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» 2014年04月30日 07時45分 UPDATE

Weekly Memo:オープンスタンダードに注力するIBMの思惑

日本IBMが先週、高性能サーバおよびPaaS型クラウドサービスについて相次いで記者会見を開いた。2つの会見で改めて感じたのは、IBMの「オープン」への意気込みである。

[松岡功,ITmedia]

世界初のオープンサーバプラットフォーム

 「新プロセッサは世界初のオープンサーバプラットフォームだ」

 日本IBMのマーティン・イェッター社長は4月24日、同社が開いた新製品の発表会見でこう強調した。発表したのは、新プロセッサ「POWER8」および同プロセッサを搭載したサーバ「IBM Power Systems S クラス」だ。

記者会見に臨む日本IBMのマーティン・イェッター社長 記者会見に臨む日本IBMのマーティン・イェッター社長

 新プロセッサは、メモリやI/Oの帯域幅を従来比2倍以上にするなど、ビッグデータ処理に必要な性能強化を施したのが特徴。これを搭載した新サーバは、最新のx86サーバと比べて50倍のデータ分析処理速度を実現したという。

 ではなぜ、新プロセッサが世界初のオープンサーバプラットフォームなのか。イェッター氏によると、そのポイントは2つ。1つは、オープンソースOSであるLinuxとの組み合わせを前面に押し出していること。もう1つは、POWERアーキテクチャに基づくオープンな開発コミュニティ「OpenPOWER Foundation」の活動の成果を採用していることだ。

 もう少し説明しておくと、LinuxについてはこれまでのRed Hat Enterprise LinuxおよびSUSE Linuxに加え、新たにCanonicalのUbuntu Serverを利用できるようにしたほか、POWERアーキテクチャ向けの仮想化基盤となるKVMも提供。これにより、クラウド環境においても柔軟な仕組みを構築できるようにしている。ちなみにIBMはこうしたLinux環境の整備に1000億円を投資しているという。

 一方、IBMがGoogleやNVIDIAなどと昨年夏に設立したOpenPOWER Foundationは、POWERアーキテクチャを公開して関連するハードウェアやソフトウェアの開発を行い、オープンなPOWER勢力を広げていこうという取り組みだ。当初5社だった参加企業は現在25社に拡大。日本からも日立製作所が参加している。

 確かに、オープンスタンダードのOSになりつつあるLinuxと、オープンスタンダードを目指し始めたPOWERの組み合わせは、オープンサーバプラットフォームとして「世界初」と言えるかもしれないが、そこを掘り下げるより、まずはかつてIBMの独自技術の象徴の1つだったPOWERがここまで変貌を遂げてきたことに注目すべきだろう。

オープンスタンダードベースのPaaS

 日本IBMは上記の発表の前日である4月23日にも、オープンスタンダードを強調したクラウド事業戦略について記者会見を行っている。その内容は、IBMが今年2月に発表したPaaS型クラウドサービス「BlueMix」(開発コード名)についての説明だ。

 同社によると、BlueMixはアプリケーションやサービス開発の実行環境の準備やミドルウェアの導入・構成に必要な手順を簡素化することで、開発者がプログラムを開発するまでの時間を短縮してコードを書くことに専念できる環境を提供するとしている。

 また、31種類の開発言語やソフトウェアから必要なものを選択できる柔軟性に加え、オープンソースのソフトウェア開発プロジェクトである「Cloud Foundry」上で構築することができるため、BlueMixを活用して開発したクラウドアプリケーションと既存の資産を組み合わせたアプリケーションやサービスの迅速な開発が可能になるという。

 BlueMixのインフラとなるのは、IBMが今注力しているIaaSの「SoftLayer」だ。これによって、IBMのパブリッククラウドサービスはIaaSにSoftLayer、PaaSにBlueMixという構造が明確になった格好だ。

 説明に立った同社のヴィヴェック・マハジャン専務執行役員ソフトウェア事業本部長はBlueMixについて、「オープンスタンダードがベースの開発環境であることが最大の特徴だ。クラウドの世界を広げていくためには、オープンスタンダードを守ることが何よりも大切というのがIBMの基本的な考え方だ。競合他社のPaaSもオープンであることをうたっているが、果たして完全にそうなっているか。比べてもらえば分かる」と自信たっぷりに語った。

 マハジャン氏が強調するBlueMixのオープンスタンダードベースのよりどころとなっているのがCloud Foundryである。Cloud FoundryはこれまでVMwareやPivotalが中心になって開発プロジェクトが進められてきたが、今後はEMC、HP、IBM、Pivotal、rackspace、SAP、VMwareを設立メンバーとした「Cloud Foundry財団」が担っていくという。

 筆者は会見の質疑応答でこんな質問をしてみた。「オープンを強調しているが、Cloud Foundry財団の設立メンバーに名がないMicrosoftやOracleなどとは敵対し続けるということか」と。するとこんな答えが返ってきた。

 「クラウド時代は競合他社のサービスとも連携することが求められるようになる。したがってIBMは競合他社もパートナーになり得ると考えている」

 IBMがオープンへ大きくシフトしつつある背景には、同社自身のサービス事業へのシフトとともに、マハジャン氏が語ったクラウド事業に対する基本的な考え方があるのだろう。ただ、オープンスタンダードがデファクトスタンダードになるとは限らない気もする。

 とはいえ、かつてのメインフレーム時代のように独自技術をもってデファクトスタンダードを築いてきたIBMの変貌ぶりは何を意味しているのか。そこに次の時代を読むヒントがありそうな気もする。

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