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» 2014年05月30日 08時00分 UPDATE

導入事例:「一斉配布しなかったからうまくいった」 iPadを武器にしたアサヒビール (1/2)

営業担当者の生産性向上を図るべく、アサヒビールが選んだツールがiPadだった。単に社員に配布するだけで終わってしまう企業が少なくない中、アサヒビールでは現場での活用をいかに進めていったのか。

[伏見学,ITmedia]

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東京都墨田区にあるアサヒグループホールディングス本社 東京都墨田区にあるアサヒグループホールディングス本社

 アサヒビールが好調だ。2013年のビール類トータル販売数量は1億6320万ケース(1ケースは、大瓶633ミリリットル×20本換算)と、実に12年振りに前年実績を上回った。今月2日に発表されたアサヒグループホールディングスの2014年1〜3月期の連結決算では、主力ビール製品「スーパードライ」やプレミアムビール製品「ドライプレミアム」の売り上げ増などが寄与し、グループ全体で26億円の黒字に転換した。

 この成果の背景には、営業担当者たちの絶え間ない努力があることに疑う余地はない。そうした営業マンを支援するべく、アサヒビールでは他社に先駆けてタブレット端末「iPad」を導入した。そのプロジェクトの旗振り役の一人となったのが、アサヒグループ全体のIT戦略を担うアサヒプロマネジメントにおいて、業務システム部 担当課長を務める光延祐介氏である。

営業担当者の生産性アップが至上命題

 アサヒビールがiPadを導入したのは2010年末のこと。当時、競合各社とのビール市場シェア争いが激しさを増し各部門において生産性向上の検討が検討されていた。「そうした状況においても、グループ会社の稼ぎ頭として利益を出さねばならなかった。その中で担当役員より下った至上命題は『営業担当者の生産性を上げること』だった」と光延氏は振り返る。

 すぐさま営業部、経営企画部や人事部などとミーティングを持ち、生産性向上のための“秘策”を検討していった。そこで挙がったのが、営業担当者の移動時間や内勤作業の削減による業務効率化である。この実現により「直行直帰の促進」を目指した。ただし、一口に営業マンといっても、都市部と地方、飲食店向けと量販店向けなど、さまざまなタイプが存在するため、まずは、都市部の飲食店向け営業マンに絞って考えることにした。そこで出てきたアイデアが、当時発売されたばかりのiPadの活用である。

 実は、アサヒビールでは既に営業担当者にモバイルPCを配っていたため、外出先からのメールチェックや日報作成などが可能であった。しかしながら、「持ち運ぶには重い、PCの起動に時間がかかり過ぎる」と現場からは不評だった。それに置き換わるデバイスとしてiPadが最適だったという。

 では、具体的にiPadを使って何をするのか。現場などにヒアリングした結果、外出先では特に(1)メールチェック、(2)日報作成、(3)顧客データベースへのアクセス、に大きなニーズがあることが分かり、これらの業務をiPadで補完できるよう整備した。

単に配布しても失敗する

 営業マンへのiPad導入プロジェクトは、まず2011年初頭に営業現場の若手担当者2人とマネジャー1人の試験的な利用でスタートした。試験期間中には、毎週火曜日の早朝に関係者で定例ミーティングを実施し、利用状況や必要機能などをその都度確認した。

アサヒプロマネジメント 業務システム部 担当課長の光延祐介氏 アサヒプロマネジメント 業務システム部 担当課長の光延祐介氏

 次に、同年9月からは首都圏のある支店で13人全員が利用を開始。その後、四半期ごとに経営に対して状況報告し、拡大展開の意思決定を求め、東京、名古屋、関西、神奈川、千葉、福岡などのマーケット規模の大きい地域に順次展開していった。現在までに飲食店向け営業全体の約7割がiPadを利用するに至っている。

 ただし今後、すべてのエリア、すべての営業マンに配布する計画はないという。「不公平感などさまざまな議論があったが、iPadの配布台数を増やすのが目的ではなく、あくまでも生産性を高めるのが目的である。配布先の見極めが重要」と光延氏は説明する。

 また、経営層からは「なぜ一斉に展開しないのか」という声があったが、導入コストや営業現場での定着などを考えると、スモールスタートで広げていくことが効果的だというプロジェクトチームの判断があった。

 「単に配るだけでは確実に失敗する。本社営業部や各営業拠点の推進担当者の強い推進力が不可欠だし、IT担当者による導入後のサポートも重要。段階的に導入することが一番の近道だった」(光延氏)

 実際、営業拠点の推進担当者がiPadの導入に前向きで、協力的だったことや、アサヒグループのIT子会社であるアサヒビジネスソリューションズの強いサポート体制の下、営業担当者からの問い合わせにも迅速に対応していったことが、普及を加速させた大きな要因だったという。

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