HP Moonshotサーバは電力コスト問題の福音となるか?Computer Weekly

迫り来るエネルギー問題への取り組みとして新しいサーバが開発されている。このサーバは、データセンターのハードウェアよりもノートPCとの共通点を多く備えている。

» 2014年02月05日 10時00分 公開
[Cliff Saran,ITmedia]
Computer Weekly

 冬場の価格高騰により、エネルギーコストが再び注目を集めている。英Energy Managers AssociationのCEOと英Low Energy Companyの会長を兼任するルパート・レデスデール上院議員は、エネルギーがITとビジネスに重大な影響を及ぼすと考えている。

 「エネルギー価格が倍になれば、低価格をうたうホスティングサービスやクラウドサービスでさえ、もはや経済的ではなくなる」と同氏は語る。

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 チップやサーバのメーカーは、米IntelのAtomや米AMDのOpteronといった省電力のチップを使用した高度なスケールアウト型データセンターサーバアーキテクチャを新たに用意して、エネルギー危機の打開を目指している。これは汎用のブレードサーバアーキテクチャではなく、HadoopのようなアプリケーションやEコマースWebサイトなど、多数の省電力サーバ間で効率的に実行されるよう設計されたワークロードを運用するために設計されたサーバアーキテクチャである。

 「ソフトウェアをハードウェアに近づけることで魔法が起こる」と、AMDのサーバ部門ソフトウェアプランニング責任者のマーガレット・ルイス氏は話している。AMDはデータセンターに「サーバのイメージを変える」ことを求めている。コンピュータ処理、ネットワーク、データストレージなどの需要は指数的に増加するため、ワークロードはこれまで以上に多くのタスクを処理する必要があるからだ。

Moonshotサーバ

 米HPのMoonshotサーバファミリーは、Opteron XシリーズプロセッサをベースにするAMD Enterpriseクラスタを使用している。これはGPUとCPUを統合したもの(通称APU)で、ノートPCのプロセッサを使用して非常に高密度のクラスタを構築している。クラスタでは、ブレードサーバの各ビルディングブロックがコンポーネントを共有する。「APU Moonshotカード4枚が共通のネットワークコネクタ、ストレージ、仮想化層を共有する」とルイス氏は語る。

 この新しい形式のデータセンターコンピューティングでは、特定のアプリケーション向けにサーバを用意する点が重要だ。例えば、HPのConverged System 100 for Hosted Desktopsはデスクトップコンピューティングをデータセンターに持ち込むことを目的に設計されている。

 HPは、リモート環境やモバイル環境のナレッジワーカー向けに、一貫性のある高品質PCの操作性を実現するよう構成した業界初のシステムだと断言している。AMDと米Citrixが提携してゼロから設計したこのシステムは、デスクトップと全く同じ機能を必要とするモバイルワーカー向けに専用のPCオンチップリソースを提供する。

 HPによると、ホスト型デスクトップを構築するアプローチを採用したことにより、パフォーマンスを犠牲にすることなくデスクトップ仮想化を実現する。グラフィックスとマルチメディアのパフォーマンスはこれまでビジネスに利用してきたデスクトップPCと同等で、1秒当たりのグラフィックフレーム数は他の仮想デスクトップインフラストラクチャシステムよりも6倍速くなっているという。

GPUを利用する

 ノートPCを模したこのシステムの大きなメリットの1つは、GPUを統合していることだ。つまり、米NVIDIAがGPUにアクセスするために提供しているCUDAライブラリのように、グラフィックスチップをコンピュータ処理に使う可能性が広がることになる。

 2013年8月、NVIDIAは米Google、米IBMと共同でOpenPowerコンソーシアムを設立した。このコンソーシアムは、次世代大規模クラウドデータセンターに高度なサーバ、ネットワーク、ストレージ、グラフィックステクノロジーを提供していく予定だ。

 C/C++、Fortranを使用する開発者は、AMDのHeterogeneous System Architectureを使用してGPUベースのコンピューティングを活用するアプリケーションを作成できる。

 水圧破砕法による地震データ分析は、処理をサーバチップ上のGPUに移行してパフォーマンスを向上できる信号処理アプリケーションの1つだ。モンテカルロ法によるシミュレーションや生物学的分析もGPUアクセラレーションに適しているとルイス氏は話している。

ARM搭載サーバ

 HPのMoonshotプログラムのさまざまな開発の中で最も興味深いのは、ARM搭載サーバだ。このサーバはUbuntu Linuxを実行する32ビットシステムで、4コアARMと通信アプリケーション用にDSPを8基使用している。

 HPはこのシステムを、これまで独自のハードウェアを使用してきた通信会社向けの製品と見なしている。ARMチップは32ビットプロセッサなので、Windows Serverを実行する予定はないが、携帯電話に搭載すれば電力消費を極めて低く抑えることができる。しかし、採用が目に見えて進むようになるのは、LinuxソフトウェアがARMに移行された後になるだろう。

 今後のARMサーバの普及率を予測するのは時期尚早だ。HPは既にAtomサーバとOpteronサーバを販売しているが、これらは特定のアプリケーション向けのハードウェアだ。低コストのサーバを多数必要とするHadoopやWebホスティングに適しているように思えるが、HPはまずクラウドプロバイダーやWebサービスプロバイダーにシステムを売り込んでいる。今後、サービスプロバイダーはこのようなサーバを利用して上昇するエネルギーコストを削減し、クラウドサービスやWebホスティングサービスを妥当な価格に維持していくようになるかもしれない。

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