」と語った。

 では、ビッグデータを分析して価値のある情報を引き出せるようになれば、果たしてどんなことができるようになるのか。吉田氏は「端的に言えば、今までできなかったことができるようになる」として、例えば、さまざまな業務活動において予測に基づくプロアクティブな手立てを施せるようになったり、革新的なサービスが創出されるようになると説明した。

 そうしたビッグデータ・アナリティクスには日を追うごとに注目度が高まっているが、吉田氏はアナリティクスの進化について「アナリティクス1.0」「同2.0」「同3.0」と3段階が考えられるという。この考え方については、この分野の第一人者である米バブソン大学のトーマス・ダベンポート教授が提唱しているが、SASは同教授と共同で研究を重ねてきた経緯がある。その成果をもとに、吉田氏は3段階の進化について次のように説明した。

3段階からなるアナリティクスの進化

 まず、アナリティクス1.0は「Descriptive Analytics」と呼ばれ、すなわち過去に起きたことに基づくレガシーな分析の段階だ。この段階ではデータも企業内の構造化されたものが対象で、分析チームも存在感がない。したがってデータが生み出す価値も限定的だ。吉田氏は「日本企業の多くがまだこの段階だと考えられる」という。

 次の段階であるアナリティクス2.0は「Predictable Analytics」と呼ばれ、すなわち予測分析を駆使したビッグデータ時代の到来を意味する。その背景にはコンピューティングの進化があり、データも非構造化されたものが加わって大量かつ複雑になる。そして、アナリティクスの専門家としてデータサイエンティストが活躍するようになる。日本企業の多くが、これから向かうのがこの段階だ。

 ただ、吉田氏によると「実はアナリティクス2.0の段階でも、ビッグデータから価値のある情報を引き出すという意味ではまだまだ不十分だ」という。そこで次の段階となるのが、アナリティクス3.0である。

 アナリティクス3.0は「Prescriptive Analytics」と呼ばれ、すなわち予測分析から導き出された分析モデルを“最適化”してより良い選択肢を突き詰めていくことだ。この段階で最大のポイントになるのは、アナリティクスを企業のビジネス活動のベースに位置付けるということである。言い換えれば、あらゆるビジネスプロセス、さらには企業文化における意思決定ポイントにアナリティクスを適用するということだ。

 したがって、企業がアナリティクス3.0を目指すためには、経営者自らがリーダーシップを発揮して、アナリティクスを最大限に活用するためのビジネスプロセスや組織構造の見直し、従業員のスキルアップや役割分担の明確化、最適なテクノロジーの選択やデータ管理体制の徹底といったことを、全社的な取り組みとして進めていく必要がある。

 こうしてみると、アナリティクス3.0はそれまでの段階と、企業としての取り組み方が大きく異なる。吉田氏によると、日本企業の多くは前述したようにアナリティクス1.0の段階だが、一部の先進企業では早くもアナリティクス3.0に取り組み、さまざまな局面での意思決定におけるナレッジを蓄積して成果を上げつつあるという。

 吉田氏はアナリティクスの進化について以上のように説明し、最後にこう訴えた。

 「ビッグデータの活用は、予測分析を行えるようになったりデータサイエンティストを配置すれば済む話ではない。企業全体でいかにアナリティクスを駆使できるようにするかが本当の競争力につながる。その意味で今、企業に問われているのは、アナリティクスに取り組むべきかどうかではなく、どうやって取り組むかだ」

 もちろん、吉田氏のメッセージにはアナリティクス製品を提供するベンダーとしての思いが込められているが、アナリティクスの進化を踏まえて企業としてどう取り組めばよいかという話は、大いに参考になるのではないだろうか。

 吉田氏が説くビッグデータ分析への取り組みは、企業にとって経営改革そのものである。つまりは、経営者の覚悟が問われているといえそうだ。

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