ソフトウェア使用許諾をめぐる訴訟でパンドラの箱を開けたOracleComputer Weekly

Oracleがサポートサービス業者Rimini Streetを知的財産の侵害で提訴し、訴えを部分的に認める裁定が下された。企業は、サードパーティーに保守やサポートをアウトソースすると訴えられる可能性が出てきた。

» 2014年04月16日 10時00分 公開
[Cliff Saran,ITmedia]
Computer Weekly

 米国で最近起こった法的論争に関するリポートの中で、米調査会社Forrester Researchのアナリストは、ソフトウェアのカスタマイズ、保守、管理などを社外の業者にアウトソーシングしている会社は、そのソフトウェアの使用許諾条件に違反する恐れがあると警告を発している。

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 Forresterの主席アナリスト、ダンカン・ジョーンズ氏は、アウトソーシングの普及以前に交わした古い契約に注意を払うようにCIOに勧告している。

 サポートサービスのサードパーティーである米Rimini Street(以下「Rimini」)がOracleの知的財産(IP)を侵害したとして提訴された。この「Oracle対Rimini」の係争に対して、2014年2月13日に部分裁定が下された。地方裁判所判事のラリー・ヒックス氏は、顧客が所有するOracleの正規版ソフトウェアについて、Riminiには自社のサーバ上でそのソフトウェアパッチをホストする権利はない、とした。

 これを受けて、ジョーンズ氏は次のコメントを発表した。「手元のソフトウェア使用許諾の条件を読み返して、ソフトウェア製品の改変、社外の人物がそのソフトウェアを利用すること、その企業の事業所以外の場所でソフトウェアをインストールすることなどに関する制限事項を確認するべきだ。うっかり契約に違反している恐れがある。弁護士に相談して、自社におけるソフトウェアのインストール状況や使用状況がこの裁定に影響を受けないかどうかを確認した方がいい」

ソフトウェア使用許諾契約に対する違反

 地方裁判所判事は、Oracle製品の使用許諾に違反したとしてOracleが米Giant Cement、米Novell、フリント市、ピッツバーグ市立学校を提訴した4件に対してそれぞれ裁定を下した。Riminiの顧客であったGiant CementおよびNovellの2件についてOracleは略式裁判を求めたが、裁判所はこれを棄却した。

 OracleのCRMスイート製品であり、Novellが保有していたSiebelの使用許諾契約では、アーカイブやバックアップの目的で第三者のシステム上にこの製品を複製することが認められていた。JD Edwardsを使用しているGiant Cementの開発環境にRiminiがアクセスした件では、Riminiの目的がこの製品のアーカイブまたはバックアップだったのかどうか、裁判所は判断できなかった。

 一方フリント市がOracleと交わしたソフトウェア使用許諾契約では、RiminiがOracle製品の1つであるPeopleSoftの複製を保持することを許可していないと裁判所は判断した。

 判決文には次のように書かれている。「裁判所は、Riminiがフリント市の開発環境を利用した際の状況を再検討し、アーカイブ、非常用のバックアップ、災害復旧のいずれかを目的としたものではなかったと判断した。それどころか開発環境の利用は、フリント市が利用する目的でソフトウェアを改変し、これをテストすることが目的だったことを裏付ける明白な証拠がある」

 同様に、Riminiの顧客であったピッツバーグ市立学校に対しても、RiminiがOracleのPeopleSoft製品を複製して利用していたことについて、裁判所はOracleの主張を認める裁定を下した。

使用許諾の制限事項は要注意

 ソフトウェアメーカーの英1EでIT資産管理サービス部門の責任者を務めるローリー・キャナヴァン氏は次のように語る。「Oracleは、自社のIPを保護することに関してはあらゆる権利を所有している。また、Riminiも独自のソフトウェアサポートおよび保守を実施することに関して、あらゆる権利を所有している。この2社の主張がぶつからない状況があるとすれば、使用許諾契約の有効期間が過ぎてしまった製品について、サポートおよび保守サービスのプロバイダーに対して、その製品への追加機能を開発するように要請した場合が考えられる」

 フリーランスのアナリストとして活動するフランク・スカヴォ氏は自身のブログに次のように書いている。「ソフトウェアメーカーが提示した使用許諾契約に何も変更を加えず署名した場合、ユーザーがそのソフトウェアの保守作業をサードパーティーの保守業者に委託する権利は限定されてしまう。依頼できるのは、せいぜい社内に置かれたコンピュータにそのソフトウェアをインストールさせる程度となることが多い」

 前出のForresterのジョーンズ氏によると、サードパーティーのサポートサービス業者に関しては、ここまでに述べてきた問題に加えて、ユーザーに許諾されたライセンスを物理的にアウトソーシング業者のオフィスに移すことも問題になることが、この事例でよく分かるという。

 「多くの場合、ソフトウェア使用許諾契約には、弁護士も長年受け入れてきた制限事項が含まれている。ユーザーが、使用許諾を得たソフトウェアを自ら発売する製品の一部に組み込むことを禁じているのもその一例だ。この例で事実上、使用許諾を得たソフトウェアをユーザーが無断でクラウドに展開することも禁じていることになる」と同氏は警告する。

 このような使用許諾契約は、クラウドコンピューティングなどのテクノロジーが発達する前に策定されたものだ。以前なら、この制限事項があってもOracleが顧客をとがめることはなかったので、顧客はOracle製品をクラウドに展開してしまった。

 そこでジョーンズ氏は次のように指摘する。「Oracleは、Rimini以外のサードパーティーの保守サービス業者に作業を委託している顧客にもこの契約の制限事項の適用を求めざるを得なくなる可能性がある。(既に裁判所に提訴した以上、)契約に定められている制限事項をこれまではなぜ無視していたのかと、裁判所から追及されるからだ。Oracleは厄介なことをしてくれた」

 他のソフトウェアメーカーもOracleにならって、ユーザーに対して同様の主張をするようになる恐れがあるとジョーンズ氏は懸念を示す。「使用許諾の条文の意味は、推察で判断してはいけない。ユーザーに与えられていない権利もあると受け入れることだ」(ジョーンズ氏)

 さらに、システムインテグレーターもRiminiと同様の問題に直面するだろうとジョーンズ氏は警告する。「システムインテグレーターが顧客のOracle製品で利用するための独自のコードを書き加えている場合がある。これは使用許諾に違反する恐れがある」

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